多様化する高齢期の暮らしのリスク ~子が先に死亡したときの公的年金


12月に私と連れ合いの親しい友人たちから、配偶者や親が亡くなったお知らせ「喪中ハガキ」が数枚届きました。親の年齢はすべて90歳以上、当然に子世代も高齢。改めて60代・70代・80代の高齢の子が90歳以上の親を支えている現実に気が付かされました。

私たちは、支える人と支えられる人の人口割合の変化で、財政上の視点から国が社会保険・税金制度も改正せざるを得ないことは知っています。しかし、単身世帯の増加、高齢者施設等に入所の親との距離感などから、長寿化で子が先に亡くなった場合の年金受給の内容を正しく理解できている人は稀です。

今回は、2022年4月改正の目玉の1つである「繰下げ制度」について、少し掘り下げてお話しします。長寿時代を迎え、今後こうしたケースも増えそうです。一般的な例だけでは対応できない時代になりました。

90歳まで生存する者の割合 ~男は4人に1人・女2人に1人

令和2年簡易生命表によれば、男の平均寿命は81.64歳(前年比0.22年増)・女の平均寿命は87.74歳(前年比0.30年増)。90歳まで生存する者の割合は、男で約4人に1人(28.4%)、女で約2人に1人(52.5%)と年々増加。あくまで平均であり自身の長寿が保障された訳ではないことも承知ください。

主な年における特定年齢まで生存する者の割合の推移

令和2年簡易生命表の概況 厚生労働省

繰下げ受給 ~繰下げ待機中に死亡した場合は適用なし

本来65歳から受給できる年金を、60歳以降希望するときから繰上げて受給できるのが繰上げ、66歳以降繰下げて受給できるのが繰下げで1月繰下げるごとに0.7%年金額が増えます
令和4年4月から繰下げ年齢が原則70歳から75歳に拡大されます。
但し、繰下げ待機中(65歳以降年金請求をせず)に死亡した場合、繰下げ請求はできないので要注意です。仮に70歳過ぎに死亡した場合、65歳時の年金額を過去5年分のみ受給します。
繰下げて年金額を増やせるのは、生存中に繰下げの申出をした場合のみです。
なお、生存中、繰下げ受給しない(通常受給を選択)場合は以下のように改正になります。

■70歳以降80歳未満で繰下げ請求しない(65歳からの通常受給を選択)場合 ~生存中

改正前 ~令和5年3月まで

改正後 ~令和5年4月から (令和5年4月1日時点で71歳未満が対象)

事例国民年金の繰下げ待機中に死亡した68歳単身者

きっかけは母の成年後見人から「夫の遺族厚生年金を受給している母が、単身の子の遺族厚生年金を受給できる?」という素朴な質問を受け、年金窓口でデータ調査をしてみました。

(1)子の国民年金が「繰下げ待機中」と判明 ~90歳代別居母に子が施設代送金していた

単身の子は厚生年金に長期で加入し、61歳から報酬比例部分・65歳から老齢厚生年金を受給しており、国民年金の繰下げ待機中の68歳のとき病気で死亡した例です。
子は施設入居の母に度々面会し、かつ子が母に仕送りしていた記録が通帳に記載されており(未支給年金受給要件「生計を同じくする」を満たす)、65歳から68歳までの約3年分の国民年金額(増額なし)を母が未支給年金として受給できます。

子の死亡前の年金受給歴

とかく、繰下げで本人の高齢期年金額が増える事について話題になりますが、子が病気または先に亡くなったとき、判断能力が不十分な高齢者の増加、単身者や家族関係の希薄な人の増加などで、すべての人が繰下げの恩恵を受けられるとは限らないことを知っておきましょう。

<参考>未支給年金は、年金を受給していた人が死亡した場合、その人に支給すべき年金で支給されていないものを一定の遺族(死亡した受給権者と生計を同じくしていた、配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹・3親等内の親族)に支給されるもの。遺族厚生年金は生計維持関係を満たすことが必要。

(2)本来の質問 ~子の遺族厚生年金

子の遺族厚生年金は、夫の遺族厚生年金を受給中の90歳代の母に受給権が発生します。
但し、現在受給している「夫の遺族厚生年金額と母の老齢年金額の計」と、「子の遺族厚生年金額と母の老齢年金額の計」の、いずれか有利な方を選択(遺族年金は非課税、母の老齢年金は金額により課税、生活者支援給付金の金額、税、社会保険料等も考慮)します。

高齢になればなるほど、子や親等の各々の年金加入歴とおかれた環境・関係は人様々。本当に必要なとき手続きができるよう、正しい情報収集・健康・人間関係のメンテナンスも今からしておくといいですね。

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