老後の自分年金づくりにイデコ(iDeCo)を検討しています。 そのメリットやコスト、運用上の注意点は?

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今回、回答いただく先生は…
井上 信一先生(いのうえ しんいち) プロフィール
  • イデコならではの特徴を理解し、それを上手く活かしましょう
  • 運営管理機関は、かかる手数料等のコストの多寡と商品ラインナップで選びましょう
  • 合理性だけを求めるのではなく、生活の中で無理なく継続できる方法を検討しましょう

  遠藤 美加さん(52歳 仮名)のご相談

将来の老後資金が不安で、自助努力の年金づくりとしてイデコを始めようと考えています。
大まかなしくみしかわからないので、とくにイデコに関わる税金やコストについて教えてください。

遠藤 美加さん(仮名)のプロフィール

家族構成
家族 年収 貯蓄額
本人 52歳 約400万円
個人事業主(イラストレーター)
※国民年金保険の第1号被保険者
約1,200万円
配偶者 54歳 約500万円
会社員

「とりあえず気軽に始める」のならばお勧めできませんが、
制度やコストを十分に理解すれば、検討に値する優遇措置が備わっています。

遠藤様、ご相談ありがとうございます。老後のお金に対する不安は尽きないものですね。
生涯に渡って年金を貰える公的年金は、確かに老後の収入の柱といえます。ですが、今後も制度改正の可能性があり得ますし、果たして公的年金だけで老後生活に十分かは不透明です。
そこで自助努力での備えとなりますが、どうせなら有利な制度を上手く活用したいもの。個人型の確定拠出年金(iDeCo=イデコ)も、その候補の一つといえるでしょう。

確定拠出年金とは

確定拠出年金は、少なくとも60歳までは加入し、60歳以後(現行制度では最長70歳以後)に年金か一時金での受取方法を選ぶなど、あくまでも公的年金を補完するものとして、老後生活のために利用する制度です。加入者ごとに定められる年間拠出限度額までの掛金や積立残高の運用先(金融商品)は自分で選び、その運用成果によって将来の給付額が変動するしくみです。
運用先として選ぶ金融商品(投資信託・預貯金・保険等)は、口座開設する金融機関(運用指図や給付金請求等の窓口でもある運営管理機関)によって、具体的な商品ラインナップが異なります。
このように、加入要件等で制約はありますが、確定拠出年金には他の一般的な投資信託商品等での運用や少額投資非課税制度(NISA)等の制度にはない特徴もあります。

イデコならではの特徴とは

確定拠出年金ならではの特徴としては、拠出から給付に至るまでの、以下のような税制優遇措置が挙げられます。

  1. 掛金拠出時の税制優遇
    自己負担の掛金はその全額が「小規模企業共済等掛金控除」として所得控除の対象となる。つまり、運用に充てたお金がまるまるその年の所得から差し引けるので、その分だけ税金が軽減される。
  2. 運用期間中の税制優遇
    運用益や配当金が非課税なので、運用によって増えた分が都度課税されず効率的に再投資できる。また、運営管理機関内の金融商品の乗換え(スイッチング)の際にも課税はされない。
    ※ただし、金融商品によっては乗換えの際にコストがかかる場合もある。
  3. 給付金受取時の税制優遇
    老齢時の給付金として、年金受取の場合は公的年金と同様の扱い、一時金受取の場合は退職金と同様の扱いとなり、一般的な運用益に課される税制よりも優遇措置を受けられる。
    ※なお、障害状態時の給付金は非課税扱い、死亡した場合の一時金は相続税の課税対象となる。

また、確定拠出年金には企業型と個人型(イデコ)があり、個人事業主の方が加入するのは個人型となります。
折にふれ勤務先からの支援を期待できる企業型と比べ、個人型は掛金やコスト等は全額自己負担で、一切の手続きや情報収集等も自分で行わねばなりません。ですが、一般的に運営管理機関が勤務先によって決められている企業型に対し、個人型(イデコ)では自分で運営管理機関を選ぶことができます。
運用を委ねる具体的な金融商品はもちろん、利用に際してコストがどのくらいかかるのかが運用成果に影響し、それが将来の給付額に関わってきます。これらを一から選べるのが個人型(イデコ)ならではの特徴といえます。

イデコにかかるコスト

イデコは手数料等の様々なコストがかかりますが、少し複雑なので表形式でまとめました(消費税10%の場合)。

【加入時】※初回のみ
徴収元 金額
国民年金基金連合会 2,829円
運営管理機関 0円~1,000円超など
事務委託先金融機関(資産管理サービス信託銀行)
合計 2,829円~3,829円超など
【運用期間中】※掛金拠出のたび
徴収元 金額
国民年金基金連合会 105円
運営管理機関 66円~600円超など
事務委託先金融機関(資産管理サービス信託銀行)
合計 171円~705円超など
【給付時】※給付のたび
徴収元 金額
国民年金基金連合会
運営管理機関
事務委託先金融機関(資産管理サービス信託銀行) 385円~440円など
合計 385円~440円など

