都内にマイホームを持ち、地方の実家に戻る予定はありません。空き家問題というのを耳にしますが、何が問題でどのような対策を立てれば良いのでしょう。


今回、回答いただく先生は…
鈴木 暁子先生(すずき あきこ) プロフィール
  • 空き家問題を理解しましょう。
  • ご自身の場合に置き換えてリスクを考えてみましょう。
  • 早めに自治体や専門家に相談、リサーチをして、選択肢を多くしておきましょう。

  大貫 真由美さん(仮名・50歳・会社員)のご相談

私は都内で仕事を持ち、マイホームもこちらで購入しました。実家は地方で両親は健在ですが、高齢になってきたので呼び寄せを打診したところ、住み慣れた我が家のほうが良いとのことで、引き続き実家に住んでいます。兄弟姉妹もいないので、両親が亡くなったら実家は空き家になりますが、空き家問題というのを耳にします。何が問題で何か対策はあるのですか? 親は貯金がそれほどあるわけではないので、面倒であれば最悪相続放棄をしても良いと考えています。

大貫 真由美さん(仮名)のプロフィール

家族構成
家族 収入
本人(50歳・会社員) 手取り650万円

空き家所有者の負担だけでなく、周辺への迷惑や様々な影響も。
維持・処分いずれも大きな負担を伴うケースも多いので、十分なリサーチを。

1.対策を考えるためにも空き家問題を知っておくことは必要です

大貫さん、こんにちは。ご自身はマイホームを構え、地方の実家に戻る予定はないという方が増えていますが、実は地方だけでなく、都市部でもけっこう空き家が増えています。メディアでも取り上げられている「空き家問題」ですが、まずは空き家問題の概要をご説明しておきます。

空き家問題には大きく2つあります。

1) 少子高齢化が進み、今後空き家が増えていく

そもそも空き家となる要因としてよくあるのは、居住者が高齢となり高齢者施設に入ったり子世帯の近くへ住み替えて家を空けてしまうケースです。日本はまだ少子高齢化が進みますので、今後空き家も増えていくと予想されています。

空き家が増える(=住民が少なくなる)ことによって、街の活気がなくなるだけでなく、住民税収入が減る、あるいは残る住民の負担が大幅に増えることになります。自治体が財政難だとインフラ整備も難しくなりますし、住民が少なくなると金融機関や商業施設、病院なども撤退せざるを得ないなど、自治体の維持が困難になってしまうのです。

2) 空き家が危険をもたらす

もちろんきちんと管理されている空き家もありますが、所有者がはっきりしない、管理をせず荒れ放題となっている、所有者が認知症のため処分ができない、といった空き家も多くあります。街の景観を損なうだけでなく、犯罪の温床や事故の原因にもなりかねないため、何らかの対策が必要だと問題になっています。

このようなことから、2015年の税制改正では、特定の空き家については固定資産税や都市計画税などの軽減を適用しない(ある意味ペナルティです)と規定したり、2016年の税制改正では、相続で得た空き家を売却しやすいように売却益に対する特別控除を設けるなど、税の面から空き家対策をとっています。
また、空き家活用の新ビジネスなど官民でさまざまな支援や取り組みも行われています。

2.ご自身が直面する空き家問題を認識しておきましょう

次に大貫さんご自身の空き家問題がどのようなものかを確認しましょう。

  • 処分(売却、活用など)できるのは所有者。所有者のお父様がご存命のままもし認知症となり契約ができなくなると、大貫さんが相続するまで処分のタイミングを待つしかない。
  • 居住者がいなくても固定資産税は毎年かかる。
  • ご両親とも住み替えて、あるいは亡くなられて居住者がいなくなると、大貫さんが実質維持・管理をしなくてはならない。
  • 維持・管理のために実家を訪れることを考えると水道や電気は止められず、水道・高熱費もかかる。

処分のしかたも考えてみましょう。

1) 売却

売却したくてもすぐに買い手がつくとは限りません。どうしても売りたいとなるとたたき売りのような値段になってしまうこともあります。それでも売れればマシというケースも少なくありません。

2) 更地にする

空き家が問題ならばと、建物を解体し更地にすることを検討する人もいらっしゃいますが、そう簡単ではありません。解体費用、家具・家電・家財などの処分費用などを合わせれば、木造であっても数百万円はかかるでしょう。
また、家屋が建っていると土地にかかる固定資産税は200㎡以下の部分は6分の1、200㎡を超える部分は3分の1に軽減されるという特例があるのですが、更地にしてしまうと特例の対象外となり、固定資産税は6倍となってしまうのです。このことも空き家を減らせない要因ともなっています。

3) 相続放棄

最終的に大貫さんが相続する場合、おっしゃるように相続放棄という手段もあります。ただ、相続放棄は不動産や金融資産だけでなく、貴金属など金銭に換えられるものはすべて放棄しないといけません。形見の品にしたいお母様の指輪や時計など、思い出の品も手元に残らなくなってしまうかもしれないことも理解した上で検討する必要があります。

相続放棄するには、相続が開始したことを知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立てないとなりません。多くの書類を揃える必要があり、3ヶ月という短期間のため、有料にはなりますが司法書士や弁護士の力を借りたほうが良いかもしれません。

なお、相続放棄をして固定資産税などを納める義務はなくなりますが、相続財産管理人(相続財産を管理、換価し、最終的に国に帰属させる人)に空き家を引き渡すまでは、空き家の管理義務は続きます。相続放棄したからといって空き家を放置しておけばさまざまな不都合もあるからです。相続財産管理人の選任は家庭裁判所に申し立てを行います。

4) 寄付

タダでもいいからと自治体に寄付を考える人もいますが、こちらも実際にはよほどメリットのある物件でないと寄付を受けてくれるケースは多くありません。

このように、空き家の処分は決して簡単ではありませんが、放置して荒れさせてしまうと税でペナルティが科せられるだけでなく、クレームが来たり、隣家や住民に迷惑をかけて損害賠償責任を問われるリスクもあります。少なくとも管理はきちんとしておくようにしましょう。

3.早めに動き始めることで選択肢を多くしておきましょう。

現在はご両親もご健在で、今すぐ空き家問題が起きるわけではありませんが、逆に時間の猶予があるうちに動き始めましょう。まずはご両親のご意向も含めて親子で話し合ってください。高齢者施設に住み替えても最期は自宅に戻りたい、自分が生きているうちに人手に渡したくないなどご両親のお気持ちを聞くことで処分のタイミングも予想がつきます。
併せて相続財産一覧表などを作成しておいてもらいましょう。これはご両親の終活にもなりますが、それによって放棄すべきかどうかの判断もしやすくなるでしょう。

また行政や民間の取り組みなどもありますので、ご実家のある自治体に相談すると良いでしょう。地元の不動産屋さんでご実家近隣の物件の動きや相場観などを聞いたり、空き家再生、空き家活用事例などをチェックすることも有効です。

利用、活用ができるに越したことはありませんが、仮に手放すことになっても納得して手放せるよう、今のうちからさまざまなリサーチを進め、できるだけ選択肢を多くしておくことが、今の大貫さんにできることだと思います。


自宅を購入すると、国からお金がもらえると聞きましたが、本当ですか?
ゆくゆくは実家を相続すべきか迷っています
85歳、自宅を売却して住み替えをします。 近い将来の相続まで考えて、どのくらいの物件が妥当でしょうか。