大動脈解離を患い手術・入院の父。 医療費の支払いとこれからの生活が心配です。


大動脈解離を患い手術・入院の父。
医療費の支払いとこれからの生活が心配です。

今回、回答いただく先生は…
宮塚 達夫先生 (みやつか たつお) プロフィール
  • 健康保険制度を理解しましょう
  • 医療保険の請求を早めにしましょう
  • 病院に相談しましょう

片田 加奈さん(仮名 29歳)のご相談

母と離別し、一人暮らしをしている父が急に喉と首の後ろに痛みを訴え、そのまま救急搬送されました。大動脈解離と診断され、すぐに9時間の緊急手術となりましたが幸い手術も成功し、ICUからも出られました。しかし、退院できるまでは3週間程度かかると言われています。
母と離別後、父は派遣会社で勤務しており、蓄えもほとんどない状態らしいのですが、手術や入院費用で200万円近くかかると聞きました。現在の仕事には復帰できるようなのですが、すぐにはできそうにもなく、父の生活が心配です。 子供は私を含め娘が3人いますが皆遠方に嫁いでおり、それぞれの家庭もあるので、介添えや資金的援助もできない状態です。 今後の見通しとアドバイスをお願いします。

片田 加奈さん(仮名)のプロフィール

家族構成 : 本人:(29歳)
父:(54歳 派遣会社勤務)
父 月収(手取り) : 40万円程度(賞与なし)
現在加入している保険 : ・医療保険
入院給付金 日額1万円
手術給付金 一律20万円
支払限度日数 60日(1入院につき)
通算支払限度日数 1,095日
その他特約なし

高額医療費の払い戻しや保険などで自己負担はそれほどには。
しかし、払い戻しや支給までのタイムラグに注意が必要。

まずは大手術の成功、何よりでございました。
ただ私が調べたところこの疾病の場合、職場復帰できるまでには早くて1カ月、長い人だと1年という方もいらっしゃるようです。片田さんがお父様の今後の生活を心配するのもごもっともだと思います。病院への支払や、今後社会復帰するまでの家計収支を考えてみましょう。

病院から請求される医療費について

お父様の場合200万円程度の医療費だということですが、おそらくこの症例の場合200万円という金額は、健康保険での「療養の給付」と患者の一部負担金を合算した金額だと思われます。したがって、実際に病院から請求されるのは、食事代や差額ベッド代を引いた残りの金額(総医療費)の一部負担金(3割)、60万円程度だと思われます。60万円でも大金ですが、安心してください。高額療養費という制度があり、払い戻しを受けることができます。

高額療養費とは同一月(1日から月末まで)にかかった医療費の自己負担額が高額になった場合、一定の金額(自己負担限度額)を超えた分が、あとで払い戻される制度です。
現在54歳で手取り月収40万円程度のお父様の場合、自己負担限度額は下記の式で計算することができます。

80,100円+(総医療費-267,000円)×1% お父様の総医療費が200万円だった場合の自己負担限度額は 80,100円+(2,000,000円-267,000円)×1% =97,430円になります。

食事代や差額ベッド代は別途自費負担になりますが、おおよそ10万円強負担すればよく、1カ月に60万円支払った場合でも50万円位は払い戻してもらえることになります。
しかし、払い戻しは医療機関から提出される診療報酬明細書(レセプト)の診査を経て行われるため、実際に払い戻しされるのは診療月から3カ月以上経ってからになってしまいます。

手元資金がない場合

払い戻してもらえることは分かったが、そもそも60万円も手元資金がない、3か月以上先の払い戻しでは、それまで生活できないといった場合はどうすればいいのでしょうか?下記のようにいろいろな方法があるのでご安心ください。

①限度額適用認定証を取得する

お父様のように70歳未満の場合、「限度額適用認定証」の交付を受けておけば、医療機関の窓口に提示することで、医療機関ごとに一月の支払額を自己負担限度額までにすることができます。つまり10万円程度用意できればいいことになります。
手続きは簡単で、加入している協会けんぽや健康保険組合などに申請書を提出すれば、1週間程度で交付を受けることができます。お父様が月初に入院したような場合、すぐに手続きをすれば、初回請求に間に合う可能性があります。

②病院の窓口に相談する

病院にはケースワーカーと呼ばれる人を配置しているところもあり、いない場合でも窓口で患者のさまざまな相談にのってくれるはずです。事情を話せば治療費の分割に応じてくれる病院が多いので、相談してみましょう。

③高額医療費貸付制度を利用する

限度額適用認定証の発行が間に合わず、医療費の支払いに充てるための費用が必要な場合、高額療養費が支給されるまでの間、無利子の貸付制度があります。高額療養費支給見込額の8割相当額を無利子で借りることができます。 協会けんぽや健康保険組合などに必要書類を添付し、高額医療費貸付金貸付申込書を提出すれば借りることができます。貸付金の返済は、支給申請した高額療養費の給付金の支払を返済金に充て、残額は指定した金融機関に振り込まれます。

④クレジットカードを利用する

最近ではクレジットカードで治療費の支払いができる病院が多く、クレジット一括払いで治療費を支払うと、手数料なしで実際の支払いを遅らせることができます。但し、最長でも2カ月程度なので注意が必要です。
クレジットカードで借り入れをして一時しのぎをする方もいますが、利子が発生してしまうので、カードでの借り入れはなるべく避けたいものです。

退院後の生活費

職場復帰までに相当期間必要となった場合、お父様のように派遣社員だと当然収入が途絶えてしまい、生活費が心配です。でも傷病手当金という給付があるのでひとまず安心です。

傷病手当金は、被保険者が病気やケガの療養のために会社を休み、事業主から十分な報酬が受けられない場合で、会社を連続して3日間(待機)休んだ後、4日目以降の仕事に就けなかった日に対して支給されます。支給される期間は、支給開始した日から最長1年6カ月なので、お父様が職場復帰するまでには十分なのではないでしょうか。
気になる金額ですが、1日につき被保険者の標準報酬日額の3分の2に相当する額が支給されます。標準報酬日額とは、毎月会社から支給される通勤費を含めたおおよその総支給(税込)の額の平均(標準報酬月額という)を30で割った金額です。お父様の手取月収は40万円程度とのことなので、おそらく標準報酬月額は50万円程度ではないでしょうか。

仮に45万円とした場合の標準報酬日額は1万5千円となり、傷病手当金の日額は3分の2の1万円になります。30日間休業した場合の支給額は30万円です。通常の手取月収より10万円少なくなってしまいますが、外食費用や交際費などが減ることを考慮すれば、生活できない金額ではないでしょう。但し、傷病手当金が支給されるのは、申請後1~2カ月後となるケースが多いため、生活資金がうまく回るように資金計画をたてることが重要です。

まとめ

前述したケースで今回1日に入院して同月30日に退院し、退院後30日で職場復帰できた場合の収支を大雑把に考えてみましょう。

マイナス分
病院への支払 10万円
月収の減少分 40万円×2カ月=80万円
マイナス分合計 10万円+80万円=90万円

プラス分
傷病手当金の給付  約30万円×2カ月=60万円
医療保険からの給付 手術給付金 20万円
          入院給付金 1万円×30日=30万円
プラス分合計 60万円+20万円+30万円=110万円

入院が2カ月にまたがった場合の高額療養費自己負担限度額の増額負担分や、退院後の通院治療費、入院時における雑費など、その他支出も多々ありますが、それほどのマイナスにはならなそうです。一時的な資金ショートを招かないためにも、医療保険金請求などできる限りの手続きを早急に行ってください。そうすれば、生活資金は大丈夫だと思います。

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