第10回:景気について【子供に話すお金の話】


私たちはふだん、「景気がいい」とか「景気がわるい」という言葉をよく耳にします。テレビのニュースで「日本の景気は・・・」と堅苦しく言うこともありますし、会社やお店で「景気はどう?」とあいさつ代わりに使っている人もいます。それから、飲み会に行って「今日は景気よく行こう!」とパーッと盛り上がるときにも使います。「景気がいい」とはどういうことなのでしょうか?

「景気がいい」ときは、世の中の人がたくさんお金を使います

「景気がいい」様子を、身近な例で考えてみましょう。

私たちは、買い物をたくさんしている人を見て「○○さんは景気がいいね!」と言ったり、もうかっている会社やお店があると「あの会社(あのお店)は景気がいい」と表現します。また、新しいビルがどんどん建ったり、海外旅行に行く人が増えたり、デパートが混んでいる様子を見ると、なんとなく「景気がいいな」と感じることができるのではないでしょうか?

経済の教科書をひらくと、景気とは「経済活動の状況」と表現されていますが、景気がいいときは、お金や、仕事の動きが活発になります。つまり、世の中全体がお金をたくさん使っていて元気な様子のときが、景気がいいときなのです。

たとえば、会社は新しい工場をつくったり、お店をふやしたり、新製品を開発するための大がかりな研究をしたりします。働いているお父さんやお母さんの仕事も忙しくなって、残業が増えることもあります。たくさん働くと、お給料や残業代も増えるので、買い物をしたり、食事や旅行でお金を使うことが多くなります。景気がよくなって、みんなが活発に仕事をしたり、お金を使ったりすると、経済が活気付いてなんだか楽しい気分になります。飲み会で「今日は景気よく行こう!」というときは、「思い切り飲んだり食べたりしよう!」ということを表しますが、お金のことだけでなく、「明るくワイワイ楽しくやろう!」という気持ちもこめられているのです。

景気がいいときと悪いときは交代でやってきます

「景気がいい」のとは反対に、「景気が悪い」というのはどういうときでしょうか?

しょぼんとしている人に、「なんだ、景気が悪いな」ということもありますが、なんとなく元気がないイメージがあります。景気が悪いときは、お店で品物が売れなくなったり、会社もお客さんから注文が少なくなったり、新しい事業を始めるのをひかえたりして仕事が減ってしまいます。そうすると売り上げが落ちるので、従業員のボーナスが減ったりして、みんなお金を使うのをためらうようになってしまいます。景気が悪いときは経済の動きが活発でない状態になってしまうのです。ずっと景気がいいほうがうれしい気がしますが、これまでの動きを見てみると、景気がいいときと悪いときは、次の図のように順番にやってきています。

生命保険の加入率推移

会社が商品をつくる量を調節することで、景気の波が変化します

では、どうして景気がよくなったり、悪くなったりする波ができるのでしょうか?これにはたくさんの原因がからみあっていますが、その一つとして「会社が商品をつくる量」があげられます。ゲーム機をつくる会社の例で考えてみましょう。

(1)景気がよくなると経済に元気が出てくるので、ゲーム機の会社も「これからもっと商品が売れるぞ!」と考えます。 そして商品をたくさんつくるために、機械をたくさん買ったり、工場を増やして従業員をたくさん雇います

(2)でも、どんなによい商品でも、いつまでも売れ続けるわけではありません。商品の売れ行きがにぶくなって、買ってくれる人がだんだん少なくなってしまいます。するとだんだん売れない商品があふれてくるので、会社は商品をつくる量を減らし始めます。

(3)商品をつくる量を減らしたので、会社の仕事が少なくなって、会社にはお金が入ってこなくなり、商品の売れ残りがたくさん出てしまいます。すると会社は従業員(パート社員や、正社員)の数を減らしはじめ、従業員の給料や残業代も減ったり、なかには職を失う人もでてきます。

(4)職を失ったり、お給料が減ったりして、世の中全体で、商品を買う力が弱ってしまいます。

(5)会社はつくる商品の量を減らすと、そのうちに、売れ残りの商品も含めてつくった分はなんとか売れるようになります。

(6)商品がそこそこ売れるようになったので、また新たに従業員を雇うようになります。 すると「仕事がない」という人が減ってくるので、世の中全体で、商品を買う力が出てきます。

