父が投資に関心を示しています。年金受給世代が押さえておくべき資産運用のポイントを教えてください


今回、回答いただく先生は…
井上 信一先生(いのうえ しんいち) プロフィール
  • 年金受給世代だからといって、保守的な運用に留めるべきと、選択肢を狭める必要はありません
  • 資産運用をおこなう上で押さえておくべき大切なポイントはどの世代にも共通です
  • むしろ、年金受給世代だからこそアドバンテージのある資産運用から挑戦してみましょう

  永野 優さん(32歳 仮名)のご相談

最近、実家の親が投資に関心を示しており、ことあるごとにその話題になります。私自身もつみたてNISAを始めたばかりなので大して相談に乗れないのですが、当の父も経験が少ないと思うので心配しています。
投資にはリスクがあると思いますし、そもそも年金受給世代が大切な資産を減らすかもしれない投資を行っても大丈夫なのでしょうか?

永野 優さん(仮名)のプロフィール

家族構成
家族 職業等 年収 貯蓄 住居
本人:優さん(32歳)・独身 会社員 約460万円 約600万円 賃貸マンション
父親:68歳 無職 約300万円 約4,800万円 戸建て(持ち家)
母親:66歳

漫然とした投資は避け、まずは使い道を決めたお金で資産運用してみましょう。
これまで培ってきた知識や業界情報を活用し、親子で投資プランを検討してみては?

永野さん、ご相談ありがとうございます。お父様のこと、内容がお金に関わるだけに心配ですね。でも、何がどう心配なのか、もっと具体的に考えてみましょう。
――― 「今後に必要な老後生活資金の大半を投じ、失ってしまわないか」ですか?
――― 「理解しないままハイリスクな商品や怪しい商品に手を出してしまわないか」もありますね?
不安の所在を掘り下げていくことで、その不安を解消するための大事なポイントも見つかるものです。そして、何事においても言えますが、たとえ家族であってもご本人の意思を尊重することは大切です。資産運用の大切なポイントは世代によって大きく変わるものではないので、この機にお父様と話し合われ、ご自身の資産運用についても見直してみてはいかがでしょうか。

年金受給世代でも、資産運用の選択肢は広がっています

一般的に、収入が年金だけの家計では、これまで増やしてきた貯蓄を、逆に取り崩していくことになります。大切な資産を大きく減らしてしまわぬよう、資産運用についてはとかく保守的に、リスクを負うような投資は避けるべきと言われがちです。でも、本当にそうでしょうか?
私は、高齢者や年金受給世代だからといって、投資や資産運用の選択肢を狭めるべきではないと考えます。何歳からでも豊富な選択肢の中から資産運用をおこなえます。そのためにも、大切な勘所をしっかり押さえておいていただくことが大切です。

資産運用の目的は明確に

所詮、お金は使うためのもの。どの世代にも共通することですが、資産運用においても「何にお金を使うのか」の目的を明確に持つことが大切です。現役世代の資産運用では将来のための蓄財も考慮しておく必要があるのに対し、年金受給世代では「殖やしながら使う」がキーワードといえます。

資産運用と聞くと、とかく長期でおこなうもの、将来必要な資金のためのものと連想しがちです。また、低金利の預貯金だけでは勿体ないので資産を殖やすためにおこなうもの、と考える方が大半でしょう。しかし、当然のことながら殖えるのか減るのかは不透明である上、この間、その資金は拘束され使えません。ところがその一方で、目前の出費については高額であっても、利殖性のない貯蓄からつど取り崩しています。実はこうしたお金の使い方は非効率な行動といえます。

