面倒くさがりな自分でも簡単に家計をチェックできる方法はありますか?


今回、回答いただく先生は…
井上 信一先生(いのうえ しんいち) プロフィール
  • 大切な勘所さえ押さえておけば、日々の生活で何も努力する必要はありません
  • 家計が通常運転の状態にあるのかどうかのバロメーターに注目しましょう
  • お金についてのちょっとした工夫と、定期的に長期的な視点での確認も必要

  加藤 夏子さん(38歳 仮名)のご相談

もの凄く面倒くさがりでズボラな性格です。
以前、マンション購入時にFPの方に相談しようとも考えましたが、家計の収支を整理しきれず断念したことがありました。もちろん、スマホのアプリでできるとはいえ、家計簿をつけるのも面倒です。
こんな自分でも簡単に家計チェックできる方法はありますか?

加藤 夏子さん(仮名)のプロフィール

家族構成など
家族 年間収入 貯蓄額
本人 38歳 約300万円(会社員) 約600万円
夫  42歳 約480万円(会社員)

  家計のセルフチェックは半年に1度、普通預貯金口座の増減をチェックしておけば十分。
そのためにも、日々の暮らしにひと手間の工夫をしましょう。

加藤さん、ご相談ありがとうございます。
FP(ファイナンシャル・プランナー)等が家計相談をお受けする際は、ご相談者の状況を把握するために、口頭や書面等で「収入」「支出」「金融資産残高」の額やその内訳などをお聞きするのが一般的です。家計簿等をつけていない場合だと、これらをあらためて調べるのはなかなか大変ですよね。とくに、「何に」「いくら」使っているのか、支出の内訳を調べるのはとても面倒に思えます。そこで、簡単に家計のセルフチェックをおこなえるポイントをご紹介します。

「何にいくら使っているか?」は大きな問題ではない

他人の家計を知ろうとする場合、その家計の子細な現状把握が必要です。ですが、自分の家計を自分で把握する際には必要最低限、かつ、重要なポイントだけ押さえておけば十分。家計とはいわば入ってくる「収入」と出ていく「支出」、そしてその結果に残った「貯蓄」です。そしてお金の流れ(フロー)においては、収入と支出のどちらか一方を把握するだけでは不十分なのです。
例えば、収入が増えても、その分使ってしまえば「収支」は変わりません。逆に、収入が減ったとしても、その減った分だけ支出を抑えれば、やはり「収支」は変わりません。また、支出は「モノやサービスの単価×使う頻度」で計算できますから、物価が上がっても頻度を落とせば、支出の絶対額に大きな変動はないので、仮に収入が増えてなくても、やはり「収支」が変わることはありません。
このように、家計におけるフローでは、収入と支出の両面の成果である「収支」がポイントとなります。さらに突き詰めれば、この収支の果実は貯蓄(ストック)に自然と表れるものです。1年間の収支が黒字なら昨年末より貯蓄は増え、逆に赤字なら貯蓄は減るからです。

よって、ご自身の家計をチェックする最もシンプルで簡単な方法は、給与等が振り込まれる普通預貯金の口座残高の増減を、定期的、例えば覚えやすくボーナス月などの半年に1度、確認するだけです。もし口座残高が半年前と変わらないか増えていれば何の問題もありません。もし半年前より減っていたら、この半年間の収支が赤字であった証拠。収入が減ったのか支出が増えたのかのいずれか、あるいはその両方が原因の筈です。次の半年間に引きずらないよう、そこでようやくお金の使い方を調べれば良いのです。普通預貯金口座の残高こそ、家計が健康であるのか問題があるのかのバロメーターとなるのです。いかがでしょう。これならとても簡単にできそうではないでしょうか。
家計簿というのは、「いつ、何に、いくら使ったのか」を主に記録するものですが、これは家計の果実である貯蓄に影響する収支の、そのまた1要素である支出の内訳を掘り下げただけのもの。このことだけに頑張って労力を費やしても、それだけでは家計のチェックには繋がらないのです。

シンプル家計把握は、ひと手間の工夫で

さて、家計の営みとなる収支の果実は貯蓄、さらには給与振込の普通預貯金口座の残高に表れるので、これを半年に一度確認するだけで、家計チェックは十分とご紹介いたしました。ですが、そのためにも、やはりちょっとした工夫をしておく必要があります。

