出産にはお金がかかると聞いています。妊娠から出産にかけて、実際にどれほどかかるのでしょうか?


今回、回答いただく先生は…
村井 英一先生(むらい えいいち) プロフィール
  • 妊婦健診から出産費用まで、正常分娩の場合は全額が自己負担です。
  • 妊婦健診、分娩費用それぞれに公的な助成が用意されています。
  • お勤めの人は、出産・子育てで休業した期間に対する補てんがあります。

  武田 美咲さん(仮名 28歳 会社員)のご相談

昨年結婚し、今は二人暮らしですが、ゆくゆくは子どもを授かりたいと思っています。妊娠から出産にかけて、いろいろとお金がかかると思いますが、実際どれほどかかるのでしょうか?アドバイスをお願いします。

武田 美咲さん(仮名)のプロフィール

家族構成
ご相談者 武田 美咲さん 28歳(会社員) 340万円
家族 夫 29歳(会社員) 350万円
貯蓄額 380万円

妊娠・出産費用は医療保険適用外なので〝原則として〟自己負担ですが、いろいろな助成があるのでそれほど不安に思わなくても大丈夫です。

1.妊婦健診の費用と助成

妊娠・出産では医療機関を利用しますが、病気やケガではありません。医療保険が適用されないため、基本的には受診費用全額が自己負担となり、その料金は医療機関によってまちまちです。それだけに、どのくらいの費用がかかるのか、心配ですね。ただ、出産育児一時金など、公的な助成もいろいろあります。どのような制度があり、実際にどれぐらいの助成があるのかを知っていれば、不安に思う必要はありません。ここでは、妊娠と出産にかかる費用と公的な助成制度について見ていきましょう。

妊娠をしたら、出産までの間、妊婦健診を受けていきます。その頻度は以下が目安となります。

  • ・妊娠初期より妊娠23週(第6ヵ月末)まで:4週間に1回
  • ・妊娠24週(第7月)より妊娠35週(第9月末)まで:2週間に1回
  • ・妊娠36週(第10月)以降分娩まで:1週間に1回

この頻度で受診していくと、14回程度となります。いずれも、基本は全額自己負担となりますが、市区町村役場に妊娠届を提出すると、母子手帳とともに「妊婦健康診査受診票」がもらえます。それを利用すると、1回の費用は無料~3,000円程度となります。受診票を使っても、自己負担の金額は医療機関によって異なります。また、初診は受診票をもらう前ですので、5,000円~1万円程度の支払いが必要になります。検査によっては、費用が増えることも考慮しておきましょう。
受診票が使えるのは基本的にお住いの自治体の医療機関に限られます。里帰り出産で、郷里の病院で妊婦検診を受ける場合は、いったん立て替え払いをして、後からお住いの自治体に申請をします。後から助成分をもらえるとしても、1回1万円程度の立て替え払いを想定しておきましょう。

2.出産にかかる費用と助成

出産にかかる費用は、正常分娩の場合は全額が自己負担となります。その金額は医療機関によって異なります。令和3年度では平均額は、公的病院が45万4,994円、民間病院は49万9,780円、診療所・助産院などでは46万8,443円となっています(厚生労働省調べ)。地方に比べると、東京を中心に都市部の方が高い傾向があり、さらに徐々に上昇する傾向にもあります。

これに対して、公的な助成として健康保険、共済組合または国民健康保険から「出産育児一時金」が出ます。今年(令和5年)の4月から、50万円(産科医療保障制度の対象となる場合)になりました。健康保険、共済組合に加入している人の被扶養配偶者の場合は「家族出産育児一時金」となりますが、金額は同じです。3月までは42万円でしたので、8万円のアップとなりました。もっとも、出産育児一時金(または家族出産育児一時金)の増額にともない、出産費用も上昇してくことが予想されます。さらに、医療機関によってサービスや料金はまちまちで、充実したサービスで高い室料差額がかかるところもあります。妊娠がわかってから出産まで時間はありますので、医療機関に問合せをして、じっくりと比較検討したいものです。

