団体扱いの保険とネットの保険はどちらがお得なのでしょうか? また、自分に必要な保険の考え方も教えて下さい。


団体扱いの保険とネットの保険はどちらがお得なのでしょうか?
また、自分に必要な保険の考え方も教えて下さい。

井上 信一先生 (いのうえ しんいち) プロフィール
  • 収入が減るリスクとして「死亡」と「長期就業不能」への備えが重要です
  • 支出が増えるリスクとして「損害賠償」「資産損害」「介護費用」への備えが重要です
  • 団体扱い保険に加入できるのは幸運です。短所にも考慮して積極的に選択しましょう

黒田 健吾さん(仮名 36歳 会社員)のご相談

当社では任意加入の様々な団体扱い保険を取り扱っており、年に1回、いま頃の時期に社員(組合員)に募集する機会を設けています。ちょうど自分も現在の生命保険の見直しをすべきか迷っていて良いタイミングでした。改めて見ると種類が多く、自分に適正な保険をどのように考えればよいのかわからず困っています。最近ではネットやショップ等でも割安な保険を選べるので、そもそも団体扱いの保険が有利であるのかどうかも悩んでいます。また、折しもこういった福利厚生を扱う部署へ異動する内示も受けており、恥ずかしながら相談させて頂きました。

黒田 健吾さん(仮名 36歳 会社員)のプロフィール

家族構成 : 夫(36歳 会社員)
妻(35歳、会社員)
長男(7歳)
住居形態 : 分譲マンション(夫婦共有名義、ローンも夫婦で各々負担)
その他 : 自動車は保有していない

<加入している生命保険>

被保険者 保険種類 保険金額、備考
終身保険 1,000万円
医療共済 日額1万円
終身保険 300万円
医療共済 日額1万円
長男 こども保険 300万円
火災保険 建物、家財、地震保険にも加入
その他の特約の付帯はなし
その他 団体信用生命保険 夫婦各々でローン残債分に加入

商品からではなくその保障(補償)の必要性から検討しましょう。
想定するリスクに対する備えの過不足を解消するものが必用な保険です。

黒田様、こんにちは。
保険は身近な存在のようで、種類も多く複雑なのでわかりにくいですね。
自分にとって必要な保険を選ぶための最初のステップであり、一番大切な考え方の部分について今回はご回答致します。

万一の時の経済的ダメージと準備済みの保障(補償)を整理しましょう

貯蓄や投資は、家族に突発的な事態が起こらないことを前提に、将来の予定や目的のために計画的に行うものです。一方、予期せぬ事態が起こり経済的に大きなダメージを受けてしまっても、当初の計画が台無しにならないよう準備しておくのが保険です。
では、予期せぬ経済的なダメージとは何でしょう?大きく2つに分けられます。

まず1つは、収入が予期せず途絶または減少してしまう事態です。
来月も来年も、収入を得られるからこそ、日常の生活や貯蓄ができます。たとえ確率は低くとも、もしそれが起こってしまったら生活が根底から覆されてしまうようなダメージの大きい事態は以下の2つでしょう。

  • 生計者の死亡
  • 生計者の長期就業不能

そしてもう1つは、予定外の大きな出費を被る事態です。
少々の出費なら家計の修正は可能ですが、人生を棒に振るほどの大きな規模にもなると、やはり当初予定した生活は台無しになってしまいます。主に以下が深刻といえます。

  • 家族の誰かが負う損害賠償責任
  • 高価な資産(例えば住宅)の損害による修理や買い替え

また、老後に介護が必要ともなると、介護費用の他にも介護のための住宅のリフォームや、場合によっては介護施設などへの住み替えが必要になる場合もあります。介護費用も無視できない出費といえます。

さて、これらの事態に対しては様々な国の公的保障や会社の上乗せ保障で守られています。ですが、家族構成や年代等によって、それだけでは十分でない場合もあり得ます。不足する領域を、不足する分だけ自分で準備するのが生命保険や損害保険です。

逆に考えれば、既に準備が充分な領域はさらに保険を増額する必要はありません。むしろ過剰な分を減らしてでも、別の領域をカバーすることが大切です。それが、「自分にとって必要な保険を考える」ことなのです。

以下の図はこの考え方を簡単に表したものです。
一般的な項目や主だった項目をピックアップしていますが参考にはなるでしょう。

特に注意したい事態 国の保障 会社の保障 保険
福利厚生 団体扱い保険
収 入 の 減 少 死亡 子供の養育中の遺族の生活 老後に遺す配偶者の生活 遺族年金 (労災) 死亡退職金 弔慰金 グループ保険 死亡共済 終身保険 定期保険
就業不能 ケガや病気等で長期間に渡り 働けず無収入になる事態 障害年金 健康保険 有給休暇 休務扶助 団体長期所得 補償保険 長期所得補償保険
老後 年金制度の大幅な縮小改正 老齢年金 退職金 企業年金 個人年金保険 個人年金共済 個人年金保険 変額年金保険
失業 雇用保険
支 出 の 増 加 損害賠償 自動車だけでなく 日常生活の事故での高額賠償 自動車共済 自動車保険 個人賠償責任保険
資産損害 高額な資産(特に家)の 修繕や買い替え (税制優遇) 各種手当 火災共済 車両共済 火災・家財保険 車両保険
介護費用 介護リフォームや介護施設への 住み替え 介護保険 (労災) 介護保険 介護共済 介護保険
医療費用 入院や在宅で治療が長期化 する可能性のあるがん、脳卒中 健康保険 (労災) 上乗せ手当 医療保険 医療共済 医療保険 がん保険

