地方移住を考えていますが、メリットとデメリットを教えてください。


今回、回答いただく先生は…
村井 英一先生(むらい えいいち) プロフィール
  • 不動産価格や物価が安くても、教育費や自動車関連費がかかります。
  • 近年は、地方中核都市の人気が高まっています。
  • まずは賃貸で、その地域に慣れてから購入を検討するのもよいでしょう。

  斉藤 敦さん(仮名 32歳 会社員)のご相談

現在は東京の交通便利な場所に住んでいますが、仕事がリモートワークになり、出社する必要がなくなりました。地方に移住しようかと思いますが、どうでしょうか? 不動産価格は安いですし、物価も安くて生活費が抑えられるのではないかと思います。地方移住のメリットとデメリットを教えてください。

斉藤 敦さん(仮名)のプロフィール

家族構成
家族 年齢 年間収入
ご相談者 斉藤 敦さん 32歳(会社員) 年収350万円
ご家族 30歳(専業主婦)
長女 3歳
長男 1歳
貯蓄額 380万円

長期で比較検討すると、必ずしも経済的なメリットがあるとは限りません。家族のライフプランと照らして移住先選びが重要です。

1.地方に住むことのメリット&デメリット

斉藤様、こんにちは。コロナ禍以降リモートワークが普及し、勤務先を変えずに地方への移住をする人も出てきているようです。テレビ番組でそんな実例を紹介していることもあります。しかし、実際はトレンドになるほど地方への移住が増えているわけではありません。
地方に住むと、都会に住むのに比べて本当に支出が抑えられるのでしょうか。地方移住のメリットとデメリットを踏まえながら、検討してみましょう。

まず、地方に住む主なメリットを挙げてみましょう。

  1. ① 自然が豊かで、リフレッシュできる。
  2. ② 人のつながりが濃密で、地域の交流が盛ん。
  3. ③ 不動産価格が安く、マイホームを取得しやすい。
  4. ④ 物価が安く、生活費が少なく済む。

一方、デメリットはどうでしょうか。

  1. ① レジャー施設や刺激が少なく、退屈することも。
  2. ② 近所の人づき合いが煩わしく、負担に感じることも。
  3. ③ 大学などの進学が自宅外通学となり、教育費がかかる。
  4. ④ 自動車が複数台必要で、ガソリン代・維持費がかかる。

メリットの裏返しがデメリットにもなります。例えば、自然が豊かだということは、逆に言えば、都市機能が貧弱で、商業施設やレジャー施設が少ないということでもあります。アウトドアレジャーが好きな人にとっては近隣に自然があることは魅力ですが、そうでない人にとっては、だんだんと物足りなくなり、退屈することもあります。
地域の人とのつき合いは、魅力にもなれば、負担にもなります。負担の方が強く感じられるようだと、せっかく地方に移住したのに、後になって都会に戻りたくなる、ということにもなりかねません。ご家族の性格や生活スタイルを踏まえて、どちらの要素が強くなりそうか、じっくりと考えてみる必要があります。

自宅購入や生活費を考慮すると、地方暮らしの方が経済面でのメリットが大きいのではないかと考えておられるようですね。確かに、地方は都市部に比べて土地の価格が安いので、自宅購入の費用を抑えられます。首都圏でマイホームを購入するのと比べれば、かなり安く入手することができます。
しかし、お子様の将来の教育費を考慮に入れておく必要もあります。お子様が大学や専門学校に進学する際に、地方では学校が少なく、都市部の学校へ自宅外通学となることが多いからです。学校近くのアパート暮らしで通学するとなると、親の負担は小さくありません。日本政策金融公庫の「教育費負担の実態調査」(2020年10月30日発表)によると、自宅外通学者への仕送り額は、年間平均で90.3万円となっています。自宅外通学を始めるための費用が入学者1人当たり39.3万円ですので、学費以外に4年間で1人約400万円、子供2人であれば800万円かかる計算になります。自宅購入で安く済んでも、その分は教育費がかかると考えられます。
地方の方が都市部よりも物価が安く、生活費が安上がりになるという面は確かにあります。しかし、公共交通網が貧弱な地方では自動車が必需品です。一家に1台ではなく、大人一人につき1台が必要です。夫婦で2台が必要ですし、子どもが免許を取得すると、子どもに買い与えることも珍しいことではありません。もちろん、土日だけでなく毎日のように使うようになりますので、ガソリン代もかかります。自動車の維持費やガソリン代を考慮すると、生活費が安く済む分を相殺することになるでしょう。

2.公示価格から最近の人気の傾向を見る

国土交通省公表の「令和3年 地価公示の概要」から、最近の不動産の変化を見てみます。この調査は1月1日時点での不動産価格に基づいていますので、2020年の動向と言えます。前年と比べて、住宅地が上昇している都道府県は北海道、宮城県と、福岡県を中心にした九州地方(佐賀県、熊本県、大分県、沖縄県)でした。千葉県もわずかにプラスになっていますが、それ以外の都府県はすべてマイナスです。三大都市圏(東京圏、大阪圏、名古屋圏)の下落が大きいのですが、それ以外の地方もほとんどの地域で下落しています。一方、上昇しているのは、札幌市、仙台市、広島市、福岡市といった地方中核都市です。これは2020年だけでなく、ここ数年の傾向です。近年はこれらの地方中核都市が、周辺の地方から人口を集めている傾向があります。適度な都市機能を有しながら、比較的近くに自然と触れ合える場所もある、地方中核都市が人気を集めているようです。
実際、これらの地方中核都市は、三大都市圏ほどではないにせよ、都市の規模が大きく、東京とそれほど変わりない生活実感で暮らすことができます。転職などで、仕事を探すようになった場合も、地方都市のような苦労はしなくて済むでしょう。

三大都市圏の郊外もお勧めです。コロナ禍となって以来、都心から1~2時間ぐらいで行ける周辺地域が注目されています。リモートワークで広い間取りを求めて、都心近くのマンションから転居する人が増えているようです。毎日の通勤がなくなったとはいっても、週に一度や月に数度は出社の必要があるという人には好都合です。ある程度の人口があるため、商業施設もそろっており、生活に不便はありません。

地方に住んでも、長い目で見ると、必ずしも支出が抑えられるわけではありません。将来奥様が仕事に復帰されることや、ご相談者様が転職される場合などを考えると、ある程度の経済規模も欲しいところです。地方中核都市や三大都市圏の郊外を中心に検討されてみてはいかがでしょうか。

なによりも大切なのは、目先の損得で比較するのではなく、ご家族のライフプランを踏まえて、希望をすり合わせることです。ご夫婦のどちらかが突っ走って、お相手がそれに〝つき合う〟という状態で転居をすると、のちのち気持ちの上で齟齬が生じてしまいます。いきなり購入するのではなく、まずは賃貸で住んでみるのもよいでしょう。不動産は簡単には売買できませんので、その地域に慣れてから購入を検討するのも一つの方法です。

<ご参考>
※日本製作金融公庫「教育費負担の実態調査」(2020年10月30日発表)
 https://www.jfc.go.jp/n/findings/kyoiku_kekka_m_index.html
※国土交通省「令和3年 地価公示の概要」
 https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/content/001391750.pdf


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