相続でまとまったお金が入ってくる予定です。 どう活用するのがよいでしょう?


相続でまとまったお金が入ってくる予定です。
どう活用するのがよいでしょう?

村井 英一先生 (むらい えいいち) プロフィール
  • 住宅ローンは、借り換えを検討してみて、ダメなら少しずつ繰り上げ返済を
  • 貯蓄の第一歩は、今の家計の状況をしっかりと把握することです
  • ご主人の転職や、ご長女の進学資金のメドがついてから資産運用を考えましょう

大谷 恵子さん(仮名 42歳 会社員)のご相談

相続で、私にまとまったお金が入ることになりました。住宅ローンの返済に充てることも考えましたが、贈与税がかかると聞きました。もともと、貯蓄するのが苦手なので、せっかく入った資金を有効利用したいと思います。どのようにすればよいでしょうか?

大谷 恵子さん(仮名 42歳 会社員)のプロフィール

家族構成 : 本人 (42歳 会社員 年収170万円)
哲也さん (40歳 会社員 年収240万円)
ご長女 (14歳)
ご長男 (4歳)
今回、相続で入ってくる予定の金額 : 2,000万円+土地売却代金(予定500万円)
住宅ローン : 現在のローン残高:950万円
残りの返済期間:15年
年利:2.65%

現在の家計の状況

<収入>(手取り収入)(単位:円)

月給 ボーナス 合計
ご相談者様 100,000 250,000 1,700,000
ご主人様 200,000 0 2,400,000
合計 300,000 250,000 4,100,000

<支出>(単位:円)

金額 臨時支出 年間支出
住宅ローン返済 65,000 780,000
その他の居住費 27,000 80,000 404,000
食費 50,000 600,000
光熱費 10,000 120,000
医療費 2,000 24,000
被服費・雑貨 0 0
通信費 20,000 240,000
教育費(学校関連) 33,000 396,000
教育費(学校以外) 16,000 192,000
交際費 5,000 60,000
小遣い 8,000 96,000
その他 40,500 486,000
保険料 15,000 180,000
貯蓄 10,000 118,800 238,800
合計 301,500 198,800 3,816,800

<金融資産>(単位:円)

普通預金 0
定期預金 200,000
財形貯蓄 0
合計金額 200,000

<加入している生命保険>(単位:円)

種類 被保険者 月額保険料
介護定期保険 ご主人 14,000
医療保険 長女 1,000
学資保険 長男 9,900

ご家計を正確に把握できていない状況では資産運用などもってのほか。
不確定要素を解決し、家計を安定させてから考えましょう。

1.住宅ローンの繰上返済は要注意

大谷様、こんにちは。今回ご相続で、まとまったご資金が入るとのこと。お父様に感謝しながら、大切に使いたいものですね。
現在、住宅ローンの返済もあり、毎月の家計のやりくりが大変です。今回入る資金で、住宅ローンの繰上返済をすることも検討されたとのこと。現在のローンは金利が高いので、何らかの手を打つ必要があります。ただし、ご指摘のとおり、今回入るご資金で繰上返済をしてしまうと、贈与税の対象となってしまいます。
住宅ローンはすべてご主人様の名義となっています。そして、今回ご相続で資金を得るのは恵子様ご自身です。夫婦であっても、お金を渡すと、贈与税の対象となります。贈与税は、年間110万円以上のお金をもらった人に対してかかり、税率も低くはありません。
恵子様が相続で手にした資金を、ご主人様名義の住宅ローンの繰上返済に充当すると、ご主人様に贈与税がかかってしまいます。「黙っていればわからない」などと考えてはいけません。まとまった資金の移動には税務署も目を光らせており、税務調査が入る可能性もあります。
贈与税を払わないで済ませるためには、ご自宅の持分の一部をご主人様から恵子様へ移すことになります。恵子様のご資金に相当する分だけ、自宅の持ち主を替えるわけですが、ご主人様から恵子様への売買ということにもなりますので、所有権移転登記など、いろいろな手続きが必要になります。登記に関することは法務局、税金に関することは税務署で確認できます。司法書士や税理士などの専門家にお願いすれば安心ですが、費用がかかります。さらに、ローンを組んでいる金融機関の了解も必要で、手間と費用を考えると、あまりお勧めはできません。

むしろ、現在の住宅ローンの金利は、今の状況からすると高いものとなっていますので、借り換えを検討されるとよいでしょう。最近の状況では、変動金利の住宅ローンなどは年利1.0%未満となっています。変動金利は、金利情勢に応じて、半年ごとに金利が変わります。今後、上昇する心配もありますが、大谷様の場合、残高は950万円と、もうそれほど大きな金額ではありません。金利の上昇による、毎月の返済額の上昇はそれほど大きくはないでしょう

※変動金利ローンのリスクについては、下記のご相談の回答をご参考にされてください。

ただ、ローンの残高も減っていますが、ご自宅の資産価値も下がっています。自宅の資産価値の方がローンの残高よりも低い場合は、借り換えが難しくなります。いくつかの金融機関を回ってみて、借り換えが可能かどうかを、個別に尋ねるしかありません。もし、借り換えが難しいようなら、恵子様のご資金を生活費に充当して、ご主人様の収入をできるだけ繰上返済に充てるのがよいでしょう。

