遺族年金額の理解はセカンドライフのプランづくりに必須! ~夫婦同伴の相談者が増加~


夫婦同伴の相談者が増加

2013年10月分から2.5%特例水準の解消により年金額の減額スケジュールの開始、2014年4月から消費税が8%に増えます。2014年度から70歳~74歳の医療費の窓口負担も原則1割から2割に、2015年度から介護サービスを受けた時の負担が、所得により1割から2割が検討されています(2013.10末現在国会審議中)。これからセカンドライフを迎える人にとり、生活のベースを支える公的年金の収入減と生涯負担する医療と介護の支出増が現実のものになってきました。 連日の報道でそういう背景が浸透してきたせいか、相談の現場でもこれまでにない真剣かつ具体的な年金のしくみが知りたいという相談が増えています。中でも、定期便などではわかりにくい遺族年金の相談が増えています。今回は、サラリーマン世帯、自営業者世帯などを含め、実際に受けた中年夫婦の例を参考に、よくあるケースを事例でご紹介します。 ※年金額は2013年10月~2014年3月の金額  

事例1. 現在受給中の遺族厚生年金額が少な過ぎる。計算間違いではないか?

最近多いのが新聞記事持参の相談です。記事の高齢妻の遺族厚生年金額の多さにびっくり、自分の年金額が間違っているのでは相談に来られるケースです。相談者A子さん(65歳)が現在受給している遺族厚生年金額は月約8.8万円。間違いではないかと考えるのも無理はありません。この例の金額の差の原因は、(1)夫の在職中の給与の差と、(2)夫死亡時の妻の年齢、(3)妻の生年月日なと゛の違いです。それにしても厚生年金の加入月数が長く給与が高かった高齢の夫が亡くなった場合、高齢の妻の国民年金の加入月数鵜が少なくても、妻が受け取る遺族厚生年金額は多いのですね。  
新聞記事の夫婦のプロフィール 相談者の夫婦のプロフィール
夫  87歳死亡 厚生年金37年(給与高い) 夫   67歳死亡 厚生年金40年(給与標準的)
妻  85歳 国民年金27年(納付済) A子  65歳 国民年金40年(納付済)
※妻は現在の年齢。夫は共に昨年死亡。  

高齢夫婦の年金額のイメージ 遺族年金だけで月約17.7万円、妻自身の年金と合わせると月約26万円になるのね。 妻が65歳以後に夫が死亡したので、妻に振替加算が加算される

A子さん夫婦の年金額のイメージ 遺族年金だけで月約8.8万円、妻自身の年金と合わせても月約15.3万円。 妻が65歳未満のとき夫が死亡したので、妻に振替加算の加算はない。

※経過的加算の額は、妻の生年月日で決まる。昭和31.4.2以降生まれは0円。  

事例2. 友人に比べ、遺族年金額が少なすぎる。理由が知りたい。

友人が受給している年金額と比較しての相談も増えています。年金への関心が高まっているのは嬉しいのですが、前述のとおり金額は人それぞれなので単純に比較できません。夫の厚生年金加入が若い時で加入月数が短い場合、妻B子さんの遺族年金額は低額です。  
友人夫婦のプロフィール 相談者の夫婦のプロフィール
夫  68歳死亡 厚生年金40年 夫  68歳死亡 厚生年金18年(若い時) 国民年金22年(納付済)
妻  66歳 国民年金40年 B子  66歳 国民年金22年(納付済) 厚生年金18年(給与低い)
 

友人夫婦の年金額のイメージ 遺族年金は月約9万円、妻自身の年金と併せると月約16.3万円。

B子さん夫婦の年金額のイメージ 夫の厚生年金加入が20年未満なので、夫の加給年金と、妻の65歳からの振替加算と経過的寡婦加算がない。併せて妻も厚生年金受給なので、遺族年金が少ない。

※事例の妻の場合、65歳以降の遺族厚生年金額は、夫の遺族厚生年金額と自分の老齢厚生年金額との差額。  

遺族厚生年金額は、報酬比例部分×3/4ですが・・・~報酬比例部分=老齢厚生年年金ではないので注意!

