子どもや孫への生前贈与を検討しています。 その方法や注意すべき点を教えてください。


今回、回答いただく先生は…
井上 信一先生(いのうえ しんいち) プロフィール
  • 贈与する財産だけでなくご自身等で必要な財産も含めて、お金の有意義な使いみちを考えましょう
  • 「二次相続」・「代償分割対策」・「相続開始前3年以内の贈与」等には、特に注意が必要です
  • 具体的なプランを検討する際には、枝葉末節にとらわれない対策を検討しましょう

  内野健二さん(73歳 仮名)のご相談

小規模ですがこれまで事業を営んでおり、こちらについては家族以外の役員への事業承継を進めています。これまでは妻と同居の次男に自宅を遺すための手続きを済ませておけば充分だろうと、その他の個人資産の相続については考えていませんでした。今後、いろいろと相続対策や遺言作成を検討していくつもりですが、将来に相続税が発生する前提で、生前に子や4人の孫へ贈与をおこなうとして、注意すべき点や贈与の方法の基本的な考え方について教えてください。

内野健二さん(仮名)のプロフィール

家族構成 健二さん名義の個人資産の概要
本人(73歳) 会社経営者
※配偶者と次男家族(4名)と同居
・自宅の土地・建物
・現金・預貯金・有価証券
※現在保有している自社株と自社の建つ土地の持ち分を会社に売却する予定で、その売却額が現預金に加算する
配偶者(76歳) 専業主婦
次男(52歳) 会社員(親の会社とは関係ない)
※配偶者と子が2名
※子は2名とも成人し会社勤め
長男(54歳) 個人事業主
※親の会社とは関係なく親とは別居
※家族は配偶者と子が1名
※子は成人し別居で会社勤め
長女(49歳) 契約社員
※親の会社とは関係なく親とは別居
※家族は配偶者と子が1名
※子は成人し同居で会社勤め

生前贈与は額だけでなくタイミングや対象に注意。
自宅の相続、二次相続も考えながら贈与プランをご検討ください。

内野様、ご相談ありがとうございます。事業のご承継は何かと難しいところですが、後進の方へのご準備を進めておられるとのこと。また、ご自宅も奥さまと同居のご次男へ遺される準備を整えられたとのこと。着々とご自身の整理を進めていらっしゃると思います。
あとはご相談のとおり、事業承継時の資産譲渡(売却)によってさらに増加する財産の相続税対策と、ご家族にとって円満な遺産分割対策ですね。
今回は各種相続対策の中の生前贈与について、今後具体的なプランを検討される上でのご留意点やポイントについて述べさせていただきます。

二次相続をも想定した贈与を検討しましょう

相続税の計算では、相続人の数に応じた基礎控除額を相続税の課税財産の金額から差し引けます。
将来、内野様か奥さまの一方に相続が発生した場合、相続人は遺された他方と3人のお子さまの計4人ですが、その後の二次相続時はお子様だけなので、基礎控除額が1名分減ってしまいます。
また、相続税では、亡くなった方の配偶者の相続分には大きな税額控除がありますが、この措置は子どもには適用されないので、二次相続時の相続税負担が深刻になるケースが少なくはありません。万一、内野様よりも先に相続税を心配する財産をお持ちでない奥さまが亡くなられた場合は、配偶者への税額控除を存分に活用できないまま二次相続に備えることになります。
よって、ご夫婦どちらかがこの先1人になった後でも安心して暮らせる生活資金を計算され、奥さま名義の財産を一定額確保するよう、まずは奥さまへの贈与を検討するのも一考です。生前贈与対策においては、配偶者より子や孫への贈与を優先するのが一般的なのですが、ご夫婦が健在なうちに、お互いの生活について考える機会を作っておくことは何よりも大切なことです。その上で一次相続後に慌てぬよう、ご夫婦の生活に影響しない範囲で子や孫への贈与を検討するのが良いでしょう。

代償分割も考慮した贈与対策を

ご家族が後々に揉めぬよう、公平な遺産分割も大切な相続対策となります。
ゆくゆく自宅を相続されていくご次男と、ご長男とご長女の相続分とが公平であれば問題ありません。ですが、財産の額が不公平な場合で、分割が難しかったり、共有名義が後々のトラブルになりかねなかったりする自宅のような財産が関係する場合には、代償分割が解決策のひとつとなります。

内野様のご家族の場合、分割できない自宅相続時にそれぞれの相続相当分をご次男からご長男やご長女へ金銭等で渡し(代償交付)、相殺すれば皆が公平な額を相続した計算となるような準備が必要です。もし、ご次男に金銭等が用意できないようなら相応分を生前贈与しておくことも考えられます。
ただし、この場合も不公平とならぬよう、贈与額が過大になり過ぎることを避けねばなりません。この塩梅は非常に難しいため、代償交付金の準備としての生命保険契約が、代償分割対策と相性の良い手段として多く活用されます。

相続開始前3年以内の贈与に注意

生前に財産を分散すれば、相続税の課税対象額を容易に減らせるのは誰もが考えることです。
ところが、相続開始前3年以内の贈与は贈与時の金額で相続財産に持ち戻さねばなりません。言い換えると、3年以内の生前贈与は無かったものとして計算し直すということです(贈与時に負担した贈与税額は、その人の納付相続税額から控除されます)。ただし、持ち戻しの対象は、相続人(配偶者と子)と遺言などに基づく相続によって財産を取得した場合の贈与に限られます。

例えば、内野様のお子様がご健在の場合、その子(お孫さん)は本来の相続人ではないので、お孫さんへの贈与は、たとえ3年以内の贈与があっても持ち戻しの対象とはなりません。
逆に、お孫さんが可愛いあまり、生前贈与をした上に遺言等で相続までさせてしまうと、この持ち戻しの対象となるばかりか、本来の相続人ではないため、相続税額の2割加算の対象となるので注意が必要です(養子の孫も同様です)。

その他の基本的な留意点や各種特例の活用

他に、子や孫への「住宅取得や増改築等のための費用」や「教育費用等」、「結婚・子育て費用等」の資金用途については、2021年まで(住宅取得等は12月末、それ以外は3月末)の時限措置で、一定要件を満たせば、一定金額までの一括贈与の非課税特例の制度が認められています。一般的な贈与と異なり、こうした特例を適用させる場合は、上述した「相続開始前3年以内の贈与」の縛りはありませんが、贈与資金の使途に一定の制約があり、注意が必要です。

生前贈与プランを単なる相続税節税のためだけで考えるのは良くありません。贈与する人が今後の生活資金を充分に確保し将来もご家族の負担になることなく生活できることが前提です。希望するライフプランを全員が実現できるよう、有意義なお金の使いみちを考えるためのプランを考えてください。
今後、具体的な手法を検討されると思いますが、目先の節税額などの枝葉末節にとらわれない対策を検討いただければ幸いです。


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