もうすぐ出産予定です。児童手当とはどういう制度か、もらうために何をしたらいいのか、注意点など教えてください。


今回、回答いただく先生は…
髙柳 万里先生(たかやなぎ まり)
プロフィール
  • 出生後すぐに申請できるよう、必要書類を事前に確認、準備しておきましょう
  • 子どもの年齢や人数により、支給額が異なります
  • 2024年10月以降、児童手当が拡充されます

  田村 未知さん(仮名 28歳 会社員)のご相談

4月に、第一子を里帰り出産する予定です。子どもが生まれると色々な手続きが必要と聞きましたが、はじめての事なのでよくわかりません。『児童手当』について、手続きの流れや、もらえる金額など教えて頂けると助かります。

田村 未知さん(仮名)のプロフィール

家族構成
田村 未知さん 28歳 会社員(ご相談者)年収 約300万円
第一子妊娠中(4月出産予定)
田村 秀治さん 28歳 会社員(夫)年収 約400万円

児童手当は子どもの年齢や人数、世帯主(申請者)の所得により支給金額が異なります。早めの申請を心がけ、今後の制度改正についても注目していきましょう。

田村さん、この度はご相談ありがとうございます。
はじめてのお子様をご出産予定とのこと、とても楽しみですね。
児童手当について確認しておきたいとのことですが、ご出産前に、各種制度について確認されておくのはとても重要です。制度の概要や基本的な手続きの流れ、今後の制度改正のポイントについてご説明いたします。

『児童手当』制度とは?

児童を養育している方に手当を支給することにより、家庭における生活の安定に寄与するとともに、次代の社会をになう児童の健全な育成及び資質の向上に資することを目的とした国の制度になります。具体的には、0歳~15歳までの子を養育する世帯に対し、自治体が子育て支援を目的に現金を給付するものです。 よく『児童扶養手当』と混同される方がいらっしゃいますが、児童扶養手当とは、ひとり親世帯向けに支給される手当です。

(1)支給対象
中学校卒業まで(15歳の誕生日後の最初の3月31日まで)の児童を養育している方。
(2)支給手続き
児童を養育する家計の主たる生計維持者(世帯主)が申請し、市区町村長の認定を受けることにより、申請した翌月分から支給されます。
田村さん宅の場合、秀治さんが申請者となります。お子様出生日の翌日から15日以内に、現住所の市区町村に『認定請求書』の提出が必要ですのでご注意ください。
認定請求書は、各自治体ウェブサイトよりダウンロード可能なケースがありますので確認の上、ご活用ください(検索の際は『児童手当・特例給付 認定請求書』と入力)。
今回は里帰り出産されるようですが、母親が一時的に現住所を離れている場合も、現住所の市区町村への申請が必要です。直接窓口に来庁することが難しい場合、郵送申請も可能です。郵送の場合、担当窓口に書類が到着した日が申請日となりますので、記録が残るように特定記録郵便などで郵送されることをお勧めします。申請が遅れると、原則として遅れた月分の手当を受け取ることができないため、ご注意下さい。
また『子育てワンストップサービス』に対応している市区町村では、マイナンバーカードを用いてオンライン申請ができます。
子育てワンストップサービスとは、子育ての負担軽減を図るため、「児童手当」、「保育」、「ひとり親支援」等の子育て関連の申請等について、マイナポータル(政府運営のオンラインサービス)を通じて、オンラインで手続などを行うことを可能とするものです。
詳細につきましては、お住まいの市区町村にご相談ください。
①認定請求に必要な添付書類は?
児童手当申請に必要なものは以下の通りです。
  • 児童手当認定(額改定)請求書
  • マイナンバー(個人番号)確認書類
  • 申請者名義の普通預金通帳またはキャッシュカード
  • 身元確認書類

身元確認書類とは?
≪いずれか一点でよいもの=顔写真付き身分証明書≫

  • マイナンバーカード
  • 免許証
  • パスポート
  • 在留カード 等

≪いずれか二点必要なもの=顔写真なし身分証明書≫

  • 健康保険証
  • 子ども医療証
  • 年金手帳
  • 印鑑登録証明書
  • 住民票
  • 母子手帳 等

児童手当の振込先は、申請者(世帯主=秀治さん)名義の口座に限ります。原則として、未知さんやお子様など、申請者以外の名義人の預金口座に指定することはできません。

②子どもひとりにつき受け取れる金額について
田村家の場合、出生から中学卒業まですべて児童手当を受け取ったと仮定すると、1人当たりの総額は198万円になります。一般的には、児童手当は子どもの高校や大学等進学の際の教育資金や習い事の費用として活用されるご家庭が多いようです。教育資金として活用する場合、確実に積み立てられるように、生活費とは別に管理しておくのがおすすめです。
(3)支給月額
児童の年齢 児童手当の額(一人あたり月額)
3歳未満 一律15,000円
3歳以上
小学校修了前
10,000円(第3子以降は15,000円)
中学生 一律10,000円

