ある程度の財産を子供に遺せそうですが、子どもの金遣いが荒く、相続をしたとたんに散財してしまわないか心配しています。


今回、回答いただく先生は…
村井 英一先生 (むらい えいいち) プロフィール
  • 遺言書は、相続した後の使い方までは指定できません。
  • 成年後見制度は、ご本人に判断能力がある場合は利用できません。
  • 信託を利用すると、少しずつご本人が受け取るように指定できます。

石原芳子さん(仮名 78歳 無職)のご相談

夫に先立たれ、一人で暮らしています。幸い、夫が財産を残してくれたので、今のところは支障なく暮らしています。心配なのは一人息子のことです。金遣いが荒く、夫から相続した1,000万円もあっという間に使い果たしてしまったようです。私の死後、遺産が入ると仕事を辞めてしまい、散財するのではないかと心配しています。息子に相続したいと思いますが、できれば、長く、計画的に使ってもらいたいと思います。お金の使い方まで私が指定することはできませんでしょうか?

石原芳子さん(仮名 78歳 無職)のプロフィール

家族構成
家族 年収 保有資産
ご相談者
石原 芳子さん
78歳
(無職)
年収 240万円 自宅(一戸建て)
預貯金:2,500万円
有価証券:2,000万円

財産の一部を、信託にしておくという方法を検討されるとよいでしょう

1.遺言書が指定できるのは、財産の分け方まで

石原様、こんにちは。ご自身が亡くなられた後の息子さんのことがご心配なのですね。誰しも、急にまとまった資金が入ると、その扱いに戸惑うものです。無駄なことに使ってしまったり、逆に増やそうとして投資で失敗してしまう人は少なくありません。ましてや、息子さんは普段からお金遣いが荒く、ご主人様からご相続した財産も早々に無くなってしまったとのことで、余計に心配ですね。財産は息子さんに遺してあげたとしても、その後の使い方まで指定しておくというのは、なかなか難しいことです。相続した時点で、その財産は息子さんのものになるからです。

自分の死後に、遺した財産をどのように分けるかを、亡くなった人が事前に指定しておく方法に「遺言書」があります(一般には「ゆいごんしょ」と言われていますが、法律用語では「いごんしょ」と読みます)。原則として、相続人は遺言書に書かれた指定に従って遺産分割をします。誰が、どのような財産を相続するかを、亡くなる前に指定しておくことができます。ただ、この指定は財産をどのように分けるか、ということころまでです。その後の使い方についてまでは指定できません。遺言書に、相続人への思いを書いておくことはできますが、あとは本人次第です。

2.成年後見制度の利用ができない場合でも、信託なら利用できる

本人に代わって、後見人が財産を管理する成年後見制度というものがあります。家庭裁判所で選任された成年後見人が、本人のためになるように財産管理をしてくれます。生活状況についても気遣ってくれ、生活費を本人に定期的に渡すということもしてくれます。ただ、この制度が利用できるのは、本人に判断能力がない場合だけです。知的障がいや精神障がいがある場合は対象となりえますが、金遣いが荒いというだけでは利用できません。
では、何も打つ手がないのかというと、そうではありません。「信託」という方法があります。

「信託」とは、資産を持っている人が、信頼できる人や法人に財産の管理を任せる仕組みです。管理を任された人や法人は、依頼者のために、その資産の管理・運用を行います。運用の成果は、依頼者が指定する人が受け取ります。依頼者自身の場合もあれば、子供など、依頼者とは別の場合もあります。運用の成果だけでなく、管理を依頼された財産自体も、依頼者の指定に基づいて受け取るようになります。

「信託」というと、「投資信託」を思い浮かべる人が多いかもしれません。証券会社や金融機関で販売されている〝○○ファンド〟です。確かに投資信託も「信託」の一種ですが、こちらは運用商品として利用されています。本来の意味での「信託」は、投資信託ほど広く知られてはいませんが、相続された後の使い方まで指定できる、優れものです。

3.毎月決まった金額を、指定した人が受け取っていく

「信託」では、依頼者が信託銀行などに財産を委託します。財産を委託された信託銀行などは、任せられた財産を管理し、依頼者が指定した人に、指定された方法で渡していきます。例えば、「月額10万円」と指定しておけば、委託された財産から、毎月10万円ずつを指定された人の口座に振り込みます。委託した人が亡くなった後も、変わらずに毎月10万円ずつ振込みを続けます。受取りを指定された人は、確かに財産を受け取っていくことになりますが、自由に引き出すことはできません

この仕組みを利用すると、相続の後も毎月決まった金額をお子様が受け取るようになり、短期間で散財してしまう心配がなくなります。否が応でも、少しずつ使わざるを得ないわけで、相続後のお金の使い方まで、親が指定することになります。
「信託」は、主に信託銀行やいくつかの信託会社が扱っています。いろいろな信託商品が用意されていますので、目的に応じて選ぶことができます。最低預入金額は、200万円、1,000万円など、商品によってことなります。信託の期間や手数料も商品ごとに異なりますので、事前に確認が必要です。信託銀行がない地域では、地方銀行が代理店として扱っています。

また、信頼できる親族などを管理者として、オリジナルの信託を作成することもできます。個人への依頼ですので、あとからトラブルとならないように、管理や受渡しのルールを公正証書にしておきます。作成にあたっては、信託作成を手掛けている団体や弁護士、司法書士などに依頼するのがよいでしょう。
なお、信託銀行の商品に「遺言信託」というものがありますが、これは相続に関する手続きを代行してくれるというサービスであり、本来の意味での「信託」ではありません。

いかがでしょう? まだお元気なうちに、一度検討されてみるとよいでしょう。ご自身がお元気なうちは、毎月決まった金額を自分が受け取り、相続後に息子さんが受け取るという指定もできます。

遠方で暮らす祖母に市民後見制度を活用したいと思っています。しかし、しくみがよくわからず不安があります。
相続でまとまったお金が入ってくる予定です。 どう活用するのがよいでしょう?
相続の制度が変わると聞きました。どう変わるのでしょうか。