デュアルライフ(2拠点暮らし)に関心があります。どんな方法や注意点がありますか?


今回、回答いただく先生は…
井上 信一先生(いのうえ しんいち) プロフィール
  • デュアルライフの手段は購入だけでなく様々。徐々にステップアップするなど、柔軟に考えましょう
  • 今より確実に増える支出や手間を惜しまない価値観を持てるよう、目的を明確に持っておきましょう
  • 情報源は豊富にありますが、何よりも自分の経験からくる実感が一番の情報です

  香坂 大地さん(38歳 仮名)のご相談

最近よく聞く2拠点暮らしにとても関心があり、地方の格安な物件等を探しています。
以前より田舎暮らしに憧れていましたが、仕事もあるので現実的ではありませんでした。ですが、今では私も妻も月に数回はリモートワークなので、調整すればリモートワークを同じ日に合わせられます。子どもの都合次第では週末を挟んで平日からもう一つの拠点で過ごすことも可能だと思っています。
お金の面での不安もありますが、どのような方法があるのか、また、どのように調べていけばよいか、教えてください。

香坂 大地さん(仮名)のプロフィール

家族構成
家族 職業等 年収
本人:大地さん(38歳) 会社員 約600万円
妻 :優奈さん(39歳) 会社員 約500万円
長女:みゆきさん(10歳) 小学生
貯蓄 約1,800万円
住居 都心の賃貸マンション

宿泊から物件購入まで選択肢は豊富。失敗を最小限に抑えるためにも、少しずつ経験を積んで理想の場所を探しましょう。

香坂さん、ご相談ありがとうございます。
筆者の知人にも、生活拠点を2カ所持つ暮らしを実践している方が数人います。受け入れ支援に力を入れている自治体も増えており、新しい生活スタイルとして目が離せませんね。一口にデュアルライフ(2拠点暮らし)といっても様々な方法があります。考え方や情報の取り方のほか、注意点などについても考えていきましょう。

何故いま、デュアルライフに関心が集まるのか?

デュアルライフとは、2拠点暮らし、2拠点生活、2拠点居住等と、文字どおり現在の住まい以外に、週や月に数日、あるいは週末ごとや季節ごとに、もうひとつ(または複数)の住まいを持つ生活スタイルです。従来は富裕層や定年退職後のシニア層など、経済的あるいは時間的にゆとりのある一部の方が、別荘やセカンドハウスを持って楽しむ印象がありました。しかし、最近は若年層やファミリー層にも関心が広がっているようです。

この背景として、日本が人口減にあるなか、近い将来には世帯数も減少に転じ3戸に1戸が空き家になるともいわれている一方で、都心に人口・世帯が集中し、地方の過疎化が深刻であることが挙げられます。
以前から国土交通省では「二地域居住」の事例を発表したり推進を図ったりしており、移住者への経済的支援に力を入れてきた地方自治体も数多くあります。
これに加え、今回のコロナ禍でリモートワークといった新しい働き方が多くの方で可能になり、人口が密な都心を離れたがる人が増えたことが、昨今のトレンドに繋がっていると思われます。

人生100年時代といわれ、これまでの「学ぶ→働く→悠々自適なリタイア」という画一的なライフプランでなく、何歳からでも学び直しや働き直しができる等、新しい生活様式やニューノーマルな人生プランを受け入れられる世の中になりつつあります。生活のベースについても、「移住」ではなく、今の拠点を残したまま「もう一つの場所をつくる」といった、これまでの常識にはない自由な発想が受け入れられつつあるのかもしれません。

デュアルライフの選択肢は豊富

デュアルライフに関するリサーチや提言、デュアルライフを実現する方法等については、国土交通省HP(https://www.mlit.go.jp/kokudoseisaku/chisei/kokudoseisaku_chisei_tk_000073.html)およびその発表資料(https://www.mlit.go.jp/kisha/kisha05/02/020329/02.pdf)、あるいは、民間のリクルート社(https://suumo.jp/edit/oudan/duallife/about.html)等による広報資料等で情報を入手することができます。
ここではその詳細は割愛しますが、ニューノーマルな生活スタイルが受け入れられる中、デュアルライフの居住形態についても柔軟にその方法を考えてみてはいかがでしょうか。
以下はその代表的な例ですが、上から下にいくほど、始める際のハードルが低くなる順となっています。

  1. ① 購入する

    都心に比べ、郊外や地方の物件は格安で購入できます。
    加えて昨今の空き家問題もあり、長年に渡り放置されてきた空き家や古民家等は多く、数十万円~数百万円程度で買えるものもあります。こうした物件を手に入れ絶景ライフや広大な土地で趣味を楽しむことも可能ですが、購入後の改修のための労苦やその費用も少なくはないので、慎重に考える必要があります。
    また、税金等の経常支出の分割や登記の方法等に注意を要しますが、知人や友人などと共同で購入し、互いに融通しながら利用すれば、より少ない負担で手に入れることも可能です。

  2. ② 借りる

    移住やデュアルライフを推進する自治体によっては、通常の賃貸借契約とは異なり家具家電等を付与してくれるところもあります。条件にもよりますが月額賃料が数万円程度に抑えられている戸建てや集合住宅の物件も少なくはありません。また、家具付きのウィークリーマンション等は概ねどの街にもあるので、これを利用するのも手でしょう。購入するよりも手軽に始められるのが賃貸の利点といえます。

