保険を検討したいのですが、どのように考えていけば良いのでしょうか?


今回、回答いただく先生は…
井上 信一先生(いのうえ しんいち) プロフィール
  • 日常生活のリスクに対し、必要な保障・補償をモレなく備えることが何よりも大切です。
  • 貯蓄とのバランスも考慮して負担できる保険料を明確にしてから保険の検討をしましょう。
  • 優先順位の高い保障・補償は人それぞれ、時間が経てば変化もするので、適宜、見直しも大切です。

  宮本 麻子さん(45歳 仮名)のご相談

現在、死亡保険と医療保険くらいしか加入していないので少々不安に感じています。そこで、保険ショップなどに相談に行こうと思っています。保険のことは全くわからなくて目移りしてしまいそうなので、予備知識を持っておきたくて相談しました。保険を検討する時は、どのようなことを考えておけば良いのでしょうか。

宮本 麻子さん(仮名)のプロフィール

家族構成など
家族 年間収入 貯蓄額
本人 45歳 約500万円(会社員) 約1,800万円
長女 16歳
賃貸マンションに居住、マイカーあり

加入済みの保険

  • 終身保険、医療保険(本人が対象)
  • こども保険(長女が対象)
  • 火災保険(地震保険以外の特約は付いていない)
  • 自動車保険(対人賠償保険・対物賠償保険・人身傷害保険をセット、車両保険は付いていない)

まず家計から保険にまわせる金額を把握して、
その中で必要な保障・補償を、適宜、バランスよく備えることが大切です。

商品ありきでなく保障・補償から検討しましょう

保険商品や共済商品等(以下、保険等)は次から次へと魅力的に感じる商品が出てきますし、商品を知れば知るほど不安は増していくものです。保険を選ぶのは中々悩ましいですよね。ですが、「良い商品そう」と、あれもこれもと加入していては保険料も嵩んでしまいます。その結果、本来大切な貯蓄にまわせるお金が削られてしまうのは本末転倒です。また、保険等の商品内容は意外と複雑ですので、充分に理解しないまま契約すると、いつの間にか保障・補償が偏ってしまうこともあり得ます。
保険等を検討する際は、商品ありきではなく、まず、必要な保障・補償が何なのかを考えることが大切です。具体的な個別保険商品をみる前に、どういう事態になったら家計に深刻な経済的ダメージを与えるのか、まず保障・補償を考えることで、本当に必要な備えをモレなくバランスよく準備することができます。

8つのリスクに整理しましょう

家計は収支と貯蓄とで成り立っていて、収入が減っても支出が増えても家計が厳しくなります。その収支不足を無計画に貯蓄から取り崩していくと、予定していたイベントに貯蓄から回す余裕がなくなったり貯蓄自体が枯渇してしまったりする事態に陥ってしまいます。
ですが、例えばお子様の教育費などは支出が増える時期が予めわかっているので計画的な準備は可能です。また、給与が減ったり病気で入通院したりするような収支悪化の事態に陥っても、すぐに家計が危機的な状態になることは稀です。足元の収支状況を見直してライフプランを立て直すことも十分に可能です。
しかし、ある日突然、貯蓄では賄い切れないほどの深刻な経済的ダメージを、予期せず被ってしまったとしたら、描いていたライフプランは根底から崩れてしまいます。こうした非常時に新たな別の収入を生むしくみが保険等であり、そのための備えが保障・補償です。

ところで、日常生活における深刻な経済的ダメージも、「予定していた収入が減少・途絶する」リスクと、「予定していなかった支出が生じる」リスクに大別できます。
前者はさらに、「死亡」、「就業不能(心身の状態が原因で働けなくなること)」、「老後(年金制度改正や物価上昇等が原因で実質的収入が減ること)」、「失業(お勤めの方が会社都合や倒産等で失業すること)」によって、本人や家族が収入面でダメージを負う4つのリスクに細分することができます。
後者も、「医療費用」、「介護費用」、「資産損害(損壊・滅失した資産の買い替えや修理費用がかかること)」、「損害賠償(法律上の損害賠償責任を負った場合に費用がかかること)」で、本人や家族が支出面でダメージを負う4つのリスクに細分できます。

このようにリスクを8つに分ければ、どういった保障・補償を考えねばならないのか整理できるでしょう。ただし、国の社会保障等のほか、お勤めの方の場合には会社等から受けられる保障や福利厚生等もありますので、それらを考慮しても不足すると思われる分を、自助努力として保険等で検討をすればよい訳です。

図は、会社員である宮本さんの場合で、宮本さんが加入されている保険での保障・補償範囲を示したものです。

【図表 日常生活における8つのリスクと準備済みの保障・補償  ※宮本様の場合】

予期せず収入が減少・途絶するリスク
死亡 就業不能 老後 失業
国や会社の主な保障
※労災は労災事故に限る
会社保障や福利厚生は
会社の規程で異なる
遺族年金
弔慰金
障害年金
健康保険
(労災)
各種手当
老齢年金
退職金
企業年金
雇用保険
加入保険 終身保険 ※1
医療保険
こども保険 ※2
火災保険※3
自動車保険※4
予期せず支出が発生するリスク
医療費用 介護費用 資産損害 損害賠償
国や会社の主な保障
※労災は労災事故に限る
会社保障や福利厚生は
会社の規程で異なる
健康保険
(労災)
各種手当
介護保険
(労災)
各種手当
各種手当
税制優遇
加入保険 終身保険
医療保険
こども保険
火災保険※3
自動車保険※4