そこで、預貯金だけでは勿体ないので投資を取り入れるということであれば、旅行や外食・レジャー・贅沢品の購入等をその目的に置いてもらってはいかがでしょうか。もし運用が上手くいけば、予定以上のプランを予算(投資額)で叶えられます。仮に上手くいかず予定プランより質が落ちたとても、ずるずると塩漬けにせず損を出してでも目的のためにお金を使えば、それなりの満足感や良い思い出が残ります。そして、次はグレードアップを目指すといった具合に、新たな運用に気持ちを切り替えることもできます。
資産運用では失敗した時の対応も大切なのですが、旅行等のように割り切り感の持てるお金の使いみちは、意外と資産運用との相性が良いものなのです。

運用可能な金額と期間を定める

資産運用においては余裕資金の把握も大切です。どの家計にも余裕資金はあるものですが、何年先まで、いくらの額を余裕資金とみなせるのかは各々の家計によって異なります。つまり、現在の貯蓄に今後の収入を加えた額のうち、当面使わない部分が余裕資金です。これを知ることは同時に、将来においても最低限の生活を死守するための「貯蓄額の防衛ラインの目安」を確認することでもあるのです。この目安が、資産運用の失敗によって大幅に狂ってしまう事態は避けておきたいところです。

先に例として挙げた旅行等は必要額の下方修正ができるお金の使いみちです。また、資産運用の成否による影響はその時の旅行プランだけに留まります。せっかく使える額が可変的なものを、将来もその額が大きくは変動しない預貯金から取り崩すのではなく、つど成果が変動する資産運用で賄うという発想は、家計の余裕資金(=投資可能額)のコントロールの点からも理屈にあいます。
逆に、使う金額が可変的ではないもの、例えば住宅の補修、要介護時の一時金、将来の最低限の生活費等のように、必要額の大きな下方修正のできない使い方については、予想した「貯蓄額の防衛ラインの目安」を狂わせないためにも、資産運用に回わすべきではない額として手元の預貯金に留めておくのが無難です。

とはいえ、余裕資金をいくら緻密にシミュレーションしようとしても将来の予測は不確実ですし、加齢と共に食費や余暇費等の日常生活費は実際には自然と減っていくものです。あまり深刻に考え過ぎず、目的のない漠然とした資産運用を避けるだけで、もし失敗しても生活に困窮する事態になることは少ないと思われます。

ご自身の土俵の上で運用しましょう

資産運用では、分散投資がリスクの低減を期待できる方法として知られていますが、今回ご紹介した考え方は、投資する金額の分散投資する時期の分散投資する期間の分散が、自然とおこなえています。残る投資資産選びについては、投資金額・投資時期・投資期間の分散ができているので、基本的にその時々で興味のあるものを選んでも問題はないと思います。ですが、想定以上に大きな損失を被らないためにも、怪しい商品は避けその値動きを目で追えるもの値動きのしくみを理解できるものから始めるのをお勧めします。

もし、お父様が新聞の株価欄をチェックする日課があれば日経平均等に連動する投資信託等を、金利や為替に敏感なのであれば債券や仕組み預金、外貨建て資産等を選ばれれば、これまでと変わらぬ日常生活の中で投資を実感することができると思います。
また、資産運用の目的を明確にしていれば、投資商品だけでなく投資スタンスも自ずと決まってきます。すなわち、海外旅行資金目的ならその国の通貨建ての外貨建て資産で、日々の生活のちょっとした贅沢が目的なら高配当を期待できる株式や投資信託等でのインカムゲイン狙いなど、目的と相性の良い投資商品を候補に挙げることができます。

さらにいえば、お父様の現役時代にお勤めの業種、職種、勤務地等を活かせる資産を選ばれるのもオススメです。これまでの豊富な経験や肌感、知識、業界の情報等はどんな金融のプロのアドバイスにも勝るものです。これこそ、年金受給世代だからこその、アドバンテージのある資産運用といえるのではないでしょうか。
永野さんのつみたてNISAやその他の資産運用においても、お父様の情報が役に立つかもしれませんね。また、ご両親と共有するお金の使いみちを資産運用の目的のひとつとして、お父様と協力して投資プランを実行してみるというのも、とても素敵ではないでしょうか。


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