外貨建て商品での運用に興味があります。どんな点に注意して選べばよいですか?


今回、回答いただく先生は…
井上 信一先生(いのうえ しんいち) プロフィール
  • 国内でなく外国の資産に、円貨建てでなく外貨建ての資産を持つことの意味はあります。
  • なるべく低コストでシンプルな仕組みの商品に、タイミングを分散して運用しましょう。
  • 金融商品の長所や短所は様々なので、1つの商品に絞り込まないという選択も。

  細川 広子さん(36歳 仮名)のご相談

これまで預金や国債でしか運用していないのでなかなか資産が増えてくれず、将来の不安も感じ始めています。
先日、金融機関で保険タイプの商品を勧められたのがきっかけで、外貨建て商品に興味を持ち始めています。私にとっては勧められた商品が魅力的に感じましたが、それなりにリスクもあるのだろうとは考えてはいます。また、これまで外貨に接する機会は海外旅行時くらいで、外貨建ての商品での運用の経験はありません。
そこで、外貨建て商品のメリットや注意点、どういう商品の選択肢があるのか教えてください。直近は大きなお金を使う予定がないので、普通預金のうち300万円ほどを運用したいと考えています。

細川 広子さん(仮名)のプロフィール

家族構成など
家族 年間収入 貯蓄額
本人 36歳 約500万円(会社員) 約800万円
独身、賃貸マンションに居住

運用において万人にベストな選択肢はありません。ベターな選択をするためにも、外貨建て商品で運用することの意味やポイントを押さえておきましょう

細川さん、ご相談ありがとうございます。
低金利状態がすっかり定着し、投資による資産運用に注目する方は増えていると思われます。とりわけ、外国(外貨)資産の金融商品を選択できる機会が顕著に増し、外貨建て商品の存在感も大きくなりました。自身のお金を様々な資産に分散しておくことは理に適ってはいます。最低限理解しておくべき点を押さえ、納得されたうえで選択肢に加えてみるのもよいのではないでしょうか。

外貨建て商品を考える時の2つの視点を理解しましょう

外貨建て商品を検討する時は、「資産」面と「運用通貨」面の2つの視点に留意する必要があります。

まず1つめは、運用する資産として何を選ぶのかということ。
資産は様々ありますが、私たちは『普通預金や定期預金』、『個別株式』、『個別債券』といった具体的な金融商品を選ぶことによって、結果として運用する資産を選択していることになります。また、『投資信託』や、これに保険特有の機能を加えた『変額保険』という金融商品なら、株式や債券だけでなく不動産やコモディディ(金や原油等)という資産を選択することも可能です。
外貨建て商品もこの理屈は同じなのですが、金融商品を介して選んでいるのは国内資産ではなく外国資産である、という点が円貨建て商品とは大きく異なります。主に預金や債券に影響する「金利」なら表面的な数字で理解しやすいのですが、あらゆる資産はその国等の「物価水準」や「経済成長率」、「人口動態」などの影響を受けるものです。
日本とは異なる、生活感の実状を肌で感じにくい国に投資するに等しいという点を理解しておく必要があります。

2つめの視点は、どの国の通貨建てで運用するのかということ。
もともと持っていた外国通貨(外貨)で運用しその外貨のまま使うなら、円貨建て商品との違いはありません。ですが、多くの場合は手持ちの円貨を外貨に交換して外貨建て商品を購入し、運用後は外貨を再び円貨に交換し、そこで得た資金で何かの目的のために国内でお金を使うことになるでしょう。
この通貨交換時に生じる為替レートによる差損益が、円貨建て商品にはない外貨建て特有のリスクとなります。また、通貨交換のたびに交換手数料のコストが生じる点も理解しておく必要があります。

外貨建て商品を検討する際には、円貨建て商品と同様に資産自体の価格変動リスクと外貨建て商品ならではの為替変動リスク、2つの視点で留意する必要があります。
これらが影響しあうケースは様々です。相乗効果で運用にWでプラスに働く場合もあれば、逆にWでマイナスに影響する場合、あるいは一方が良くても他方が悪くて相殺される場合などがあり得ます。

運用を検討する場合に共通の3つのポイント

円貨建て商品による運用であれ外貨建て商品による運用であれ、将来の運用損益を予測することはできません。仮に、外貨ベースでの利息が高額だったり投資信託の運用成績が好調だったりしても、運用時(外貨へ交換時)より運用終了時点の換金時(円貨へ交換時)の為替レートが大幅に円高(外貨安)だと、利息や運用成果以上の為替差損が生じてしまうことも考えられます。
運用成果を左右する大部分は、自分でコントロールすることが難しいのです。それ故、少しでも有利に働くよう、自分でコントロールできることはしっかりと押さえることが大切です。

