第89回:継続は力なり、堅実な資産形成の基本は「積立」から!


「将来のためにもお金を貯めなくては!」と思っているのに、なかなか貯められないと悩む方は多いようです。「つい無駄遣い」や「貯金を取り崩しがち」など悩みは様々ですが、共通して考えられる「貯められない理由」の一つに、「無計画な貯め方」が考えられます。実際に「お金を貯めなくては」と思っていても、何のために(目的)、いつまでに(時期)、いくら(金額)貯めたいのかが、頭の中ではっきりしていないことが多いようです。

なんとなく「貯めなくては」と思っているだけでは、目の前の魅力的なお金の使い道に心が動かされて、「貯蓄を優先すべきだ」という判断はなかなかできません。また、思いつきから貯蓄をしても、必要な金額を必要な時期に手にするのは難しいといえます。今回は、先を見据えた、堅実な資産形成の基本となる「積立」について詳しくみてみましょう。

計画的に貯めるなら、積立が基本

将来のために、着実にお金を貯めるには、やはり計画的に進めることが大切です。まずは、ライフプランを立て、お金を貯める目的や金額、必要な時期をはっきりさせましょう。具体的には、結婚費用、教育費、住宅購入資金、車の買い換え費用、旅行資金、老後資金など、どんな費用がいつ、どれくらい必要なのかを洗い出すことから始めます。実際に収入から貯蓄に回せるお金には限りがありますから、例えば、「数年後に必要な教育資金は多めに」「必要になるまでに時間のある老後資金は少しずつ」など、貯める目標の優先順位を考えます。

そして、貯める目標(目的・金額・時期)がはっきりしてきたら、次に貯める方法を考えます。その際に、基本となるのが身近な「積立」です。いったん手続きをすると毎月自動で積立口座にお金が振り替えられるので、着実に毎月の収入の一部を将来のための資産形成に回すことができます。また、毎月の積立を基本に、ボーナスなどの臨時収入があった場合の上乗せ分を適宜考慮して、貯蓄や運用の計画を立てるとよいでしょう。

預貯金だけでなく、投資信託や株式なども積立が可能

一般に積立とは、一定期間ごと(通常は毎月ごと)に一定金額ずつ、預金したり、金融商品を買い付けたりしていくことをいいます。その中でも一番の基本となるのは、元本を減らさず、着実に貯められる預貯金などの貯蓄型の商品です。また、これ以外にも、下表のように、価格変動リスクのある投資信託や株式、外貨預金などもあります。

<積み立て型の金融商品の例>

安定運用型 財形貯蓄 一般財形貯蓄、住宅財形貯蓄、年金財形貯蓄
貯蓄型 積立定期預金、定期積金、自動積立定額貯金、自動積立定期貯金 など
保険型 養老保険、子ども保険(学資保険)、積立普通傷害保険 など
年金型 個人年金保険(定額型)、年金払積立傷害保険 など
価格変動型 投信積立、株式累積投資(るいとう)、外貨預金積立、純金積立、変額年金保険 など
金融類似商品 デパート商品券積立、旅行券積立など

積立なら、着実に「先取り貯蓄」ができる

この積立の第一の効用は、何よりも定期的に着実に「先取り貯蓄」ができることです。たとえ物欲に弱くて無駄遣いしがちな人でも、給与天引きで、あるいは給料日の直後に振替日を設定して積立商品を利用すれば、つい使ってしまう前に、優先的に貯蓄や資産運用にお金を回すことができます。また、積立は、定期的に一定額分の金融商品を買い付けていく仕組みですので、価格変動リスクの高い投資信託や株式などを購入する場合には「ドルコスト平均法※」の効果があり、平均購入単価を抑えることができます。

ドルコスト平均法とは?
定期的に継続して定額ずつ購入することにより、中長期で平均購入単価を引き下げられる投資手法のこと。通常、長期的に値上がりが見込める商品(銘柄)を一定の金額で継続して購入していけば、価格が低い時には買い付け数量が多くなり、逆に価格が高い時には買い付け数量が少なくなるので、中長期では平均購入単価が引き下げられる効果がある。

<投資信託購入時のドルコスト平均法の例>

(1)一度に40,000円を購入した場合
(2)四回に分けて、10,000円分ずつ購入した場合

  日付 1月10日 2月10日 3月10日 4月10日 該当期間中の合計・平均
  単価 \1,000 \500 \1,000 \1,500 平均単価 \1,000
(1) 投資額 \40,000 0 0 0 投資額合計 \40,000
購入口数 40口 0 0 0 合計口数 40口
ケース(1) 平均購入単価 \1,000
(2) 投資額 \10,000 \10,000 \10,000 \10,000 投資額合計 \40,000
購入口数 10口 20口 10口 6.6口 合計口数 46.6口
ケース(2) 平均購入単価 \858

  

一度に購入した(1)よりも、購入時期を分散した(2)の方が、平均購入単価は低く抑えられる。

積立商品は、目的と運用期間、リスク許容度などを考えて選ぶ

基本的に元本保証のある預貯金などは、金利(利回り)は低いものの、元本割れすることなく着実に貯めることができます。これに対して、価格変動の大きい投資信託や株式などは、高収益が期待できる一方で、元本を大きく割り込む可能性もあります。一般に積立に利用する商品については、その資金の利用目的や運用期間、リスク許容度などに応じて選ぶ必要があります。以下は、タイプ別に見た積立方法のポイントです。

