第68回:子どもの進路と教育費、公立と私立でどれだけ違うの?


景気低迷や金融不安など、私たちの生活を取り巻く経済環境が厳しさを増す中、家計が苦しくても子どもの「教育費」だけは何とか確保したいという声を多くお聞きします。

教育費は、子どもが生まれてから大学卒業まで一般に1,000万円以上もかかると言われ、いざ入学や進学という時期になって準備しても、間に合わない場合もあります。また、積立貯蓄や子ども保険などで早くから備えていたはずなのに、実際にかかる費用を賄いきれなかったり、せっかく進学したのに、授業料滞納などで退学を余儀なくされたりするケースもあります。

今回は、子どもの進路によって教育費がどれくらいかかるのかを把握し、将来の教育費の準備について考えて見ましょう。

幼稚園から大学までオール私立なら2,000万円超

まずは、幼稚園から大学まで、公立と私立による教育費の違いをデータで見てみましょう。

進路 幼稚園 小学校 中学校 高等学校 合計
公立 73万円 200万円 141万円 156万円 約570万円
私立 161万円 824万円 380万円 313万円 約1,678万円

※文部科学省「平成18年度 子どもの学習費調査」より
※学習費総額には、授業料・学校納付金・給食費などの学校教育費のほか、学校外活動費(塾費用など)を含む

<表2:大学の初年度納入金(昼間部)>

進路 授業料 入学料 施設設備費 合計
国立大学 53.6万円 28.2万円 81.8万円
私立大学(文科系学部) 71.8万円 25.8万円 16万円 113.6万円
私立大学(理科系学部) 100.3万円 27.2万円 19.4万円 147.0万円
私立大学(医歯系学部) 303.4万円 98.1万円 105.8万円 507.3万円

※国立大学:平成20年度標準額
※私立大学:文部科学省「平成19年度 私立大学入学者に係る初年度学生納付金平均額」より

上記の表1は幼稚園から高校まで、表2は大学でかかる教育費についてまとめたものです。この2つの表から計算してみると、仮に高校まですべて私立で、大学も私立だった場合、教育費の総額は2,000万円超となります。一方、高校まで全て公立で、大学は国立だった場合、教育費の総額は800万円超となります。これより、子どもの進路の選び方によって、公立と私立で教育費は1,000万円以上も違ってくることが分かります。

なお、子どもの進路については、「我が家はオール公立で」「中学からは私立に」等、親が皮算用していても、お子様本人の希望で進路が大きく変わることもあります。また、入試による選抜で残念ながら思い通りの進学ができないこともあります。そのため、進路変更した場合にも柔軟に対応できるよう、余裕を持って教育資金の計画は立てておきたいものです。

私立中学に進学したら、3年間で約380万円

最近は、お子様の私立中学への進学希望が増えている中、進路選びが本格化してくる中学校以降の教育費について見てみましょう。一般に、私立中学への進学割合については、地域によって大きく異なりますが、特に首都圏と関西圏では全国平均より高くなっています。

<表3:学習費の総額~平成18年度の年間額(中学校)>

項目 公立 私立
年間の学習費の総額 47.2万円
(3年間で約141万円)
126.9万円

(3年間で約380万円)

学校教育費 13.3万円 95.8万円
 

授業料

41万円

修学旅行・遠足・見学費

2.5万円

6.5万円

学校納付金等

1.6万円

25万円

図書・学用品・実習材料費等

2.5万円

3.9万円

教科外活動費

2.6万円

4.9万円

通学関係費

3.7万円

13.6万円

その他

0.4万円

0.7万円

学校給食費 3.7万円 0.7万円
学校外活動費 30.2万円 30.4万円
 

補助学習費

23.6万円

19.4万円

その他

6.6万円

11万円

※文部科学省「平成18年度 子どもの学習費調査」より

上記の表3から、お子様が公立中学に通う場合、中学校までは義務教育で授業料はかからないため、学校教育費は年間で約13万円とそれほど多額ではありません。しかし、小学校と大きく差が出るのは「学校外教育費(塾の費用)」です。高校受験を控え、塾に通う子は多く、データでは年間で約24万円の費用がかかり、学習費の総額は3年間で141万円程度となります。

一方、お子様が私立中学に通う場合、公立と違って授業料がかかり、さらに入学金などの学校納付金の負担も大きくなります。また、私立であれば通学距離が長く、電車代やバス代もかさむようです。これより、学習費の総額は3年間で380万円程度となり、トータルでは公立の場合の2.5倍以上かかる覚悟が必要です。

