定年後の延長雇用で働きながら年金をもらっても不利になりませんか?


今回、回答いただく先生は…
村井 英一先生(むらい えいいち) プロフィール
  • 減額にはなりますが、60歳から年金を受給することができます
  • 一定額を超えると年金がカットされますが、その基準額が引き上げられました
  • 早くもらい始めることによる減額は生涯続きますので、慎重に検討しましょう

  近藤 豊さん(仮名 59歳 会社員)のご相談

今年の10月に60歳になり定年を迎えます。その後は65歳になるまで働けますが、収入は今の半分ぐらいになります。以前とは違い、働きながら年金を受給しても、年金額がカットされないと聞きました。早めに年金を受給しても損にはなりませんか?

近藤 豊さん(仮名)のプロフィール

家族構成
家族 年間収入
ご相談者 近藤 豊さん 59歳(会社員) 600万円
家族 妻 歳(パート社員) 150万円
※子供はすでに独立。
貯蓄額 1,150万円

年金を早くもらい始めることによる不利益は縮小されましたが、長期的に見ると繰り上げ受給のデメリットはありますので、慎重に検討しましょう。

1.繰上げ受給の減額率が小さくなりました

昨年(令和4年)4月に、年金の制度がいろいろと変わりました。その点を踏まえて、年金を早く受給する場合について見ていきましょう。その前に、年金の制度について確認します。
すべての国民が対象になる老齢基礎年金と、お勤めの人を対象にした老齢厚生年金の受給年齢は徐々に引き上げられていて、男性は昭和36年、女性は昭和41年の4月2日以降生まれは、65歳からとなります。
ただ、希望すれば、それより前、60歳から受給することができます(繰上げ受給)。早くからもらい始める分、金額は少なくなります。以前は1か月につき0.5%減額されていましたが、昨年の4月以降に60歳となる人からは、減額の幅が1か月につき0.4%と小さくなりました。60歳から受給する場合は、60ヵ月早めることになります。以前は30%の減額でしたが、今は24%の減額になりました。この減額は生涯続きますので、影響は小さくありませんが、年金を前倒しでもらい始めることによる不利益は小さくなりました。
ちなみに、65歳より遅くもらい始める場合は、1か月につき0.7%の増額で、最大75歳まで遅らせることができます。75歳から受給すると84%の増額となります。

2.60代前半の支給停止の基準額が大きくなりました

年金を受給しながら、お勤めをする、という人は少なくありませんが、その場合は収入によって年金額がカット(支給停止)されます。

  1. ①老齢厚生年金の月額(家族手当に相当する加給年金額は除く)
  2. ②現在の給与(標準報酬月額)
  3. ③その月以前1年間のボーナス(標準賞与額)の合計÷12

の合計額が一定額を超えると、その額に応じて老齢厚生年金が一部カットされます。60代前半の場合、以前は28万円を超えるとカットの対象になりましたが、昨年に基準額が引き上げられ、今年度(令和5年度)は48万円となっています。カットがなくなったわけではありませんが、カットされない範囲がかなり大きくなりました。
近藤さんの場合、現在の月収が40万円ですので、60歳以降の月収は半分の20万円になる予定です。

60歳時の給与や年金などの見込み額を整理すると以下のようになります。

  • 給与:月額20万円
  • その月以前1年間のボーナス(標準賞与額)の合計:120万円
  • 老齢基礎年金(60歳で受給を開始した場合):56万円(65歳から受給した場合の年金額74万円の24%減)
  • 老齢厚生年金(60歳で受給を開始した場合):132万円(65歳から受給した場合の年金額174万円の24%減)
  • ※ここでは、高年齢雇用継続給付及びそれを受給することによる年金額のカット(支給停止)は考慮していない。

夏冬のボーナスの合計が120万円ですので、60歳時点での「その月以前1年間のボーナス(標準賞与額)の合計÷12」は10万円になります。60歳から受給した場合の老齢厚生年金の月額が11万円だとすると、①②③の合計が41万円となり、カットはありません。以前の基準額であれば65,000円がカットされていましたので、年金を早くもらい始めることによる支給減はなくなりました。

3.それでも、繰上げ受給は慎重に検討しましょう

このように、年金を早くもらい始めることによるデメリットは小さくなりました。しかし、それ以外にも気を付けなければならない点があります。
1つは、高年齢雇用継続給付と年金の両方を受け取ることによる年金額のカット(支給停止)もある点です。60歳になると雇用は継続されても給与が大きく減少します。すると、減少幅に応じて、雇用保険から給付が出ます。高年齢雇用継続給付といいますが、これを受給すると、年金額は一部カットされます。また、失業手当(雇用保険の基本手当)を受給しながら転職活動をすると、その間は年金の支給が停止されます。
2つ目は、万が一病気やけがで障害年金の対象になった場合でも、すでに老齢年金を受給していると、障害年金は受けられません

そして最大の懸念材料は、年金を早くからもらい始めると、その月数に応じて年金額が減額されることです。受給開始を繰り上げる場合は、老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方を同時に繰り上げる必要があります。ということは、両方の年金がともに減額されることになり、それが一生続くことになります。受け取る年金の総額で比較すると、長生きすればするほど、不利になります。
自分の寿命だけは誰もわかりません。医療の高度化で平均寿命は徐々に延びています。長生きすることを考えると、年金を早くもらい始める繰上げ受給は、慎重に検討したほうがよいでしょう。


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