コツコツ着実に貯めるなら

近い将来の結婚資金や教育資金、住宅購入資金などは、必要な時期に必要な金額を用意することが最優先されるため、預貯金を中心に安全重視で積み立てることが基本となります。これについては、給与天引きの財形貯蓄や、給料日直後に振替日を設定した積立定期や定期積金などなら、自動的に着実に貯蓄することができます。

また、預貯金だけでなく、養老保険や子ども保険、定額型の個人年金保険なども、毎月保険料を払っていけば、満期日には当初契約した金額の満期金(年金)が受け取れます。ただし、「保険」としてかかる経費も保険料に含まれるため、金融商品としてみると、支払い保険料に対して満期金が少なく「元本割れ」するケースもあります。なお、中途解約をすると、ほとんどの場合で元本割れをするので、保険期間中に資金が必要になる可能性がある場合の利用には向きません。そのため、予め保険期間を慎重に検討し、支払い保険料に対して、どれくらいの満期金が得られるのかをよく確認し、納得した上で利用しましょう。

時間を味方に殖やしたいなら

10年以上先に利用する教育資金や老後資金など、使用時期までに時間的な余裕あり、またリスクもある程度許容できるなら、一部の資金を長期的に有望な投資信託の積立(投信積立)や株式の積立(るいとう※)などに回すのもよいでしょう。これらについては、先にご説明した「ドルコスト平均法」の効果で、平均購入単価を下げ、将来の値上がりによる運用益を期待することができます(値下がりして、評価損が生じるリスクもあり)。

※るいとう・・・1銘柄について毎月1万円以上100万円未満の金額を証券会社に払い込み、証券会社が払い込んだ金額分だけ株式を買い付けていく投資方法。通常、単元株数に達すると、総合取引口座に振替が行なわれて「株主」になれ、議決権や株主優待などの権利も得られる。

使い道限定で効果的に貯めるなら

貯蓄商品の中には、使い道が限定される代わりに、有利な条件で積立ができる商品もあり、その代表が会社員の方などが利用できる「財形貯蓄」です。一般に住宅財形や年金財形では、貯まったお金を「住宅購入資金」や「老後資金」などの規定された目的で利用する場合に限って、一定額を限度に積立期間中の利息が非課税となります。また、財形貯蓄(一般財形、住宅財形、年金財形を問わず)を1年以上続けて残高が50万円以上あれば、財形住宅融資(借入限度額:財形貯蓄残高の10倍以内で4000万円まで)を利用することができます。

その他にも、「デパート商品券」や「旅行券」などの金券積立は、満期時に得られるのが商品券なので使い道は限定されますが、預貯金よりも有利な利回りとなっています。ただし、その積立先のデパートや旅行会社などが倒産すると、積立金や商品券の一部が戻ってこないこともあるので、万が一の場合にどう保全されるのかを予め約款等でよく確認しておきましょう。

将来を見据えた積立を長く続けるコツは?

「将来のためにもお金を貯めなくては」と思って、せっかく計画的に積立を始めたのであれば、満期まで続けて必要資金を確保し、ライフプランの実現に役立てたいものです。そのためには、以下のようなことに注意しましょう。

(1)金融機関の選択は慎重に

長期に及ぶ積立期間中に、万が一、金融機関が経営破綻などしてしまったら、積立も継続できないかもしれません。これに対処するには、格付けや株価、ディスクロージャー誌、地元の評判などをチェックして、経営の安定した金融機関を選びましょう。


(2)無理のない積立額から始める

実際の積立において、最初から積立額が多すぎて、毎月の生活費がギリギリでは、せっかくの積立資金を取り崩すことにもなりかねません。これに対処するには、積立を無理のない少額から始めて、余裕があれば積立額を適宜上乗せするとよいでしょう。

(3)振替日は給料日の直後に

通常、積立の振替日を給料日の直後に設定すれば、着実に「先取り貯蓄」ができ、給料日前になって「積立に回すお金がない」ということにはなりません。

(4)積立期間は適切に設定する

一般に積立途中で引き出すと、預貯金には中途解約利率が適用され、保険商品の中途解約は多くの場合、元本割れを起こします。また、投資信託や株式などでも、値下がり時期に換金をしたら、大きく元本割れする場合もあります。これに対処するには、資金の必要時期や運用商品の性格等を考慮して、適切な積立期間を設定するようにしましょう。

(5)「引き出しにくさ」を積立に活かす

意外と引き出しの手続きが面倒な商品は、「手続きが面倒だし、もう少し頑張ってみるか」という気にもなり、積立継続にはプラスに働きます。ただし、「万が一の病気やケガに備えて積立を」という場合であれば、換金しやすい商品を選ぶべきです。将来の使用目的に合わせて、換金のしやすさや、しにくさも考えて、積立商品を選ぶとよいでしょう。

2010年9月
ファイナンシャル・プランナー(CFP®)
大林 香世

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