最近話題になっているNISAに興味があります。どんな商品を選べば良いのか教えてください。


今回、回答いただく先生は…
井上 信一先生(いのうえ しんいち) プロフィール
  • 何に投資するのかはとても大切な視点なので自分で考えられるようにしましょう
  • NISAに限らず資産運用では「目的」と「スタンス」を明確にしましょう
  • 運用に係るコスト等にも留意しつつ、興味を持てるものに投資する姿勢が大切です

  堀口 真由さん(25歳 仮名)のご相談

貯蓄も少しずつ貯まってきましたが、資産は全部、普通預金に預けているので勿体ないと思っています。最近参加したセミナーでNISAを知り、制度が新しくなることも聞いてとても関心を持ちました。ですが、これまで投資や運用をしたことがないので、そもそも何を買えば良いのかわかりません。
こんな全くの初心者ですが、アドバイスをお願いします。

堀口 真由さん(仮名)のプロフィール

家族構成 収入 金融資産等
本人(25歳) 会社員 年収308万円 現金・預貯金:260万円
有価証券  :なし

NISAに限らず、資産運用において最も大切なのは、「売却してひとつの運用行為が完結する」ことです。その時に自分で納得できるような商品を選びましょう

堀口さん、ご相談ありがとうございます。2024年からの新しいNISAでは、これまで指摘されてきた課題や制約が改善され、制度もシンプルになるので自由度が増しました。資産運用の良いスタートが切れそうですね。
何に投資するのかは、NISAに関わらず資産運用全般においても大切な視点です。これを自分で考えることができるよう、少しずつでも経験を積んでいきましょう。

運用目的から候補を選ぶ

資産運用とは、結局のところ、「買った値段よりも高く売れば成功」。つまり、ただ買って保有しているだけでは運用行為は完結せず、それを資金化して初めてひとつの行為が完結します。堀口さんは何のために資産運用を行いたいのでしょうか?何にお金を使うために資産運用を行うのでしょうか?まだお若いですが、老後資金のためですか?いつか資産家になってFIRE(Financial Independence-経済的自立、Retire Early-早期退職)を目指したいからですか?それとも、今は使いみちがないけれど、何か欲しいものができた時に買える値段の幅を増やしたいからですか?

何のために資産運用を行うのか、その目的を明確にしておくことは何よりも重要です。この目的次第で、「運用する・または運用可能な期間」と、「運用に必要・または運用可能な資金」が決まっていくからです。「運用目的を明確に持つ」ということは、「運用で得たお金を何に使うのか」、売却して資金化する時のイメージを強く持つということなのです。

新しいNISAでは、NISA口座を開設できる期間が恒久化されます。また、投資した商品が値上がりした場合の売却益や受け取る配当金・分配金への非課税期間も無期限化されました。投資期間も保有期間も無期限ですから、その「遠い先のいつか」のために利用することは可能です。買った商品が値上がりする時までいつまでも待ち続けることができるのですから。しかし、ごく日常的なことでも、先の予測をするのは難しいもの。それがずっと遠い将来のことともなると、予測するのはほぼ不可能でしょう。
長期投資になればなるほど将来の価格変動リスクは高くなります。長期で持ち続けることが前提の資産を選ぶのは、実はとてもハイレベルな行為。余程の奇跡か運がない限り、たとえ金融のプロが周到に情報を集め分析しても、思惑通りの成果が得られる保証はありません。保有可能な期間の制約がなくなるので利便性が高まる印象を受けますが、実は制約のない自由な状態とは、裏返して考えると期待とは異なる方向へ流されやすくなる、ということでもあるのです。

ですから、まずは、数年先に買いたいものや使いたいものを資産運用の目的にすることを、私はいつもお勧めしています。これなら少額資金での投資で済みますし、使いたい時期が明確なので、ひとつの投資行為を完結しやすくなります。ただ、モノの購入の場合は運用成果の良し悪しが形になって残るので、目的の設定としては旅行やレジャー・プチ豪勢な外食など形に残らないモノがお勧めです。旅行やレジャー等であれば、仮に運用に失敗しプランがグレードダウンしたとしても、使ってしまえばそれなりに有意義な思い出は残るもの。また次の投資で頑張れば良いのです。

最初は少額の資金で比較的短期運用の投資先で経験を積んでいくことからスタートしましょう。こうしたダメージの少ない少額投資であれば、その時々で興味をひいた投資候補、例えば、日頃関心のあるサービスや商品を扱う日本や欧米企業の個別株式や、日本・欧米・先進国等の株式指数・金や原油やレアメタル等の各種コモディティ・不動産に連動する投資信託など、その時々の直感やひらめき重視で自由に選んで良いと思います。コロナも落ち着いてきたことですし、次に旅行に行きたい国の企業やその株式指数などに投資してみるのも良いのではないでしょうか。
新NISAで併用利用できる2つの枠のうち、個別株式は「成長投資枠」しか投資対象となっていないため、こちらの枠を使うことになりますが、投資信託は両方の枠で投資対象となるものもあるので、「つみたて投資枠」で一定期間の毎月自動積立を行っても構わないと思います。「つみたて投資枠=長期積立」という固定観念は、いっそ捨ててしまっても良いでしょう。

