教育資金贈与と結婚・子育て資金贈与は、どちらがよいでしょうか?


今回、回答いただく先生は…
森田 和子先生(もりた かずこ) プロフィール
  • 教育資金贈与なら1,500万円まで非課税。
  • 結婚・子育て資金贈与は小学校入学前までが対象。
  • 制度を利用しなくても非課税になる場合がある。

  新藤 裕太さん(仮名 33歳 会社員)のご相談

退職した父が終活を始めました。相続についてもいろいろと考えているようです。先日、「孫のためにお金を贈与したい。教育資金贈与か結婚・子育て資金贈与が良さそうだ」と言われましたが、どちらを選べばよいのでしょうか。

新藤 裕太さん(仮名)のプロフィール

家族構成
家族 職業
本人裕太(33歳)会社員
美結(31歳)会社員
長女愛里沙(1歳)

新藤家では教育資金贈与を中心に検討されるとよいでしょう。ただし、期間限定の特例なので終了時期に注意しましょう。

こんにちは、新藤さん。ご相談ありがとうございます。
子育てには何かとお金がかかるので、援助していただけるのはとても助かりますね。お父様にとっても生前に贈与することで相続財産を減らせるメリットがあるため、相続対策にもなるでしょう。新藤家の場合、お子様への援助は教育資金贈与の方が使いやすそうです。
どちらの制度も期間限定の特例なので、今後延長がなければ2021年3月で終了予定であることには注意が必要です。内容を確認していきましょう。

教育資金贈与なら1,500万円まで非課税

教育資金贈与の特例」と呼ばれているのが、「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税」です。父母や祖父母から教育資金を1,500万円まで非課税で贈与してもらうことができます。受け取ることができるのは30歳未満で、前年分の所得税の合計所得金額が1,000万円以下である人です。
利用するには、この教育資金口座を取扱う信託銀行、銀行、証券会社で口座を開設し、お父様に資金を預け入れてもらいます。口座からお金を引き出す時には、金融機関に領収書などを提出します。

教育費として認められるのは、(1)授業料・給食費・修学旅行費などの学校等に直接支払われる費用や、学校等での教育に必要な費用、(2)塾や習い事の費用、通学定期代や留学の渡航費など学校等以外に直接支払われる費用などです。

教育資金贈与の特例
非課税限度額 1,500万円
贈与を受ける人 30歳未満
認められる費用 (1)学校等(※)に対して直接支払われる費用
  • 入学金、授業料、入園料、保育料、施設設備費又は入学(園)試験の検定料など
  • 学用品の購入費、修学旅行費や学校給食費など学校等における教育に伴って必要な費用など
(2)学校等以外に対して直接支払われる費用
(限度額500万円)
  • 教育(学習塾、そろばんなど)に関する役務の提供の対価や施設の使用料など
  • スポーツ(水泳、野球など)又は文化芸術に関する活動(ピアノ、絵画など)その他教養の向上のための活動に係る指導への対価など
  • 通学定期券代、留学のための渡航費などの交通費 など
(社会通念上相当と認められるもの。23歳以後については、教育訓練給付金の対象となる受講費用に限られる

※学校等:学校教育法で定められた幼稚園、小・中学校、高等学校、大学(院)、専修学校及び各種学校、一定の外国の教育施設、認定こども園又は保育所など

口座の資金を使い切った時や、贈与を受ける愛里沙さんが30歳(在学中などの場合は40歳)に達した時には口座は終了し、残金があれば、原則として贈与税の課税対象になります。なお、贈与から3年以内にお父様が死亡した場合、贈与を受けた愛里沙さんが在学中でなく、23歳以上である場合には、口座の残金が相続財産に加算されます。

結婚・子育て資金贈与は結婚から小学校入学前までが対象

結婚・子育て資金贈与」と呼ばれているのが「直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税」です。父母や祖父母から結婚・子育て資金を1,000万円まで非課税で贈与してもらうことができます。受け取ることができるのは、20歳以上50歳未満の人です。裕太さんが贈与を受けて愛里沙さんの子育て資金にすることも、愛里沙さんが贈与を受けて将来の結婚・子育て資金にすることもできますね。
利用するには、結婚・子育て資金口座を取扱う信託銀行、銀行、証券会社で口座を開設し、お父様に資金を預け入れてもらいます。口座からお金を引き出す時には、金融機関に領収書などを提出します。

結婚・子育ての費用として認められるのは(1)挙式費用や家賃・敷金などの新居費用、(2)妊婦検診・不妊治療・産後ケアなどの費用や、子の医療費、幼稚園・保育園の保育料などの費用です。(1)の結婚にかかる費用については、300万円が限度となります。

結婚・子育て資金贈与の特例
非課税限度額 1,000万円
贈与を受ける人 20歳以上50歳未満
認められる費用 (1)結婚に際して支払う費用
(限度額300万円)
  • 挙式費用、衣装代等の婚礼(結婚披露)費用(婚姻の日の1年前の日以後に支払われるもの)
  • 家賃、敷金等の新居費用、転居費用(一定の期間内に支払われるもの)
(2)妊娠、出産及び育児に要する費用
  • 不妊治療・妊婦健診に要する費用
  • 分べん費等・産後ケアに要する費用
  • 子の医療費、幼稚園・保育所等の保育料(ベビーシッター代を含む)など

口座の資金を使い切った時や、贈与を受ける裕太さんまたは愛里沙さんが50歳に達した時には口座は終了し、残金があれば、原則として贈与税の課税対象になります。また、お父様が死亡した場合には、在学中などの状況に係わらず口座の残金が相続財産に加算されます。教育資金贈与の特例とは異なる点だと言えます。

制度を利用しなくても非課税になる場合がある

結婚・子育て資金を裕太さんが贈与してもらうとすれば、主に愛里沙さんの保育料などに使うことになるでしょう。愛里沙さんが贈与してもらうとしても、愛里沙さんが結婚や子育てをするのはずいぶん先になりそうです。教育資金贈与を愛里沙さんが受けるのが現実的だといえますが、2つの制度を併用することもできます
なお、今必要な生活費や教育費などをお父様が負担しても、通常認められる範囲のものであれば贈与とはみなされません。教育資金贈与も結婚・子育て資金贈与も手続きなどが必要であり、手間もかかります。将来の資金もまとめて贈与してもらう場合にメリットのある制度なので、贈与の金額もよく考えた上で利用するとよいのではないでしょうか。

(この記事は2020年11月時点の情報に基づいて執筆しています。)


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