手数料の徴収元は、イデコの実施主体である国民年金基金連合会と民間金融機関(運営管理機関、および運営管理機関が指定する資産管理サービス信託銀行)とに分かれ、その金額は運営管理機関によって異なります。
手数料が生じるタイミングは加入時と、運用期間中は掛金拠出のたび、給付金受取中は受取のたびに発生します。とりわけ、運用期間中の手数料は運営管理機関によって大きく異なるので、加入期間が長くなるほど、掛金拠出の頻度が多くなるほど、その総額は無視できないくらいに開いていきます。

また、運用する金融商品によっても、別途、コストがかかります。例えば、投資信託商品では信託報酬というコストが生じますが、年率換算で公表される信託報酬率は0.1%台~3%台超とまちまちです。たとえ同じような運用先に投資する投資信託であっても信託報酬が異なるケースは珍しくはなく、僅かな差であっても長期に及ぶ運用期間では大きな差となっていきます。どういった投資信託を用意しているのかも運営管理機関によって千差万別なので、運営管理機関を選ぶ際には商品ラインナップを確認しておくのが肝要でしょう。

確定拠出年金は運用成果に応じて将来もらえる給付金の額が変動します。運用環境に応じて適切な金融商品を選んでいくのが理想なのですが、実際は簡単なことではありません。ですが、かかるコストについては自分で見極めることが可能です。たとえ運用益が同じでも、手にするお金の額はかかったコストで変わります。この差は、どの運営管理機関を選ぶのかで既に決まっていると言ってもよいでしょう。

なお、イデコにかかるコストは実務的には、そのつどの天引き扱いとなります。
例えば、運用期間中の拠出ごとの手数料が171円の場合で、毎月1万円の掛金を拠出する場合なら差し引き9,829円(1万円-171円)が、年1回にまとめて12万円を拠出する場合なら差し引き11万9,829円(12万円-171円)が金融商品の購入代金として実際の運用に回されます。
給付金にかかるコストでは、一時金形式で一括受取をするのなら一時金の額から1回だけ、年金形式であればその受取のつど、所定の手数料が差し引かれます。

コスト面を重視するなら、掛金拠出の頻度も給付金受取の頻度もなるべく少なくするのが合理的といえますが、ここは実際の生活における収支状況や利便性などで判断が分かれるところです。また、一般的な運用の考え方でも、投資時期や換金時期を分散することはリスク低減対策に有効な場合もあるので、そう神経質にならなくてもよいかと考えます。
ちなみに、運用先に投資信託商品を選択した場合の信託報酬は、年率換算の信託報酬率を日割案分した割合が、積立残高から自動的に毎日控除されていきます。

イデコを検討する際のポイント(まとめ)

これまで述べたとおり、個人型の確定拠出年金(イデコ)を始める際は、運営管理機関選びがとても重要となります。具体的に運用したい金融商品があるならそれを選べる運営管理機関を選ぶことになりますが、お目当ての商品が特にないのならかかるコストの安さで選んでも良いでしょう。
あるいは、とりあえずバリエーション豊富な商品(投資信託であれば株式や債券だけでなく不動産やコモディティに投資するなど多様な資産を選べるもの)をラインナップしている運営管理機関を選ぶのも一考です。
運営管理機関内であれば、運用する金融商品の変更も、掛金額の変更も、拠出方法の変更も、簡単に見直せます。しかし運営管理機関自体を変更するとなると、いったん全ての運用商品を換金した上で移管先の運営管理機関に口座を移すため相応の手間やコストはかかります。

全運営管理機関のリサーチは面倒ですが、以下の中立的な情報を提供してくれるサイトは役に立つと思います。

iDeCo公式サイト(国民年金基金連合会が運営)
https://www.ideco-koushiki.jp/
iDeCoナビ(特定非営利活動法人 確定拠出年金教育協会が運営)
https://www.dcnenkin.jp/

また、税制優遇措置を最大限に活かすのなら、年間拠出限度額(個人事業主の場合は国民年金基金の拠出と合算して81万6,000円)の上限まで利用したいところですが、現在の生活や今後のライフプランにあわせて、無理のない金額と拠出方法(毎月拠出するのか、年に1回~複数回のみ拠出するのか)で始めましょう。

最後に

いったん確定拠出年金を始めると途中で辞めることはできず、原則として運用残高の引き出しもできません。また、遠藤様がこれから始める場合、60歳まで(※)の通算加入期間等が10年に満たないため、加入期間等に応じた受給開始年齢(現行制度では最長65歳)まで給付を受けることはできません。
「とりあえず」といった気軽な動機で始めることはオススメできませんが、「老後資金のため」という目的を明確に持たれ、何かしらの自助努力での運用を検討されているのであれば、イデコは十分に検討に値する方法だと思います。いま得られる収入の一部を、できる限り有利な制度を利用して将来の収入に充てる方法を考えているのならば、始めてみてもよいのではないでしょうか。

※現在、60歳までの加入(掛金拠出可能年齢)の引き上げの法改正案が審議されています


パートの主婦ですが、iDeCoに興味があります。 どんなメリットがあるのでしょうか?
近頃目にするようになった、確定拠出年金制度を教えてください。
老後資金の準備として個人年金保険を考えています。 しかし、否定的な意見も多く、何が良いのでしょうか?