「老後に2,000万円の貯蓄が必要」と言われますが、いったいどうすればよいのでしょうか?


今回、回答いただく先生は…
村井 英一先生(むらい えいいち) プロフィール
  • 2,000万円がなければ老後に破綻する、というわけではありません。
  • 同じ会社に勤め続けた人は、「退職金」だけでかなりの部分を賄えます。
  • 人生には〝貯め時〟があり、今からでも十分に間に合います。

  山本 直樹さん(仮名 49歳 会社員)のご相談

「老後に2,000万円の貯蓄が必要」との報告書を金融庁が作成したことがニュースになりました。年金だけで老後が過ごせるとは思っていませんが、現実に「2,000万円」という金額が示されると、正直がく然とします。恥ずかしながら、わが家の現状を申しますと、貯蓄は200万円程度で、とても2,000万円も貯められそうもありません。まわりの人はどうやって貯めているのでしょうか?

山本 直樹さんのプロフィール

家族構成
家族 年齢 年間収入
ご相談者 山本 直樹 さん 49歳(会社員) 年収500万円
真弓 さん 48歳(パート主婦) 年収100万円
長男 大樹 さん 20歳(大学生)
長女 未来 さん 17歳(高校生)
金融資産 定期預金 150万円
普通預金 50万円
不動産 自宅マンション

教育費の負担がなくなれば貯蓄も可能に。
「退職金」もあれば心配する状況ではありません。

1.「月額5万円の赤字」は、貯蓄を使った結果

山本様、こんにちは。49歳の現在、貯蓄残高は200万円とのことで、確かにこの年齢ではほめられた額ではありません。しかし、心配するには及びません。今からでも十分間に合います。
そもそも、「2,000万円」という金額が独り歩きしてしまいましたが、これはあくまで統計調査による平均額を基にはじき出した金額で、それほど気にする必要はありません。老後の過ごし方は人それぞれです。
報告書が根拠とした統計データでは、老後の収入の平均が21万円なのに対し、支出の平均が26万円となっており、そこから「月5万円の赤字」としています。その結果、人生100年時代では約2,000万円が必要になるというわけです。
しかし、「月5万円の赤字」という〝平均〟がくせものです。老後に貯蓄を取り崩して旅行や趣味に使う人がいれば支出は多くなり、平均の収支が赤字になるからです。貯蓄があるからこそ〝赤字〟になるわけで、月に26万円なければ老後の生活が破綻するわけではありません。老後は、貯蓄の状況にあわせて生活していけばよいのです。

2.退職金の平均額は1,159万円~1,983万円。

それでも「平均的な貯蓄額を備えて老後を迎えたい」と、2,000万円を意識する気持ちもわかります。65歳が老後のスタートと考えると、けっして難しい金額ではありません。「退職金」があるからです。
厚生労働省の調査「就労条件総合調査(平成30年)」によると、勤続20年以上での定年退職の場合、退職給付額の平均は、大学・大学院卒で1,983万円、高卒管理・事務・技術職で1,618万円、高卒現業職で1,159万円となっています。(※)
大学・大学院卒であれば、退職金だけで2,000万円のほとんどを賄えることになります。給付額が少ない高卒現業職でも半分以上を賄えており、退職金以外で準備する額は約1,000万円となります。
調査の対象となっているのは、「退職給付額」で、退職時に一時金で支給される分(いわゆる「退職金」)以外に、年金として支給されるものも含みます。会社によっては、「退職金」は少ないものの、企業年金が充実している場合もあります。これも老後の貯蓄額に含めて考えることができます。
逆に、「退職給付」がまったくない会社もあります。また、勤続年数が短く、十分な退職給付を受けられない人もいます。もちろん、自営業やフリーで働いている人には退職金はありません。そのような場合は、一度にまとめて貯蓄を増やすことができませんので、少しずつ地道に貯蓄を増やしていく必要があります。

3.子供が卒業~定年までの期間に貯蓄額を増やす

もちろん、退職金だけをあてにするのではなく、少しでも多くの貯蓄を準備しておきたいものですが、ご質問の山本様のような状況の方も少なくないことと思います。ただ、人生のライフステージには、「貯蓄がたまる時期」と「貯蓄がたまらない(あるいは減ってしまう)時期」があります。「貯蓄がたまらない時期」は貯蓄が増えなくてもやむを得ません。その分、「貯蓄がたまる時期」に貯蓄を増やしていけば、老後資金は準備ができます。
貯蓄がたまる時期」は、子供が小さい間と、子供が学校を卒業してから自分自身の退職までの間です。子供が小さい間は、子供の教育費のために貯蓄をしていきます。老後資金の準備は、子供が学校を卒業してから自分自身の退職までの間になります。この時期は、給与収入が多く、教育費がかからなくなります。この期間に、毎年できるだけ多く貯蓄をしたいものです。

「貯蓄がたまらない時期」は、子供の教育費がかかる時期(大学、専門学校への進学時期)と老後です。この時期は貯蓄が減ってもやむを得ません。ただし、子供が生まれたのが遅く、子供が学校を卒業してから自分自身の退職までの期間がほとんどない人は要注意です。この時期に教育費がかかりながらも、あわせて老後のための貯蓄をしていく必要があります。
山本様は、退職金で2,000万円のある程度までを賄えそうですが、これから退職までの間に貯蓄を増やしていくこともできるでしょう。お子様が一人社会人になれば年間100万円、2人とも卒業されたら、年間200万円の貯蓄を目標にしてみてください。60歳の定年までに1,000万円の貯蓄は十分に準備できるはずです。また、山本様が60歳を迎える頃には定年も65歳に延長されているでしょう。そうすれば、もっと貯蓄は積み増せるのではないでしょうか。

※厚生労働省「就労条件総合調査(平成30年)」より
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/18/index.html


老後に備えて数千万円の貯金が必要と聞きます。 本当にそんなに必要なのでしょうか?
自分の老後の生活が不安です
老後資金はいくらを目標に貯めればよいでしょうか?

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