※「第3子以降」とは、高校卒業まで(18歳の誕生日後の最初の3月31日まで)の養育している児童のうち、3番目以降をいいます。

(4)支払時期
毎年2月・6月・10月にそれぞれの前月分までがまとめて支給されます。
例えば、6月の支給日には、2~5月分(4ヵ月分)の手当が支給されます。

所得制限限度額・所得上限限度額について

児童手当の所得制限は、世帯合算した金額ではなく、夫婦のうち所得が高い方が対象です。下記の表からも確認できますが、田村さん宅では所得制限限度額を超えないため、児童手当は支給月額表の金額が支給されます。

児童を養育している方の所得が、下記表の①(所得制限限度額)未満の場合、 支給月額表に記載の支給額を、所得が①以上②(所得上限限度額)未満の場合、法律の附則に基づく特例給付(児童1人当たり月額一律5,000円)を支給します。

なお、所得制限については、2024年以降制度改正が予定されています。

〈所得制限目安表〉
扶養親族等数 ①所得制限限度額 ②所得上限限度額
所得制限限度額
(万円)
収入額の目安
(万円)
所得上限限度額
(万円)
収入額の目安
(万円)
0人(前年末に児童が生まれていない場合等) 622 833.3 858 1071
1人(児童1人の場合等) 660 875.6 896 1124
2人(児童1人 + 年収103万円以下の配偶者の場合等) 698 917.8 934 1162
3人(児童2人 + 年収103万円以下の配偶者の場合等) 736 960 972 1200
4人(児童3人 + 年収103万円以下の配偶者の場合等) 774 1002 1010 1238
5人(児童4人 + 年収103万円以下の配偶者の場合等) 812 1040 1048 1276

※出典(2023年1月23日時点):こども家庭庁「児童手当制度のご案内」

※扶養親族等の数は、所得税法上の同一生計配偶者及び扶養親族(施設入所等児童を除く。以下、「扶養親族等」という)並びに扶養親族等でない児童で前年の12月31日において生計を維持したものの数をいいます。扶養親族等の数に応じて、限度額(所得額ベース)は、1人につき38万円(扶養親族等が同一生計配偶者(70歳以上の者に限る)又は老人扶養親族であるときは44万円)を加算した額となります。

※「収入額の目安」は、給与収入のみで計算しています。あくまで目安であり、実際は給与所得控除や医療費控除、雑損控除等を控除した後の所得額で所得制限を確認します。

2024年10月から児童手当が拡充!

2023年6月に政府が閣議決定した「こども未来戦略方針~次元の異なる少子化対策の実現のための『こども未来戦略』の策定に向けて~」の資料には、我々が目指すべき姿として

『若い世代が希望どおり結婚し、希望する誰もがこどもを持ち、安心して子育てができる社会、こどもたちがいかなる環境、家庭状況にあっても分け隔てなく大切にされ、育まれ、笑顔で暮らせる社会の実現を図る』

との記載があります。財源の確保などの課題は山積みですが、社会全体で子どもたちを育もうという機運が高まっています。

【こども未来戦略方針の全文】
https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/001112705.pdf

こちらで記載の通り、中学生までだった支給対象が高校生までに延長されます。第3子以降は支給月額が3万円に倍増します。さらに、現行制度では所得制限がありますが、所得制限についても撤廃される予定です。子育て世代にとっては朗報ですね。現状と拡充案の対比を表にまとめました。(金額は月額です)

現状 拡充案
0歳~2歳 15,000円 15,000円 第3子以降30,000円
3歳~小学生 10,000円 第3子以降15,000円 10,000円
中学生 10,000円 10,000円
高校生 なし 10,000円
所得制限 あり なし

≪主な拡充のポイント≫

  1. 支給期間を高校生まで延長
  2. 第3子以降の給付額を3万円に増額
  3. 所得制限の撤廃

また、現状は年3回の支給回数が年6回に変更されます。拡充後の児童手当の支給開始は2024年12月からの予定ですが、今後変更の可能性もありますのでご注意ください。

出産後は、体力を消耗している上に新生児のお世話にかかりきりとなり、ご夫婦でお金のことを話し合う時間の確保が難しいかもしれません。いまのうちに、お住まいの自治体のホームページで申請手続きに必要な書類を確認したり、児童手当の使い道についてご夫婦でよく相談されておくことをお勧めします。

そして今後の制度改正による、申請手続きや受取の時期等についても、引き続き注目していただけたらと思います。


出産にはお金がかかると聞いています。妊娠から出産にかけて、実際にどれほどかかるのでしょうか?
子どもを授かりました。できるだけ長く育休を取得し、育児に専念したいのですが、その間の支出や減収が心配です。
これから生まれてくる子に教育費はいくら貯めればよいでしょうか?公立と私立ではどれくらい違いますか?