※1 終身保険は解約することで老後資金に活用することもできる
※2 こども保険は契約者である親の死亡保障を兼ねている
※3 火災保険の内容
  :家財を対象、地震保険以外の各種特約は付けていない
※4 自動車保険の契約内容
  :対人賠償保険・対物賠償保険・人身傷害保険をセット、車両保険は付けていない

保障・補償の準備状況を確認しましょう

図のように整理したら、リスクの種類ごとに保険等でカバーされているのかどうか、モレがないかのバランス状況を確認します(「失業」リスクは保険等の対象外なので割愛します)。

宮本さんの場合、まず、「就業不能」リスクと「介護費用」リスクがカバーされていないことがわかります。実は、生計者の「就業不能」リスクは「死亡」リスクと経済的に同程度のダメージを受けることもあります。働けなくなった場合、国や会社から受けられる保障期間には限りがありますし、たとえ障害年金や生活保護を受けられたとしても、家計の深刻な収入ダウンは避けられず、ライフプランの大きな見直しを迫られます。
また、「介護費用」リスクは老後に必要な生活資金を不確実にし、不安にさせる最も大きな要因といえます。病気で一定期間だけ入院する場合と違い、いったん要介護状態になると殆どの場合はその状態が一生続きます。施設への転居など老後の住まいのお金にも関わる可能性があり、やはり、経済的ダメージとしては深刻です。

次に、保険等で保障・補償がカバーされているようで漏れている深刻なものが「損害賠償」リスクです。
日常生活においては、様々な過失で損害賠償責任を負う可能性があり、賠償額が億単位となる場合もあり得ます。ですが、宮本さんが準備できているのは、自動車事故に限定した自動車保険だけであり、例えば、自転車事故をはじめとする日常生活上で生じた賠償事故を補償してくれる保険に加入していません。賠償保険は火災保険等に特約で加入するもので保険料も安いので、まず最優先で検討してみてください。

なお、「資産損害」リスクについては、家財はカバーされていますがマイカーは補償されていません。自動車保険にセットする車両保険は保険料が高めなので、付けないままでもいいですが、一応必要かどうかの再確認はしてみてください。

保障・補償の必要度合いから優先順位を考えましょう

ここまでの手順で、しっかりとバランス状況を確認したら、あとは適切な保障・補償の金額や期間を踏まえての優先順位を考え、最後に、それにあった具体的な保険等を当てはめていけば良いだけです。

宮本さんの場合、「死亡」リスクについては一生保障が続き、必要に応じて老後資金に転用できる終身保険や、親の死亡保障も兼ねるこども保険に加入済みですが、最低限の保障額が足りていない可能性もあり得ます。
また、「老後」リスクについても、貯蓄や資産運用など保険等以外の準備方法を含めた検討も必要と思われます。ただし、どのくらいの保険金額が適切なのかは、もう少し家計の様々な金額や今後に希望されるライフプラン等を考慮しないとシミュレーションすることができないので、当コーナーの別のコラム
https://www.setsuyaku-lifeplan.com/life/ins/283/
等を参考に、保険ショップや金融機関等の窓口でプロの方に相談されてください。その際には、いくらまでなら保険料にまわせるのか、自分なりの目安を決めておくことが何より肝要です。

他の支出を見直せば保険料を捻出できるのなら良いのですが、将来に希望するライフプランを叶えるのに必要な、毎月の積立や貯蓄にまで手を付けることは、絶対に避けねばなりません。
ですが、捻出できる保険料の自分なりの目安が明確であれば、老後のための貯蓄をまず優先すべきか、保険等を検討するにしても、「死亡」リスクの保障を上乗せすべきか「就業不能」リスクを新たに加えるべきか、あるいは将来的なお子様の負担を減らすためにも「介護費用」リスクを優先すべきかといった、取捨選択の必要性に迫られている現状を、少なくとも把握することができます。
保険等は保険金額を落としたり必要な保険期間に限定したり、あるいは付加オプションを削ぎ落としていくことで、いくらでも保険料を抑えることができます。退職後は概ね継続できなくなる等の注意点もありますが、民間の生命保険や損害保険よりお勤め先で加入できる団体扱い保険が最も安く契約できる場合もあります。

死亡するのか、働くことが一切できなくなるのか、要介護状態になってしまうのか、自分にどんなリスクが訪れるのかを予め知ることはできません。なので、保障・補償はバランスよく備えておくことが大切です。その重要性に比べれば保険等の商品性を妥協するのは大きな問題ではないでしょう。初めに商品ありきでなく、保障・補償から検討すべきは、こうした理由からも理解頂けると思います。

なお、日常生活をとりまくリスクに対する備えの必要度合いや必要な額は、家族構成や働き方や資産の保有状況等によって異なり、またライフステージのどの位置にあるのかで優先順位も変化していくものです。
加入したらそれでおしまいではなく、適宜、見直していくことも大切です。


団体扱いの保険とネットの保険はどちらがお得なのでしょうか? また、自分に必要な保険の考え方も教えて下さい。
今の生活水準や保険の加入状況が適切なものか教えてください。
この春、社会人になりました。 どのような保険に加入すればよいですか?