運用スタンスから候補を選ぶ

運用候補選びは、運用スタンスから絞り込んでいく方法もあります。運用スタンスとは、ざっくりと、「buy & sell(買いと売りを繰り返す波乗り型)」と、「buy & hold(買って保有して利益を得る型)」に分けられます。商品選びや投資後の値動きのチェックなど、ご自身が資産運用に費やせる時間や手間などに応じて、おのずとその選択は絞られてきます。

資産運用は「高くなったら売る=buy & sell」が前提であり、ごく短期スパンでの「buy & sell」を繰り返すことは、NISAにおいても有効なスタイルといえます。ですが、各種チャートなどをチェックし売買を繰り返すのは、お勤めのある会社員の方にはハードルが高いもの。日常的に運用環境に目を配れないのであれば、「とりあえずbuy & hold」のスタンスに軸を置き、値上がりした際に「sell」するか、もう少し「hold」するかを選ぶスタンスに落ち着くでしょう。

ここでポイントとなるのは、「hold」した商品が値下がりしたとしても、運用の果実(=収益)を着実に得られるようにする工夫。有力候補となるのが、「ただ持っているだけで定期的に利益を得られる」インカムゲイン投資で、配当金の高い個別株式や、一部となりますが分配金の高い投資信託を選ぶことです。後述する留意点も押さえたうえで、NISA口座を開設する証券会社で、「配当利回り」の高い個別株式をスクリーニングしたり、NISAの対象商品の中から高分配の投資信託を検索したりすれば、容易に候補は見つかる筈です。

資産運用における留意点も考慮して候補を選ぶ

NISAに限らず、資産運用においては留意すべき盲点もあります。

まず1つめに保有コストがかかる商品があること。新しいNISAでは売却益や配当金・分配金にかかる税金が非課税となる措置が無期限となります。ゆえに、買った後に持ち続ける期間が長期に渡る可能性も考えられます。NISAにおいては、予め保有コストの高額な商品は対象から外されてはいますが、基本的に投資信託商品では運用管理費用(信託報酬)のように、保有中に自動的に資産から差し引かれる手数料が存在します。
一部証券会社の商品では、購入や売却の際に一定の手数料のかかるものもありますが、売買時にかかるだけなのでそれほど大きなストレスにはなりません。ですが、保有コストは着々と運用残高から溶けていくものなので注意が必要です。どの程度のコストがかかるのかは、必ず年率換算での手数料率が投資信託ごとに開示されているので、似たような投資信託で迷ったときには「年率〇%」のパーセンテージの数字の低いものを選ぶのが良いでしょう。

2つめに、投資に回せる資金をきちんと管理すること。言うまでもなく、NISAでは一般的な投資とは異なり、損しても税制上のフォローがありません。
資産運用におけるリスク低減策に「分散投資」という考えがあります。投資時期や換金時期を分散し、一度に多額の投資をせず少額ずつ小分けに投資することです。ですが投資商品、特に日本の個別株式においては、購入可能な一単元が高額になるものもあります。どんなに魅力ある企業や銘柄であっても、許容限度を超える投資には慎重になるべきです。
NISAでは投資できる限度額が決められており、非課税口座として保有できる限度額は買値ベースで1,800万円。これを「つみたて投資枠」での年間投資可能額120万円で計算すると、わずか15年でその枠は埋まってしまいます。個別株式等も対象となる「成長投資枠」では年間240万円まで投資可能ですが、この枠での非課税口座保有限度は1,200万円なので、5年でその枠が埋まる計算です(残り600万円は「つみたて投資枠」で利用可能)。新しいNISAでは、購入した商品を売却すれば購入可能な枠が復活できるようになりましたが、年間投資可能額一杯まで無理をして利用する必要はありません。NISAは現在のところ恒久制度ですので、焦らず、少しずつ行っていけば良いのです。

最後の3つめの留意点として、資産運用を始めたからには、その投資先の情報をキャッチすること
NISAでは、短期的な倒産・上場廃止リスクが高いとされる整理・監理銘柄等の企業の個別株式やハイリスクな投資信託等は除外されていますが、将来的にどのような事態が投資先に及ぶのかは予想できません。情報をキャッチアップしやすい投資先、趣味趣向で十分なので興味のある投資先から選ぶのがベターといえるでしょう。

資産運用とは、ただ投資商品を買うだけでもなければ、その商品を持ち続けるだけでもありません。運用で得たお金を、ご自身の生活を潤すためのご褒美(自分への投資)に活用できるような資産運用を楽しんでください。


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