(7)やがて商品がどんどん売れるようになります→ここでまた(1)にもどります

このような流れで、「会社が商品をつくる量」と、「商品を欲しいな、と思う人たちの量」との関係が変化していく波がくりかえし起こることによって、景気がよくなったり、悪くなったりします。このことを景気循環と言います。

そのほかにも、会社が工場や機械、お店をつくったりする活動の変化や、みなさんひとりひとりが買い物をたくさんしたりする行動の変化なども、景気が循環する原因になっています。政府や日本銀行は、景気がよすぎたり、悪くなりすぎたりしないように、常に気を配っていろいろな対策を考えています。

景気のよしあしをはかるモノサシは

ところで、「景気がいい」とか「景気が悪い」というのは、誰がいつ決めるのでしょう?

景気のよしあしを判断する代表的なものとして、「GDP成長率」があります。
これは、3ヶ月に一度、内閣府が発表している指標です。
GDPは国内総生産と言いますが、「国内で、品物やサービスなどの価値がどれくらいつくりだされたか」を数字で示したもので、国全体の経済の規模がどれくらいなのか、去年と比べて大きくなったのかどうかを見る基準になっています。
このGDPの成長が年々大きくなっている状態だと、「景気はいい」と考えられます。

実際にどういうものがGDPとして計算されるのでしょうか。
りんごを生産する農家のAさん、りんごを使ってりんごパイをつくる料理人のBさん、お客様のCさんの3人がいたとします。
Aさんはりんごを生産して、料理人のBさんに100円で売ります。
Bさんは100円で買ったりんごを使ってりんごパイを作り、150円でCさんに売りました。
つまり、Aさんの100円のりんごが、Bさんによって150円のものに変わったのです。
AさんとBさんの2人の活動によって、「りんごパイ」という価値あるものが生み出されたわけですが、2人が生み出した価値の合計は、

AさんがBさんに売ったりんごの値段(100円)
+
Bさんがりんごパイを売った値段から、りんご(材料費)を引いた値段(150円-100円)

で、150円になり、この数字がGDPの計算に入れられることになります。
また、りんごパイを買って食べるCさんが払うお金は150円ですが、この金額は、AさんとBさんが生み出した価値の合計と同じ金額になります。したがって、もしCさんが「このりんごパイはおいしい!200円払ってもいいぞ」と、200円で買ったとしたら、AさんとBさんによって生み出された価値の合計は200円になります。
国内全体で考えると、AさんやBさんのように物やサービスなど、価値を生み出している人たちがもっと大勢いるので、それらの金額を1年間分すべて合計したものがGDPの数値となります。そして、「もっと多くのりんごパイ(=価値)がつくられ、それをお客さんがどんどん買う」というような動きが国全体で活発になってくると、GDPの伸びが大きくなり、景気がいい状態になっていくのです。
景気がいいかどうか判断する「モノサシ」は、ほかにもたくさんあり、いくつかの数値を組み合わせて総合的に見ることが大切です。これらを分析した専門家は、2007年11月末現在のところ「景気のいい状態が続いている」と考えているようですが、なかには「景気がいいなんて、実感できない」と首をかしげる人もいます。「会社やお店を経営している人や、買い物をするみなさんひとりひとりが実際にどう感じているか」というのがいちばん実態を表しているとも言われています。数字で見ると景気はよくなっているはずなのに、実感がともなわないのは、将来もらう年金が減ったり、税金が増えるなどの不安があるせいかもしれません。「本当に景気がいい」とみんなに感じてもらうためには、将来も安心して暮らせる見通しができることも必要だと言えるでしょう。

執筆:福島 由恵(ふくしま よしえ)CFP
証券会社勤務の後、フリーライターとして独立。一級ファイナンシャル・プランニング技能士およびCFP®資格を取得し、マネー関係を中心とした記事の執筆を行う。2008年より、日本FP協会「くらしとお金の相談室」相談員を務めるなど、ライフプラン・資産運用に関する個別相談・セミナー講師としても活動中。

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