  雑誌や新聞などでは、難しい年金のことをできる限り易しく表現するためにざっくり表現することが多々あります。そこから読者の勘違いも生まれます。よくあるのが遺族厚生年金額の勘違い。遺族厚生年金の見込額が少しイメージと違う気がするのですが・・の質問です。 お聞きすると、遺族厚生年金の額=老齢厚生年金額の3/4と新聞記事などに書いてあったからと理解しているケースです。 そこで、正しく理解していただくために、今までの図をもう少し詳しくした下図で説明します。  

厚生年金加入中の給与等で年金額が決まる

※1 厚生年金に加入した月数。生年月日で上限あり。 ※2 定額部分-厚生年金加入中の20歳以上59歳の月数(昭和36年4月1日以降) ※B 定期便の65歳以降のデータで確認ください。  

事例3. 厚生年金40年加入した夫(68歳・昭和22年4月2日生)の遺族厚生年金額はいくら?

厚生年金の加入年数40年、報酬比例部分の年金額1,200,000万円と同じでも、何歳から厚生年金に加入したかで老齢厚生年金の金額が異なることが分かりますね。遺族厚生年金=老齢厚生年金×3/4にすると金額が違ってきます。あくまでも、遺族厚生年金額=報酬比例部分×3/4です。事例のD・Eさんの場合、1,200,000円×3/4=900,000円です。 生存中の年金額は異なっても遺族年金額は同じになります。 公的年金は難しいので、ざっくり理解するところからスタートですが、肝心なところは正しく理解しておく必要があります。最近、こうした細かいところも質問が来るようになりました。  
Dさん Eさん
厚生年金20~60歳になるまで40年加入 厚生年金23~63歳になるまで40年加入
国民年金20~60歳になるまで40年加入 国民年金23~60歳になるまで37年加入
※但し、妻の加入状況、年齢等で加算額などは異なる。

Dさんの場合 条件次第で老齢厚生年金額が異なることが分かるね。生存中の総額は同じ Eさんの場合 条件次第で老齢厚生年金額が異なることが分かるね。生存中の総額は同じ

事例4. 自営業者の夫婦

自営業者こそ、セカンドライフのプランニングは早めにしておく必要があります。現在サラリーマンの人でも、親または子どもが自営の方もいらっしゃるでしょう。ぜひ、元気なうちから備えの必要性をお話ししていただけると嬉しいです。親や子どもの家計が大変になると、結果的に自分のセカンドライフも狂ってくることもあるからです。 また、ライフプランセミナーなどを就業時間内に開催してくれるサラリーマンなどと比べ、自営業者たちの情報源は乏しく、昨今の厳しい経済環境でその日を暮らすのに精一杯で自分からセミナーに参加する人も限られています。結果、ことが起きてから遺族年金がでない現実に唖然とすることになります。「知らなかった。どうやってこれから暮らしていけばいいのか…」とつぶやく相談者を前に、私も言葉もありません。
夫婦のプロフィール(子は成人)
夫 70歳 国民年金  40年(納付済)
妻 68歳 国民年金  40年(納付済)
 

C子さん夫婦の年金額のイメージ 年金を受給後夫が死亡しても、妻に遺族年金はない。

 

試算から見えてくること ~現実は、もっと厳しい

「今更」でなく「今から」セカンドライフの備えの準備を!長い人生を、最期まで快適に生きるために。

  ざっくりと事例でよくある相談例を書いてみました。但し、実際の年金額はもっと厳しいことを知っておきましょう。なぜなら、現在、40年加入して受給できる国民年金(老齢基礎年金)額は、778,500円(2013.10~2014.3)。試算ではほとんど、40年加入で揃えましたが、実際に40年加入している女性はそう多くありません。夫が死亡後、経済的な問題から免除制度を利用している人も多く、年金額はさらに低額になります。 新聞記事などではかなり高額な年金受給例も記載されていますが、それを鵜呑みにせず「私の年金額はいくら?」を試算して、私の場合のセカンドライフプランをイメージして実践していくしかありません。一般的にキャッシュ・フロー表(年間収支表)作成時、生存を前提に書き込みますが、ついでにどちらか亡くなった時の年金額なども試算しておけば具体的にイメージできます。具体的な金額が分かれば、後はゴールに向かって少しずつ備えていくのみです。備えの仕方は人それぞれ。無理をせずコツコツ実践するといいでしょう。何しろ、同年代に生まれた人が90歳まで生存する割合は、男性で約2割、女性で約4割と人生は長いのですから。