不足していると思われる保障(補償)に注目しましょう

各領域において具体的に必要な保障(補償)額を試算するためには、公的年金制度の加入履歴や会社の福利厚生制度を把握する必要があります。そして、家計の収支状況と資産状況、さらには将来のご家族の予定や希望などを踏まえたキャッシュフロー表を作成しなければ、長期的視野での必要額を掴むことはできません

ですが、黒田様から頂いた情報だけでもおおよそのポイントはわかります。

1.死亡保障について

  • お子様がまだ7歳なので、養育期間中の遺族保障としてはやや少なさそうです
  • 夫婦共有で住宅ローンを組んでおり各々で団体信用生命に加入しています。ですが、夫が亡くなった際に完済されるのは夫名義のローンだけで妻名義分は残ります。夫死亡時に妻のローンも精算できるよう、妻のローン残債相当を、夫を被保険者とする定期保険等で上乗せしてはいかがでしょうか(逆に夫のローン残高分を妻の保険に上乗せすれば、夫婦のどちらか亡くなっても全てのローンが完済できます)。
  • 現在加入の終身保険は減額や解約は避けたいところです。よく、老後の死亡保障は葬儀代程度あれば充分との声も聞きますが、その考え方は極めて危険です。
    老後は基本的に貯蓄を取り崩していく生活となりますが、医療費や介護費の出費で予期せず貯蓄を大きく減らし続ける可能性もあります。その際に最後の力強い味方となるのが保険です。万一、不要になれば、保険料の払込満了後ならいつ解約しても払った保険料総額以上の解約返戻金を得られるので、老後の余暇資金として使っても良いでしょう。

2.就業不能補償について

  • 家計にとって生計者の死亡と同じかそれ以上に深刻な状態となるのが、生計者の長期就業不能です。健康保険では収入喪失分を補てんしてくれる期間は1年半だけ。一方、障害年金は長期でもらえるものの、その額は従前の年収のおよそ1/3~1/6と僅かです。
    そこで、所得補償保険の加入をお勧めします。この保険は就業不能となった事故発生前の月収の6割程度を上限に月の保険金額として設定できますが、働けない状態が続く限り最長では60歳~65歳まで補償してくれます。非常に大切な補償なのですが、まだ一般的にはあまり知られていない保険で、会社が団体扱いの長期所得補償保険を扱っているのは幸運です。是非ともご検討下さい。

3.損害賠償補償について

  • 自動車事故以外でも、他人に損害を与えて高額の損害賠償責任を負う可能性は、誰にでもあり得ます。例えば、2008年に自転車に乗っていた11歳の児童が62歳の女性を跳ねて昏睡状態にさせた事故について、その母親に対し約9,500万円の損害賠償金の支払いを命じた判例もありました。
    個人賠償責任保険特約は、1億円の保険金額を年間僅か2,000円以下の保険料で準備することができます。まだ未加入のようですので、火災保険に特約として付けることを強くお勧めします。

団体扱い保険のメリットとデメリット

不足する保障(補償)の種類とその金額がわかれば、あとはそれに対応する保険商品を選べば良いだけです。任意加入の団体扱い保険とは、一般的には会社の労働組合や共済会等が斡旋する保険です。最後に、一般的な個人加入の保険と比べたメリットとデメリットを考えてみましょう。

【メリット】

その団体(会社)に固有の規模の経済が働き、保険料が割安になるのが一番の長所です。
例えば、代表的な「グループ保険」は、単なる1年更新の定期保険(死亡保険)ですが、その団体内で年間の保険金支払いが少なければ保険料の一部が割り戻されます。経験上、これを踏まえた実質保険料ベースで考えると、概ね30歳代以後の方なら、割安さを謳うネット生保も含め、どの保険会社でも太刀打ちできない安さになると思われます。
※グループ保険は年齢に関わらず保険料が一律のものが多いため他に、同じ保険でも、個人で契約するより割安になる場合もありますので比較しても良いでしょう。

また、前述した「長期所得補償保険」のように、個人では一般的には加入できないような保険がラインアップされているのも見逃せないところです。団体扱い保険だけのプレミアムな商品を選ぶことができるのです。

さらに、告知書のみで加入できる手軽さ、増減額などの保険契約の見直しの容易さ、営業的な思惑が働かないので、専門知識を有する社内または社外の専門家等による相談窓口を設けている場合は、中立公平な情報を得られることもメリットです。

【デメリット】

反面、出資金等を負担すれば継続できる一部例外を除き、多くの場合、その会社に在職中しか加入できないので、退職の際には保険を解約しなければならない場合が多いのが最大の短所です。よって、退職後も保険を継続できるのか否かを入念に調べておく必要があります。

また、保険を熟知したプロが対応してくれるとは限らないので、知りたい情報を得ることができない可能性もあります。この点にも留意しておくと良いでしょう。

お子様の養育中に必要な大きな死亡保障も、就業不能補償も、基本的には働く間に必要となるものです。団体扱い保険は、その団体(会社)で働く間、働く方に特に必要となる保障(補償)に特化して、しかも加入しやすいように配慮されている保険といえます。
このメリットを存分に享受されてはいかがでしょうか。

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