公立高校でも、学校教育費は3年で約100万円

お子様の高校進学については、公立中学から公立高校、または公立中学から私立高校というパターンが一般的です。高校受験では、公立を第1志望にした場合でも、私立を併願して滑り止めにするケースも多く、親としては公立に進んでほしいと思っても、残念ながら私立ということもよくあります。そのため、高校の教育費に関しては、私立進学のケースも予め考慮しておく必要があるでしょう。

<表4:学習費の総額~平成18年度の年間額(高等学校・全日制)>

項目 公立 私立
年間の学習費の総額 52.1万円 104.5万円
  学校教育費

34.4万円

78.5万円

学校外活動費

17.7万円

26.0万円

※文部科学省「平成18年度 子どもの学習費調査」より

上記の表4から、高校の場合、公立でも授業料はかかるので、学校教育費は3年で100万円程度かかります。一方、私立の場合は授業料や学校納付金等がかさむため、公立に比べて学校教育費で2倍以上かかります。また、補助学習費(塾代)などの学校外活動費は、私立の場合のほうが高額になっています。さらに、大学等への進学をする場合は、公立・私立を問わず、受験費用も予め考慮しておく必要があります。

<表5:大学の受験から入学までの費用(通学別)>

費用の内訳 自宅外通学 自宅通学
受験費用 231,900円 191,000円
家賃 59,200円  
敷金・礼金 208,500円  
生活用品費 320,500円  
初年度納付金 1,298,726円 1,298,726円
合計 2,118,826円 1,489,726円

※各種費用は、東京私大教連「私立大学新入生の家計負担調査2007年度」より
※初年度納付金は、文科省「平成19年度私立大学入学者に係る初年度学生納付金平均額(定員1人当たり)」より

大学は、自宅か自宅外かで、親の負担に大きな差

お子様の大学進学については、私立大学に進学した場合、文系・理系・医歯系・芸術系など学部の選び方によって学費は結構違ってきます。さらに、自宅通学か、自宅外(寮・下宿)かによっても、親の負担の差は大きくなります。実際、地域によっては、「地元の大学への進学」という選択肢がなく、大学進学=自宅外となる場合も多いものです。大学進学資金は、学費だけでなく、仕送り分も考慮して準備する必要があります。また、家計の状況によっては、奨学金の検討なども予めしてみるのもよいかと思います。

<表6:居住形態別学生生活費(大学・昼間部)>

進路 自宅 下宿・アパート、その他
国立 1,045,100円 1,769,000円
公立 1,063,200円 1,635,600円
私立 1,717,900円 2,467,200円
平均 1,619,100円 2,234,500円

※日本学生支援機構「平成18年度 学生生活調査」より

教育費の準備は、早く始めた方が効果的!

このように教育費は金額も大きく、家計を圧迫する一つの原因になることもあります。しかしながら、教育費は進学時期がお子様の年齢によって事前に決まっていること、データで出費のおおよその目安がつけられることから、中長期で計画的に準備をすれば十分に対応できます。実際に、将来の教育費のために月々積み立てられる金額は多くなくても、長期間運用できれば、まとまった金額を準備することが可能になるのです。

<表7:毎月3万円を積み立てた場合(税金や手数料は考慮せず)>

期間 投資元本 1% 3% 5%
5年 180万円 184.5万円 193.9万円 204万円
10年 360万円 378.5万円 419.2万円 465.8万円
15年 540万円 582.3万円 681万円 801.8万円

上記の表7は、毎月3万円を積み立てた場合の例です。たとえば、1%で運用した場合、5年後には184.5万円しか貯められませんが、15年後なら582.3万円になります。また、運用期間が長ければ、値動きのリスクはあるものの、ハイリターンが期待できる投資信託などの金融商品で一部を運用することも可能でしょう。逆に、教育費の必要時期が迫り、運用期間が短ければ、安全性を重視して預金などの金融商品でしか運用せざるを得ず、教育資金を効率的に準備することは難しくなります。

親心としては、できれば教育資金の不安なく、子どもの望む進路に進ませてやりたいものです。そのためには、教育費の準備を早く始めるほど、お子様の将来の進路の選択肢を増やすことができると共に、教育費で将来的に家計が圧迫されることを未然に防ぐこともできます。

今回ご紹介した教育費の数値は、あくまで平均的なデータですので、実際にどれくらいかかるかは、志望する学校や塾等の教育機関の各種データをしっかりとご確認ください。また、データの数値は一部四捨五入しており、各数値と合計額にズレがある部分もありますのでご了承ください。

2008年12月
大林香世(CFP®)