政府の「こども未来戦略」が決定されたと聞きましたが、子育て世帯が知っておくべきことは何でしょうか?


今回、回答いただく先生は…
鈴木 暁子先生(すずき あきこ) プロフィール
  • 「こども未来戦略」は少子化対策のための政策です。
  • メリットや留意点を理解しておきましょう。
  • 制度によって左右されないライフプランづくりが大切です。

 内田 真理さん(仮名 35歳 会社員)のご相談

「こども未来戦略」というものが決定されたと聞きましたが、私たちのような子育て世帯は、いろいろ期待して良いのでしょうか?知っておくべきことは何でしょうか。

内田 真理さん(仮名)のプロフィール

家族構成
本人(35歳 会社員、現在育休中で4月から時短勤務で復帰予定)
夫 (33歳 会社員)
長女(5歳)
長男(3歳)
次男(1歳)

様々な子育て支援策が予定されていますが、重要なのはご家族のライフプランです。

1.政策打ち出しの背景には、少子化に歯止めがかからない現実があります。

内田さん、こんにちは。2023年末に政府が「こども未来戦略」を打ち出しましたね。まずは背景をみていきましょう。

以前から日本の少子化は社会問題となっていますが、厚生労働省の発表によると、2023年1月~11月の出生数(外国人含む速報値)が約69.6万人で、1月~11月までの出生数で70万人を割ったのは、比較できる2004年以降で初めてだったそうです。また2022年の合計特殊出生率(1人の女性が一生のうちに産む子どもの数の指標)も1.26で、7年連続で前年を下回りました。それにともない、人口の減少も進んでいます

このような実態に、子育て世代からは
・子育てや教育にお金がかかりすぎる
・仕事をしたくても子どもを預ける場所が見つからない
など、子育てにかかる費用や子育てのしにくさから、欲しくても産めないといった声が多く聞かれます。

しかし、このままでは2000年に生まれた世代が30代になる2030年までに対策をとらないと、経済が立ちゆかなくなる、社会のシステムが維持できなくなる恐れなどが懸念されています。そのため、政府は2030年までが少子化傾向を反転できる最後のチャンスと位置づけ、「こども未来戦略」を打ち出すに至ったわけです。

2.今後数年間のうちに、さまざまな対策がスタート予定です。

「こども未来戦略」は、

  1. 1)若い世代の所得を増やす。
  2. 2)社会全体の構造・意識を変える。育児負担が女性に集中している実態を変える。
  3. 3)すべての子ども・子育て世帯を切れ目なく支援する。

3つを基本理念とし、主に4つの取り組みがあります。

4つの取組は

  1. 1)児童手当の拡充
  2. 2)大学授業料の実質無償化
  3. 3)子ども誰でも通園制度
  4. 4)育休給付の給付率引上げ

です(下表参照)。

取組 内容 時期
児童手当の拡充 ・所得制限撤廃
・中学生まで⇒18歳まで
  0~3歳未満は月1.5万円
  3~18歳の年度末まで月1万円 ・第3子以降、月3万円に増額
(第1子が22歳の年度末まで)
2024年10月分以降
大学授業料の実質無償化 ・多子世帯(3人以上の子どもを扶養)を対象に所得制限撤廃
・国公立54万円、私立70万円を上限に補助
・入学金も上限付きで補助
2025年度から
子ども誰でも通園制度 親が働いていなくても、子どもを保育所などに預けられる 2024年度:一部自治体
2026年度以降、全国自治体での実施を目指す
育休給付の給付率引上げ ・共働きの両親が2人とも育休を14日以上取得した場合、給付前の8割相当⇒10割相当
・上限28日間
2025年からの実施を目指す

このほかにも、ひとり親世帯や貧困世帯に対し、児童扶養手当の拡充や、ひとり親への就労支援を充実させる。障害を持った子どもや医療的ケア児の保育所等の受け入れ体制強化、子ども・若者の安全な居場所づくりなど、地域支援体制も盛り込まれています。まずはこれら概要を知っておきましょう。

3.今後の動向を注視しつつ、政策に左右されないライフプランづくりを心がけて。

3つの基本理念を実現すべく、これらの支援が打ち出されたことは歓迎すべきといえるでしょう。ただし留意点もあります。多子世帯の支援策として拡充された児童手当や大学授業料の実質無償化などがありますが、ここでいう多子世帯とは、「3人以上の子どもを扶養している」という意味であり、「3人以上の子どもがいる」ということではありません。つまり、上の子どもが扶養からはずれ、扶養している子どもが2人以下になると多子世帯としての支援はなくなってしまうのです。内田さんもお子様が3人いらっしゃるので多子世帯に該当しますが、一番上のお子さんが扶養から外れると多子世帯対象の支援は受けられなくなります。

財源も課題となっています。こども未来戦略のために、2026年度までに年間およそ総額3兆6千億円規模の予算を増やし、2028年度までに安定的な確保を目指すとしています。政府としては、新たな国民負担を生じさせないようにするとは言っているものの、果たしてどうなるかはわかりません。

また、児童手当が拡充される一方で、16~18歳の扶養控除は縮小案が議論されており、もし児童手当の拡充と扶養控除の縮小がセットということになると、果たして実質どれだけのメリットになるのかについても疑問が残っています。

さらに制度は、未来永劫約束されたわけではありません。これまでも、さまざまな制度がありましたが、対象となる世帯や金額などが変更されたり、政権によって方針転換となり廃止されたものもなかったわけではありません。

このように申し上げてしまうと、ネガティブなお気持ちにさせてしまうようで申し訳ないのですが、これからスタートする制度ですし、まだ議論されている内容もあり、未知数の部分も多いのです。実際に支援がスタートしていくと、現場からも賛否さまざまな声が上がってくるでしょう。それによって修正が加えられるかもしれません。今後の動向をしっかり注視していく必要はあります。

そして、何より大事なことは、政策によってライフプランが左右されないことです。内田さんのご家庭は3人のお子様がいらっしゃいます。もちろんお金もかかりますが、それ以上に3人のお子様の成長過程で、3人分の楽しみや喜びもあるはずです。習い事は3人の個性や資質、興味などを見極めて厳選する、教育資金なども新NISAなどを賢く利用し、時間をかけて無理のない運用も含めて準備する、場合によっては必要な分だけ上手に奨学金を活用するなど、未就学の今のうちからしっかりとプランを立て、政策に左右されないライフプランづくりをしていきましょう。


もうすぐ出産予定です。児童手当とはどういう制度か、もらうために何をしたらいいのか、注意点など教えてください。
3歳と1歳のこどもがいてこれから教育資金も準備しなければなりません。資産運用にどのくらいお金をかけられますか?
出産にはお金がかかると聞いています。妊娠から出産にかけて、実際にどれほどかかるのでしょうか?

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