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村井 英一先生(むらい えいいち) プロフィール |
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浜田 千鶴さん(仮名 30歳 専業主婦)のご相談
この1年間で予想外に貯蓄が増えました。外食もせず、旅行も行かなかった、というよりコロナ禍で行けなかったからなのですが、みなさんもそうなのでしょうか?コロナ禍が終息しても貯蓄を増やしていけるように、節約のコツを教えてください。
浜田 千鶴さん(仮名)のプロフィール
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調査でも同じような傾向が表れています。その傾向からコロナ後の節約を考えていきましょう。
1.2020年の家計の平均的な姿を見ると…
この1年間は新型コロナウィルスの感染症の拡大で、誰もが自粛生活を強いられました。好むと好まざるとにかかわらず、外での飲食が制限され、家族旅行も行けなかった人は多いのではないでしょうか。
その結果、浜田様のご家庭では、例年に比べて貯蓄が増えたとのことですが、よそのご家庭はどうだったのでしょうか。もちろん、ご家族によって状況は異なりますが、総務省の「家計調査」から平均的な姿を見てみましょう。総務省の「家計調査」は、全国8,000以上もの世帯に家計簿をつけてもらい、収支の動向を調べている調査です。2020年の調査結果を見ると、コロナ禍の影響が表れています(以下、2人以上の世帯のうち、世帯主が勤労者である世帯の家計収支で見てみます)。
2020年の家計収支は、その前年に比べてかなり改善しています。収入が増えて、支出は減っているからです。
まず収入は、月額23,386円(年額約28万円)増加しています。世帯主の給与収入は若干減少していますが、配偶者のパート収入でそれを補っています。増加の要因は特別定額給付金です。家族1人あたり10万円の収入増ですので、平均で年額約26万円の収入増となっています(調査対象が2人以上の世帯のため)。
一方支出の方は、全体で月額18,042円(年額約21万円)の減少となっています。その内訳を見ると減少額が大きい項目は、交際費などが含まれる「その他の消費支出」、旅行費が大きい「教養娯楽」、そして「交通・通信」です。これらが減少した理由は、もちろんコロナ禍による外出の自粛です。この3項目で月額16,925円(年額約20万円)の減少となっています。「被服及び履物」も減少しており、これもコロナ禍の影響と言えるでしょう。外食費も減少していますが、それも含む「食料」では若干増えています。逆に家電製品を含む「家具・家事用品」は少し増加しています。
収入が増えて支出が減った結果、2020年の家計収支は黒字額が月額40,036円増えています(年額約48万円)。「家計調査」の結果は調査対象の平均ですが、例年に比べて昨年は貯蓄が増えたご家庭が多いということは言えるでしょう。もっとも、特別定額給付金による収入増はこの年限りのことですので、これほど貯蓄が増えるのはこの年限りかもしれません。
ただ、上記の傾向はあくまで〝平均〟の姿です。ご承知のようにコロナ禍では、飲食業や観光業など、特定の業種で特に著しい影響を受けています。特定定額給付金を含めても収入が大きく減ったという人は少なくないでしょう。そのようなご家庭では、貯蓄が大きく減ってしまったケースもあると思います。逆に巣ごもり需要などで業績が良くなり、給与収入が増えた人もいるかもしれません。調査の結果は、あくまで「平均」でしかありません。
2.2020年の家計から、節約のポイントを探る
いまだにコロナ禍は続いており、交際費や旅行費、交通費の減少は続いていると考えられます。しかし、ワクチン接種が一巡し、新型コロナの感染が減少してくれば、消費は回復すると考えられます。今までコロナ禍でがまんを強いられてきただけに、ようやくとばかりに、外食や旅行に出かける人が急増するかもしれません。コロナ禍の前よりも消費が増えることも考えられます。
2020年からはコロナ禍によって、すべての家庭で支出を抑える状況が続きました。収入が減って節約しなければならなかった人以外でも、無意識のうちに〝節約〟をして、貯蓄を増やしていたことになります。このことから、節約のポイントが見えてきそうです。
〝節約〟というと、スーパーなどでの毎日の買い物で支出を抑えようとしがちです。水道光熱費を削減するために努力をする人もいます。確かにこれらも節約の効果はありますが、金額にすると効果はそれほど大きくありません。それよりも、交際費や旅行を抑える方がはるかに効果は大きいのです。
もちろん、「おつきあいや旅行をしてはいけない」ということではありません。これらは、生活に潤いを与えてくれる大切な支出です。〝自粛疲れ〟という言葉があるように、がまんを続けていると、ストレスが溜まる人も少なくないでしょう。ただ、この部分を抑えると、節約の効果が大きく、貯蓄の増加が期待できますので、この機会に見直しをしてはいかがでしょうか。
この記事では「家計調査」の2019年と2020年のデータを比較して、節約できる余地を捜してみました。家計簿をつけられているのでしたら、2019年と2020年のわが家の支出を比べてみましょう。コロナ禍という特殊事情ではありますが、支出がどのくらい抑えられたのかがわかるはずです(家計簿を付けていなければ、預金残高の比較でもおおよそ計算できます)。
アフターコロナでは、コロナ禍と同じがまんを続ける必要はありませんが、本当に必要な支出だったのかを見直すと、コロナ前には戻らないはずです。その気になれば、支出を抑えられることが確認できたからです。どれぐらいまでならおつきあいを抑えても支障はないのか、恒例行事だからとなんとなく旅行に行っていなかったか。コロナ禍は、今までの生活習慣を見直す機会を与えてくれているようです。
<参照>
- 総務省「家計調査」2019年 https://www.stat.go.jp/data/kakei/2019np/index.html
- 総務省「家計調査」2020年 https://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/tsuki/index.html#nen
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