この数年、障害年金の請求が増えています。障害年金の請求は誰でもできますが、請求しても必ず受給できるとは限りません。受給には、保険料の納付状況や年金請求者が加入していた年金、障害の程度など一定の要件を満たすことが必要だからです。そこで受給できない人などの不服申し立て数も以下のように増えています。今回は、障害年金の請求に欠かせない知識「保険料納付要件」についてお話しします。
受給資格期間
公的年金の受給には、原則公的年金に25年以上の加入が必要です。但し、これは老後の年金(老齢年金)のお話しです。障害(遺族)年金は、直近1年間のみの加入で受給できることもあります。いわゆる、「保険料納付要件」を満たせば受給できます。老齢と障害(遺族)年金で受給資格期間が違うこと覚えておきましょう。
保険料納付要件
保険料納付要件は、初診日(初めて医者の診察を受けた日)の前日の保険料の納付状況を次の2つで判断します。
①20歳以上(20歳前に被保険者期間がある人はそのときから)から初診日の前々月までの間、保険料納付済期間+保険料免除期間など※の合計が、3分の2以上ある。
②初診日の前々月までの1年間に未納期間がない。
この①もしくは②のどちらかを満たしている必要があります。
保険料納付済期間+保険料免除期間など※とは?
たくさん保険料を納付した人とあまり納付していない人が障害の状況になった場合、同じ年金額の受給では不公平になります。そこで一定の保険料の納付が条件になります。保険料免除期間など※には、保険料免除期間、学生納付特例期間、若年者猶予期間も含みます。但し、平成3年3月31日以前の20歳以上の学生期間は任意加入期間なので、月数の計算は要注意です。事例でお話しましょう。
事例1 厚生年金加入中~ 2/3以上の保険料納付要件を満たしているので受給できる
厚生年金加入中に初診日があるので、障害等級1級又は2級に該当すると、障害厚
生年金と障害基礎年金、障害等級3級に該当すると障害厚生年金を受給できます。
事例2 国民年金 ~ 直近1年間に未納期間がないので受給できる。
国民年金加入中に初診日があるので、障害等級1級または2級に該当すると障害基礎年金を受給できます。
事例3 国民年金・未納中 ~2/3以上の保険料納付要件を満たしているので受給できる
国民年金加入中に初診日があるので、障害等級1級または2級に該当すると障害基礎年金を受給できます。
<重要だよ>
平成3年3月までの学生期間は任意加入。
任意加入中に未加入ならカラ期間となり、老齢年金の受給資格期間に含めるが、
障害年金の保険料納付要件を判断するとき、この期間は分母と分子に含めず計算するよ。
事例4 国民年金・未納中 ~ 2/3以上の保険料納付要件を満たしていないので受給できない
学生時代のカラ期間は優れもの
事例3と事例4を較べても分かるように、平成3年3月以前の学生時代のカラ期間は老齢でも障害年金でも優れものです。遺族年金は初診日を死亡日に置き換えて考えます。
なお、初診日のあとに年金の保険料を納付しても年金事務所に納付日が記録されているので納付済期間などの判断期間にはなりません。
障害年金額はかなり高額です。年金も家計の備えもことが起きる前から着々と準備が基本ですね。激動の今だからこそ、長生きと万が一に備え、日ごろからコツコツ備えるが一番かもしれません。
執筆:音川敏枝(ファイナンシャルプランナー)CFP®
ファイナンシャルプランナー(CFP)、社会保険労務士、DCアドバイザー、社会福祉士。
仲間8名で女性の視点からのライフプランテキスト作成後、FPとして独立。金融機関や行政・企業等で、女性の視点からのライフプランセミナーや年金セミナー、お金に関する個人相談、成年後見制度の相談を実施。日経新聞にコラム「社会保障ミステリー」、読売新聞に「音川敏枝の家計塾」を連載。 主な著書に、『離婚でソンをしないための女のお金BOOK』(主婦と生活社)、『年金計算トレーニングBOOK』(ビジネス教育出版社)、『女性のみなさまお待たせしました できるゾ離婚 やるゾ年金分割』(日本法令)。
HP: http://cyottoiwasete.jp/