一人暮らしの母を扶養に入れた方がいいですか?


今回、回答いただく先生は…
森田 和子先生(もりた かずこ) プロフィール
  • 別世帯の場合には仕送りも条件になります。
  • 同居をすると税金面でもメリットがあります。
  • 医療費の負担が高くなる場合もあります。
  • 勤務先でも確認して手続きをしてください。

  浦辺 高志さん(仮名 43歳 会社員)のご相談

父が亡くなり、母は一人で暮らしています。将来的には同居も考えていますが、しばらくは離れて暮らすことになりそうです。母を扶養に入れた方がよいのでしょうか。もしもデメリットがあれば教えてください。

浦辺 高志さん(仮名)のプロフィール

家族構成
家族 年間収入
浦辺 高志さん(43歳・会社員)年収790万円
妻(35歳・パート勤務)年収84万円
長女(7歳)
母(別居)(66歳)年金収入 152万円

離れて暮らす親を扶養に入れるには仕送りなどが必要です。同居をする場合にも注意点があります。

こんにちは、浦辺さん。ご相談ありがとうございます。離れて暮らしていてもお母様を扶養に入れられる場合がありますが、浦辺さんの場合は難しそうです。今後、同居するなどで状況が変われば扶養にできるでしょう。同居には税金や社会保険料が節約できるなどお金の面でのメリットは多いのですが、注意点もあります。一緒に確認していきましょう。

別世帯の場合には仕送りも条件になります

健康保険には扶養の制度があります。扶養が認められた人は保険料を負担しないで健康保険に加入することができるので、とてもメリットのある制度です。浦辺さんも奥様にはパート収入がありますが、年収が130万円未満なので被扶養者になっていますね。
扶養に入れるのは、配偶者や子供だけではありません。父母や兄弟姉妹などでも以下の「生計維持関係」があれば扶養が認められます。

  • 年収が130万円未満であること
    (60歳以上または障害者は年収180万円未満)
  • 同一世帯の場合には、年収が被保険者の年収の1/2未満であること
  • 同一世帯でない場合には、年収が被保険者からの仕送りよりも少ないこと

お母様は60歳以上で年収は180万円未満ですが、同一の世帯ではないため、年収よりも多い仕送りを受けていることが条件になります。浦辺さんからお母様への仕送りはしていないとのことですから、扶養に入るのは難しそうです。扶養にできる条件は、加入している健康保険組合によって違う場合もあるので、一度確認してください。

同居をすると税金面でもメリットがあります

同居をするならば、お母様の収入が浦辺様の収入の1/2未満であればよいので、扶養に入ることができます。その時には税金面でのメリットもあります。合計所得金額が48万円以下の家族を扶養すると、税金を計算する時に扶養控除を使うことができ、浦辺さんの所得税・住民税が軽減されます。
合計所得金額は、所得税の計算の途中で使われる金額です。65歳以上で収入が300万円未満の年金のみの人は、「年金額-公的年金等の控除額110万円」で計算します。お母様の場合は、152万円-110万円=42万円です。合計所得金額48万円以下なので対象になります。

扶養控除額

区分 控除額
一般の控除対象扶養親族(※1) 38万円
特定扶養親族(※2) 63万円
老人扶養親族(※3) 同居老親等以外 48万円
同居老親等(※4) 58万円

※1 扶養親族のうち、その年12月31日現在の年齢が16歳以上。
※2 控除対象扶養親族のうち、その年12月31日現在の年齢が19歳以上23歳未満。
※3 控除対象扶養親族のうち、その年12月31日現在の年齢が70歳以上。
※4 老人扶養親族のうち、納税者又はその配偶者の直系の尊属(父母・祖父母など)で、納税者又はその配偶者と普段同居している人。

医療費の負担が高くなる場合もあります

良いことばかりのようですが、扶養には注意点もあります。
扶養に入り、お母様に健康保険料の負担がなくなっても、介護保険料の負担はなくなりません。扶養に入っている人であれば64歳までは介護保険料を自分で支払う必要はありません。しかし、65歳以上になると介護保険の保険料は自分で負担します。66歳のお母様もこちらになりますね。もしも介護が必要になった場合の自己負担は、世帯の所得によっても異なるので、同居をする方が高くなると考えておいた方がよいでしょう。
また、病気やケガで医療費が高額になった場合の自己負担も増える可能性があります。健康保険には、医療費の自己負担に限度を設ける高額療養費の制度があります。限度額は所得によって決まります。お母様が一人暮らしをして自身で健康保険に加入していれば、限度額はお母様の所得で決まりますが、浦辺さんの扶養に入れば、浦辺さんの所得で決まることになります。ひと月の上限額は、お母様の所得であれば(エ)の57,600円ですが、浦辺さんの所得であれば(イ)の167,400円以上になります。

高額療養費制度 70歳未満の上限額

標準報酬月額 年収の目安 ひと月の上限額 多数回該当
(ア) 83万円~ 1,160万円~ 252,600円+(医療費―842,000円)×1% 140,100円
(イ) 53~79万円 770~1,160万円 167,400円+(医療費―558,000円)×1% 93,000円
(ウ) 28~50万円 370~770万円 80,100円+(医療費―267,000円)×1% 44,400円
(エ) ~26万円 ~370万円 57,600円 44,400円
(オ) 住民税非課税 35,400円 24,600円

勤務先にも確認しながら手続きをしましょう

また、どの健康保険に加入していても、75歳になると個人単位で後期高齢者医療制度に加入します。お母様も75歳になれば、浦辺さんの健康保険の扶養から外れ、後期高齢者医療制度に加入して保険料を納めることになります。

現在の状況ではお母様は扶養の対象外ですが、同居をすれば対象になります。しかし、税や社会保険の制度は大変複雑なうえ、改正されていきます。お母様の年齢によっても条件が異なります。勤務先などでも確認しながら手続きをするようにしてください。


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