2.貯蓄の第一歩は、正確な現状把握

では、恵子様が相続で得られた資金は、どのように利用または運用していくのがよいでしょうか?
ただ、その前に考えておきたいことがあります。大谷様ご自身、「今回の相続がなければ、今後どう生活していけばよいのか難しい状況でした」とおしゃっているだけに、突然まとまったお金が入ったことは、ありがたいことです。しかし、ここでついうっかり気を緩めてしまうと、将来にわたって有効活用することはできません。相続の資金は、あくまで〝降って湧いたようなお金〟です。ここは、相続の資金が入らなかったものとして、ご家族の将来を考えてみましょう。

今回、ご相談にあたって、家計の状況をお尋ねしました。家計の支出は毎月変わるだけに把握が難しいのですが、大まかなところをご記入いただきました。このこと自体が、家計を見直すきっかけになったのではないでしょうか。
これを分析して、大谷様の将来の家計の状況を表したものがキャッシュ・フロー表とグラフです。

<今後のキャッシュフロー表(1)を別ウィンドウで表示>

<今後の家計状況の予想グラフ(1)を別ウィンドウで表示>

<キャッシュ・フロー分析の前提>

  • ご夫婦とも60歳までは現状の収入が続き、その後65歳までは減額された収入となります。
  • 基本生活費の上昇率は、年利1%とします。
  • 教育費は、お子様がともに私立高校に進学した後、ご長女は専門学校(2年)、ご長男は私立大学(4年)に進学します。
  • 住宅費は、ローン返済の後、10年ごとに維持費(修繕積立金など)が上昇します。

いかがでしょう。現状のままでもお子様の教育資金はもちろん、老後も心配はありません。ご長女が専門学校を卒業された後は、毎年貯蓄を増やしていくことができ、退職するころには、1,000万円以上の貯蓄となります。「もともとやりくりが下手な性格のため、毎月がギリギリでした」とのお話でしたが、いただいた家計の内訳をみると、現在も1年間で60万円程度の貯蓄ができていることになります。毎月は収支トントンだったとしても、天引きの貯蓄や学資保険で積み立てている部分もありますので、なんとかやりくりしながら、しっかりと将来に備えていると言えます。

ところが実際には、ほとんど貯蓄ができていません。やはり家計の把握に〝もれている部分〟があるのではないでしょうか。これを機会に、もう一度家計の把握に努めてみてください。家計が正確に把握できていなければ、将来の状況を的確に予想することはできません。また、問題点もつかめませんので、どこを改善するとよいのかもわかりません。例えば、被服費や恵子様の小遣いは0円となっていますが、別途カードの利用が2~3万円あります。カードを何に使ったのかを把握する必要があるでしょう。
実際の家計に、毎月2万円の〝気が付かない支出〟があったとします。すると、下のグラフのような状況となります。老後に不安を残すばかりか、ご長女が卒業する頃には、貯蓄が底をつき、家計が破たんしている可能性もあります。

<今後のキャッシュフロー表(2)を別ウィンドウで表示>

<今後の家計状況の予想グラフ(2)を別ウィンドウで表示>

家計改善の第一歩は、家計の正確な現状把握です。たった2万円の差でも、将来には大きな違いとなります。もし近い将来に貯蓄が底をつくような可能性があるのならば、家計の改善が必要ですが、今回ご相続で受け取った資金は、すぐに使えるようにしておかなければなりません。現状の家計の正確な把握をすることは、資金活用の前提となります。

3.当面は、不確定要素に備えましょう

最近、経済の環境が変わってきて、外貨や株式が上昇しています。今がチャンスとばかりに、あわてて投資をする人も少なくありません。しかし、為替相場や株式相場に上下はつきものです。いくら将来性に期待が持てたとしても、資金が必要な時に下がってしまっていては元も子もありません。資産運用は、将来の家計の状況を見通して、資金繰りに支障がない範囲で考える必要があります。

大谷様の場合は、まず住宅ローンの借り換えができるのか、借り換えた場合にはどれくらい負担が減るのかを確認しましょう。その上で、家計の正確な把握に努め、将来に貯蓄が底をつくことがないかどうかを検証する必要があります。もし、家計が行き詰ってしまう可能性があるのなら、その際に相続の資金を活用できるように、預貯金など、引き出しやすいものにしておくのがよいでしょう。
ご長女が高校を卒業され、専門学校や大学に進学されるのは、そう遠い先のことではありません。専門学校は2年間のところが多くなっていますが、学費は決して安いものではありません。希望する進路によっては、少なくない学費がかかります。さらに、最近の就職難で、卒業後にも援助が必要になる場合もあります。
そして、ご主人様の会社の状況が良くなく、転職も考えられているとのことです。うまく転職しないで済むか、あるいは転職がうまくいけばよいのですが、こればかりはわかりません。仕事がなかなか決まらず、無収入の状態が続いてしまう可能性もあります。また、転職したことで収入が下がることも考えられます。今、資金を価格の変動がある投資商品や、換金がしにくい長期の金融商品にしてしまうと、家計の不安が大きくなってしまいます。当面は預貯金など、安全で引き出ししやすい金融商品に置いておいて、ご家族の状況がはっきりするまで待つのがよろしいのではないでしょうか。
もちろん、引き出しやすいからといって、安易に使ってしまってはいけません。相続の資金は、ないものとして考えておきたいものです。いざという時にすぐ使えるようにしながら、なるべく手を出さないことが、家計の安心につながります。

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