その1つ目は、給与振込口座はあくまでも家計における生活用のお金のプールとすることです。以下3点に留意しましょう。

  • ① 投資商品等での資産運用はもちろん、貯蓄をする場合でも将来の資産形成は別の預貯金口座を作り適宜お金を移すこと。普通預貯金口座はシンプルに日々の生活資金のプール専用とすること
  • ② 日々の現金の引き出し、口座引落とし、口座振替、クレジットカード決済などの、衣食住遊等の支払いの全てをこの普通預貯金口座に集約させること
  • ③ チェックをシンプルにするためにもこの口座は家計で1つ。あるいは夫婦で2つまでに絞ること

工夫点の2つ目は、お金の使い過ぎを振り返り、反省点を改善し次に引きずらないためにも、無駄な労力を要することなく過去の支出記録を残すこと。
「いつ、何に、いくら使ったのか」は大きな問題ではないと述べましたが、いざ、家計改善の糸口とする時には、過去の支出の内訳を調べる必要があり、その内訳となる明細が必要です。そのためにも、日々のお金の支払を可能な限り、現金払いからキャッシュレス決済に移行すること。キャッシュレス決済サービスでは、自動的に利用明細が一定期間保存されるので家計簿の代わりになります。決済方法も翌月一括清算とすれば無駄な金利や手数料もかからないので、何か損をするようなことはありません。家計簿記入のような作業を不要とするためにも、キャッシュレス決済への移行はお勧めです。

最後の3つ目は、お金の使い方。浪費をできるだけ減らし、自分への投資として活かせるような「使い上手」を意識すること。使い上手な支出を心がければ、「いつ、何に、いくら使ったのか」は大きな問題ではなくなります。

キャッシュレス決済の利点や経済的な付加価値、そしてお金の、「使い上手」となるためのコツなどは、過去の記事で紹介しています。ご参考になさってください。

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できればキャッシュフロー表を自分で作ってみましょう

今回は、自分の家計の簡単なセルフチェックのしかたをご紹介しました。
ですが、何か大きな支出をする時や収入が変わる時などの収支の大きく変わるイベントの節目、そして、資産運用を始める時などには、キャッシュフロー表があると将来の目安がわかるので安心です。キャッシュフロー表とは、現在の家計の状況をもとに将来の収入の変動や支出の変動を予測し、長期的な収支の推移や金融資産残高の推移をシミュレーションするもの。この先の長い人生における金融資産残高の増減を確認できるので、将来的に貯蓄が枯渇してしまうような家計の問題点を今から確認できるほか、マイホーム購入や子どもの教育プラン、老後の暮らし等といった人生における様々なイベントについて、自分の選択が適切かどうかをチェックすることができます。
また、金融資産残高の長期的な推移から、家計の余裕資金が「いくら」あり、それが「いつまで(余裕資金として)続くのか」、その目安を確認できるので、手元の預貯金のうちいくらまでなら(長期間に渡って資金を拘束するような)投資商品に移せるのか、資産運用を検討する際にも活用できます。さらに、収入のある家計の生計者が亡くなる等、万一の際に必要な死亡保険金の推移までもシミュレーションできるといった優れもの。家計の相談を受けるFP等に限らず、誰にとっても便利なツールなので、できれば誰でも自分自身で作れることが望ましいといえます。
今ではWEB上に無料でキャッシュフロー表を作成してくれるソフトがたくさんあります。作り方も質問事項に沿って家族構成や年齢、家計の数字等を入力するだけの簡単な方法で、表やグラフとして将来の家計像を視覚化してくれます。
以下にURLの一例を載せますので、是非、一度確認してみてください。

参考(2022年11月25日時点):NPO法人 日本ファイナンシャル・プランナーズ協会

参考(2022年11月25日時点):金融広報中央委員会・知るぽると

なお、キャッシュフロー表は、あくまでも作成時点での予測の1つに過ぎません。一度作り方のコツさえ掴んでしまえば、次に作る際のハードルは下がる筈です。できれば、定期的に作成し確認しておけば、予測に反する家計のピンチを早期に発見できるので、その見直し方法も小さな軌道修正で済みます。そしてこうしたことを習慣づけておくことで、日々の家計に関しては必要最低限のセルフチェックだけで何も気にする必要がなくなるのです。


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