そのポイントとなるキーワードは、「コスト」、「シンプル」、「分散」といえます。

  1. ①コストが安い商品を選ぶ
    どんなに高金利で利息が高くても為替手数料が高額だと利益は相殺されます。どんなに高い運用益を期待できそうでも運用期間中の諸手数料が高額だと利益は相殺されます。
    要は表面的な数字ではなくコストを差し引いた「手残り」という発想が重要です。低コストの金融商品を探してそれを選ぶことは自分自身がコントロールできる行為です。
  2. ②シンプルな仕組みの商品を選ぶ
    魅力的に映る金融商品でも、仕組みが複雑で、どういう具合に作用すれば利益がでるのかが理解できない、といった商品は選ばないのが無難です。また、往々にして仕組みが複雑になるほど高コストになりがち
    シンプルな仕組みの商品を選ぶことに勝るものはないと考えましょう。
  3. ③運用のタイミングを分散する
    これ以上に絶妙なタイミングは滅多にない、という状態でない限り(本当にそうなのかも不確かですが)、運用のタイミングは分散するのが手堅い方法といえます。
    細川さんが300万円の運用資金を予定できているとしても、その全額を一気に投入するのではなく、月や年をまたいで分割購入していくことも検討してみてください。また、毎月の定額積立形式で外貨を購入し、1年で貯まった外貨で金融商品を購入する方法も一考です。例えば、毎月5万円ずつ外貨建てMMFに積立投資し、その外貨で毎年外貨建て資産を5年に分けて購入するという手段も考えられます。
    さらには、購入時期だけでなく換金時期も分けておくと良いでしょう。
    こうした運用タイミングの分散は、運任せの運用を防ぎ大きな失敗を防ぐことが期待できます。また、精神的にも物理的にも余裕を得ることに繋がります。
    運用終了時のタイミングが悪ければ円安(外貨高)になるまで外貨で資産を持っておくゆとりも欲しいもの。面倒ではありますが、リスク低減のために自分でコントロールできる行為の1つといえるのです。

外貨建て商品ならではのメリットを享受して運用を楽しみましょう

先に運用のポイントの1つとして「分散」の例を挙げました。
考えてみれば、日本人の私たちが日本国内の資産だけを持つのは、運用の分散をしていないことになります。また、遠い先のことを考えて最も怖いのは、財産の枯渇に繋がるお金の物理的・実質的な目減りです。つまり、お財布の中に1万円札が一枚も無い事態だけでなく、その1万円札で交換できる選択肢が減る事態、物価上昇によるお金の実質的価値の下落にもアンテナを張っておかねばなりません。
金利の高い国は高金利である理由があって、総じて物価の高さが影響しています。ある国の金利が上がれば短期的にはその国の通貨が買われやすい傾向に働きますが、物価高が継続する国の通貨は、長期的には相対的に安く動く傾向があります。
将来の日本の物価上昇を日本で暮らす私たちは警戒しますが、その時は高確度で円安基調も予想されます。円安は相対的に外貨高。すなわち、資産の一部を外貨で持つことは将来の不安への対策の1つでもあります。

では、どういう外貨建て商品がベストなのか。その答えは個々で事情が変わるので、やはり断定はできません。ですが、ベターな選択肢は無限に想像できるのではないでしょうか。

外貨建て商品で運用するということは、その国(またはボーダレスで世界中)の「資産」を選ぶということ。その際はアメリカドル、ユーロ、オーストラリアドルなど、いずれかの国の「運用通貨」を選ぶわけです。表面的な高金利に目を奪われると意外な通貨の選択も浮上しますが、為替手数料等の「コスト」面も踏まえ、特定の国や通貨に固執する理由がないのなら、広く世界的に安定的に流通する通貨を選ぶのが無難です。
そして、ある国やその通貨が表面的に高金利でも、何故に高金利なのか理由を調べる一呼吸は持ちましょう。
とはいえ、その通貨国が好きであるとか旅行に行きたいといった理由も、運用するに足る十分な理由です。資産運用なんて、要はいまお金を使わず将来使いたい時のためになるべく殖やしておく手段に過ぎません。自分が楽しめて満足できるお金の使い方をする為に貯蓄や運用するのですから、それが叶えられる国や通貨で運用するのも楽しみのひとつと、気軽に考えてみるのも間違いではないでしょう。

また、「コスト」面や「シンプル」面を踏まえると、いわゆる加工商品より素材を選ぶのも1つの考え方です。
例えば『投資信託』は、投資家から集めた資金で様々な資産に投じた財産を小口販売化した加工商品といえます。こうした『投資信託』を集め、保険ならではの死亡保障や終身年金受取等の機能をさらに加工したのが、『変額保険・変額個人年金保険』という金融商品です。
また、細川さんが惹かれた『外貨建て保険』は、その大部分が外国債券等で運用されていますが、保険特有の加工された機能が付随しているのは国内保険とまったく同じ仕組みです。

こうした、加工された金融商品はその手間の分だけ、保有期間中に高コストとなる傾向があります。それならば、加工商品である『投資信託』や『変額保険』や『外貨建て保険』ではなく、その原素材ともいえる、外国企業の『個別株式』や、外国の国等が発行する『個別債券(外国の国債)』等を検討するのもアリでしょう。日本の国債と違い、外国債であれば、つど利息が払われない代わりにディスカウントされた価格で購入できる割引債券(ゼロクーポン債)という注目に値する商品を、個人が投資することもできます。
逆に、高コストを踏まえたうえで、高機能で便利な加工商品を選ぶのもアリだと考えます。

万人にベストな選択肢はありません。また、ベターな選択肢も人それぞれの価値観や基準で異なるもの。そしてその価値観や基準もうつろうものでしょう。
外貨運用ビギナーの方には手始めに『外貨預金』や『外国債券』といった低コストの「原素材」、あるいは機能豊かな『低リスク投資信託』や『外貨建て保険』といった加工商品をお勧めするのが鉄板のセオリーです。ですが、それが必ずしも正解ではありません。ならば、金融機関の甘言に惑わされることなく、そろりそろりと少額ずつ経験値を積み、自身の価値観に見合う運用を探していきたいものですね。


年金が不安で老後の資金作りに運用も考えています。 外貨投資をしてみたいのですが。
定期預金だけではもったいないと友人に言われました。投資は不安ですが少しは興味があります。何から始めればよいでしょうか。
投資に関心がありますが、どのように始めれば良いでしょうか。

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