異常分娩の場合は、さまざまな医療的な処置を受けることになりますが、分娩費も含めて公的医療保険の対象になり、自己負担は3割です。さらに、医療費が一定額以上になった場合は後から高額療養費が支給されますので、実質的な負担は月額8~9万円程度までです。この場合も出産育児一時金(または家族出産育児一時金)は支給されますので、自己負担についてはそれほど心配ないでしょう。
出産育児一時金(または家族出産育児一時金)は、原則は出産後に後払いされるようになっていますが、「直接支払制度」「受取代理人制度」を利用して、医療機関に直接支払うこともできます。出産の費用が50万円を超える場合は差額だけ支払えばよく、50万円未満で収まる場合は差額を受け取ることができます。

3.その他の費用と助成

妊娠や出産には、医療機関に支払うほかにもいろいろと費用がかかります。マタニティ用品やベビー用品など、割高なものも多く、積み重なるとけっこうな金額になります。一般に、マタニティ関連で3~5万円程度ベビー用品で10~15万円程度かかると言われています。ただ、この費用は工夫次第で抑えることもできます。親戚や知人からお下がりをもらったり、レンタルを利用したりと、工夫してみてください。費用をかけるところと節約するところと、メリハリをつけるのもよいでしょう。
公的な助成として、昨年(令和4年)の4月から、「出産・子育て応援交付金」が始まりました。自治体によって詳細は異なりますが、妊娠を届け出た際に5万円相当、出生を届け出た際に5万円相当のクーポン券または現金が支給されます。マタニティ用品やベビー用品をそろえるのに活用するとよいでしょう。それぞれ自治体職員による面接指導を受けるなど、支給の条件は自治体によって異なりますので、お住いの市区町村にお問合せください。

4.休業期間の収入減を補う助成

お勤めの人は、出産、子育て中の収入減が心配かもしれません。その間については公的医療保険制度または雇用保険からの補てんがあります。
産前産後休業(産前42日~産後56日)の間は、健康保険(または共済組合)から出産手当金が支給されます。金額は、休業前1年間の平均賃金の2/3程度です。
その後、子どもが1歳になるまでの間は、育児休業を取得することができますが、その間は雇用保険から育児休業給付金が支給されます。金額は、出産後180日までの間は、休業開始時点の賃金の67%、それ以降は同50%です。子どもが保育園に入れない場合などは育児休業を延ばすことができ、給付金もその間は支給されます。
さらに、産前産後休業と育児休業の期間は、健康保険料と厚生年金保険料の支払いが免除されます。この点も合わせると、実際には休業前の8割程度の手取りは確保できると考えられます。
昨年(令和4年)の10月からは、従来からある育児休業に加え父親向けの新たな制度もできました。出産から8週間以内に4週間まで取得できる出生時育児休業制度で、その間は出生時育児休業給付金が雇用保険から支給されます。金額は休業開始時点の賃金の67%です。
いずれも、支給は後からですが、対象となる条件がありますので、事前の確認が必要です。また、休業による収入減をある程度までは補てんすることはできますが、全額を賄えるわけではありません。
一方、フリーランスなどの自営業の人には出産手当金や育児休業給付金はありません。国民年金の保険料は産前産後の4ヶ月間については支払いが免除されています。国民健康保険料は、来年(令和6年)1月より同期間の支払いを免除にする予定です。お勤めの人に比べると、公的な支援は少ないと言えるでしょう。それだけに、出産やその後の育児による収入減には自ら備えておく必要があります。

5.将来、出産を望んでいる人は

今見てきましたように、この数年で出産・子育て応援交付金や出生時育児休業給付金が新設されました。また今年には出産育児一時金が増額になりました。このように、妊娠や出産に関わる支援制度は拡充されてきています。今後も、新たな助成制度が設けられるかもしれません。しかし、いずれの制度もこちらから請求の手続きをしないと受け取ることができません。自治体によって対象や手続き方法が異なります。請求先も、お住まいの自治体、健康保険組合、勤務先を通じて、など様々です。妊娠がわかったら、勤務先の制度を確認し、お住いの自治体に問い合わせをするなど、情報収集に努めましょう。費用面での心配が取り除かれれば、安心してお産を迎えることができるでしょう。


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