夫婦間でのお金の移動。問題ありませんか?


今回、回答いただく先生は…
鈴木 暁子先生(すずき あきこ) プロフィール
  • 夫婦間であってもお金の移動は贈与とみなされ贈与税がかかるのが原則です。
  • 財産の性質や贈与の目的などからみて、贈与税がかからない場合もあります。
  • 夫婦別管理でもライフプランに合わせた柔軟さを持ちましょう。

  近藤 奈美子さん(仮名・30歳・会社員)のご相談

9月に結婚した30代の会社員です。本来であれば結婚式を行う予定でしたが、コロナ禍のため苦渋の選択で式は行わず入籍のみで済ませることにしました。共働きなので家計は夫婦別管理にするつもりですが、貯金の情報はシェアしたいと思っています。貯金用の通帳を作り、使わずじまいとなった結婚資金を入れ、今後はこの通帳にそれぞれが入金しようと考えています。
また、マイホーム購入のためペアローンを組むことにしました。ただ、私の収入がそれほど多くないため、夫が私の分は暦年贈与してくれると言っています。このような夫婦間でのお金の移動は問題ないでしょうか。

近藤 奈美子さん(仮名)のプロフィール

家族構成
家族 年間収入
本人(30歳・会社員) 手取り360万円
夫(35歳・会社員) 手取り800万円

口座は共有できないので、貯蓄もローンの返済もそれぞれの口座で

1.夫婦間でもお金の移動があれば贈与とみなされ、原則贈与税がかかります

近藤さん、ご結婚おめでとうございます。ただコロナ禍で結婚式ができなかったのは心残りだったでしょう。それでもお二人はもちろん、ご来賓やご親族の健康を考えてのこと、ご英断でしたね。また、結婚資金として貯めた貯金をベースに、今後貯蓄の習慣をつけていこうと前向きな姿勢は素晴らしいです。

共働き夫婦で夫婦別管理というスタイルは、最近ではずいぶん多くなっていると感じます。
ただ、すべて別管理となると、世帯として必要な貯蓄ができているのか、世帯として必要な保障はカバーできているのか、各自のお金の使い方は適正かなどがわかりにくくなるご家庭も少なくありません。情報共有する部分と自由裁量の部分はメリハリをつけると良いですね。

近藤さんのように「貯金用の共通口座を作り、そこへそれぞれが毎月入金で夫婦の貯金としていく」と考えるご夫婦も多いのですが、結論から申し上げるとそれはやめておきましょう。お二人の認識は夫婦で作り上げた貯金ですが、新規口座を開設する際、連名では作れずどちらかの名前で作ることになります。税務的にはあくまで名義人のお金とみなされます。逆に「ここには自分も毎月お金を入れている」というと、贈与とみなされる可能性があります。

また、マイホーム購入も予定しているとのことで、もしこの通帳から頭金を捻出した場合、税務的には口座の名義人が頭金を出したということになります。ご存知かと思いますが、それぞれの持分は支出した金額の割合にしないと、一方からの贈与とみなされます

このように、「実際はこうなんだ」という言い分はあるかもしれませんが、税務上は外形が重要だということは意識してください。たとえ夫婦間であっても同様です。

2.例外的に贈与税がかからないケースもあります

一方で、財産の性質や贈与の目的などからみて、贈与税がかからない場合もあります。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4405.htm
(国税庁HP「贈与税がかからない場合」)

ここでは夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるものと規定されています。通常必要と認められる生活費としては、食費、水道光熱費、通信費、家賃などがあります。現在、家賃はご主人様負担、その他は折半ということですので、奈美子さんが負担している生活費についてご主人から「生活費に充てて」と毎月15万円渡されたとしても、それを使って生活費の支払いに充てたのであれば、そのお金に贈与税はかかりません。ただし生活費の名目で贈与を受けた場合であっても、それを預金したり株式や不動産などの買入資金に充てている場合には贈与税がかかることになります。

ところで、住宅ローンにかかる支出をご主人様から奈美子さんに暦年贈与することを検討しておられます。奈美子さんの貯金を減らさないようにしてあげたいというお気持ちは素敵なのですが、これも控えたほうが良いと思います。

確かに年間110万円までであれば、贈与税はかかりません。ただ、税務署では暦年贈与ではなく定期贈与と判断する可能性もあります。定期贈与とは、定期の給付を目的とする贈与のことで、たとえばもともと1,000万円を渡したいが一度に渡すと贈与税がかかるので10回に分けて100万円ずつ渡すというように、最初から贈与する全額を渡したい意思があると、これは暦年贈与ではなく定期贈与とみなされます。定期贈与の場合は全額を一括して(この事例の場合は1,000万円)贈与した場合の税率で贈与税が課税されてしまいます。今回、ご主人様が奈美子さん分の住宅ローン費用を奈美子さんに贈与するということは、当初から千万円単位の金額を負担してあげる意思があるわけです。したがって定期贈与とみなされる可能性は高いと思われます。

先ほど贈与税はかからない一例として、一般的な生活費をご紹介しました。現在は一部折半にしているとのことですので、たとえば生活費はご主人様が全額負担というふうにしてはいかがでしょう。奈美子さんの通帳からその分は減らなくなります。その代わり住宅ローンは夫婦間でお金の移動をすることなく、シンプルに奈美子さん分は奈美子さんが返済すれば、奈美子さんの貯金を減らしたくないということと、複雑な贈与などする必要がないことを両立できるのではないでしょうか。

3.夫婦別管理でも、あまりガチガチにならない柔軟さも取り入れて

ひとくちに夫婦別管理といっても、完全に半分ずつ、収入に応じて案分、費目ごとなど、そのスタイルはさまざまです。ただ、もともとお金に色はついていませんので、無理に色をつけようとすると逆に複雑になったり管理しにくくなってしまうかもしれません。
貯金はそれぞれがそれぞれの名義で責任を持って貯めて管理する。ただし情報共有してほしい費目です。生活費などは当初は折半だったとしても、お子さんができて妻の収入が減少するとそのとおりにいかなくなることもあります。今後のライフプランの変化に応じて家計費の分担も見直すなどの柔軟さも持ち合わせると、気持ちも楽になると思いますよ。


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