  3. ③ 利用する

    住みたい住宅に滞在期間を自由に設定して自在に住めるサブスクリプション(サブスク)方式のサービスが増えています。サービス提供企業により、月額数万円の固定料金で全国の管理住居を一定期間で移り住めるものや、数千円の利用料で週末のみ住めるものなど様々です。一般的なシェアハウスのように個室は確保しつつ、リビングやワークスペースを共有するコリビングやコワーク形式が一般的なので、人脈を広げたい方や人と接するのが好きな方にお勧めです。

  4. ④ 泊まる

    上記③のサブスク形式のように利用の有無を問わず固定料金が発生することはなく、利用したい時だけ泊まれる民宿やホステル、ゲストハウスや民泊などを検討するのも一考です。中には、数日単位から利用できるシェアハウスや、(デュアルライフ用に)購入した家を利用しない時に人に貸し出す方もいます。旅行の延長のような居住形式ですが、一回あたりの宿泊日数を長めにとる、定期的に何度も宿泊する等々、旅行より一歩進んだ第2の家で過ごす感覚も楽しめると思われます。

ただ、デュアルライフを始めたものの間もなく辞めてしまう方もおられます。よほどのファーストインプレッションでもない限り、場所選びは中々に悩ましいものですし、生活拠点としての理想と現実のギャップもあるでしょう。デュアルライフを始めるにあたり、上記④「泊まる」のようにハードルの低い方法から順に、少しずつ上位にステップアップしていくことをお勧めします。

何のためのデュアルライフなのか?その目的は明確に

デュアルライフを満喫されておられる方が数多くいらっしゃる一方、やってみたけど自分には合わなかった、維持費や移動に伴う金銭的な負担が想像以上に大きかった、面倒になったなど、ほどなく辞めてしまうケースも少なくはありません。
何事にもいえますが、「何故それをやりたいのか、何故それが欲しいのか」を明確に持つことは大切です。たとえそのやりたいこと、欲しいものが漠然とした憧れでも構わないと思います。実践してみて、「現実はイメージと違った」とわかるだけでも、有益な経験であり、人生における良い糧となるのではないでしょうか。

筆者の知人の例を挙げると、ある方は観光地でもあるその街が好き過ぎて旅行者でなく生活者になりたいとの想いで賃貸マンションを契約し、1年のうち数カ月単位でその街に滞在して満喫する生活を送られています。別の方は、ご夫婦の郷里が近接県で、それぞれの親の介護のために都心との中間に別邸を購入されました。
かくいう筆者もデュアルライフを計画しているひとりですが、幸い近隣県に両親の住む実家があるので、親の介護のための生活拠点には困りません。ですが、それとは別に幼い頃からよく遊びに行った「ふるさと」として心に残る祖父母の暮らしていた街や、この仕事をする以前に転勤族の会社員として赴任していた街に、「また住んでみたい」という想いを、ハードルの低い順から叶えてみたいと考えています。

「自然と触れ合いたい」、「子どもに自然と触れさせたい」、「平日の都心生活と異なるメリハリのある生活をしたい」、「都心では叶わない趣味を満喫したい」、「自分の故郷で暮らしたい」、「ふるさとと呼べる場所を持ちたい」、「将来の移住先を探したい」、「地域の人と触れ合いたい」など、デュアルライフを望まれる方の目的は様々です。

デュアルライフでは、収支についてのシミュレーションをおこなうことは重要です。その家にかかる購入費(購入される場合にはそれに伴う諸費用や税金)・家賃・固定利用料のほか、新たな家財等の準備費や光熱費等々、さらにその場所への移動費など、出費が多くなることはまず確実です。そうした出費増に折り合いをつけられる価値観を持つ必要があります。

情報収集は多様な方法で。そして自身の経験が何よりの情報です

デュアルライフをサポートしてくれる助成の有無や多寡については、その地域や街により異なります。助成の有無が無視できるほど思い入れのある地域や街を望まない限り、こうした金銭的助成の有無は大きな差となります。

例えば、筆者が希望している、魚介類等の地産地消のコスパの良いA街は都心との直結電車や新幹線の停車駅でもあり、昨今は住民の流入が多いためか、さしたる助成を掲げていません。ですが、その隣のB街はA街駅から発着するローカル線を利用しないと行けない縛りがあるためか、住宅購入や賃貸への豊富な助成があります。
このように、観光目線でみれば似た地域であっても、いざ住むとなれば隣り合わせの自治体でも制度が異なるものです。ネットで調べれば各自治体のHPで様々な情報を得られます。しかし、実際に数日間は滞在してみて、街の雰囲気や利便性を検証することが大切でしょう。ご自身の経験が何よりの情報です。

また、自分が知らなくとも魅力的な街がたくさん埋もれているかもしれませんが、そもそも知らないのであれば自治体のHPにたどり着くことはできません。一般社団法人デュアルライフ協会(https://duallife.or.jp/)等のように無料会員として登録することで、適宜、デュアルライフに関する情報やセミナー、デュアルライフを希望する方々を集めたイベント等を発信してくれるサービスなどを利用することも検討してみましょう。


地方移住を考えていますが、メリットとデメリットを教えてください。
都内にマイホームを持ち、地方の実家に戻る予定はありません。空き家問題というのを耳にしますが、何が問題でどのような対策を立てれば良いのでしょう。
マイホーム購入で、減税や補助金などがあると聞きました。 どんなものがあり、条件や制限はあるのでしょうか?