在宅介護が難しくなる前に高齢者施設への入居を考えたいと思っています。種類や選び方を教えてください。


今回、回答いただく先生は…
鈴木 暁子先生(すずき あきこ) プロフィール
  • 入居の目的と入居時の身体状況がポイントです。
  • 月額費用は年金をベースに。必要があれば、今ある資産の活用も検討しましょう。
  • 50代になったら施設・住宅探しのための行動をスタートしましょう。

 田中 由美子さん(仮名 58歳 専業主婦)のご相談

夫と夫の両親との4人暮らしです。幸い、義父母は今のところ介護度もそれほど高くなく、費用も公的介護保険サービスの自己負担限度額の範囲内で賄えています。ただ、これ以上重くなると、在宅介護を継続できるか不安なので、施設入居も視野に入れておくつもりです。介護施設と言ってもたくさん種類があると聞きました。公的、民間、条件、費用など、自分や家族に合った施設はどう決めるのがよいでしょうか?

田中 由美子さん(仮名)のプロフィール

家族構成
本人(58歳 専業主婦)
夫 (58歳 会社員)
義父(85歳 無職・同居、要介護1)
義母(83歳 無職・同居、要支援2)
長男(28歳 会社員・別居)

介護状態や求めるサービス、予算などで絞り込み、体験宿泊などして本人の希望に合っているかを確認しましょう。

1.入居の目的と、入居時の身体状況がポイントです。

田中さん、こんにちは。義父母様の介護を担われていらっしゃるとのこと。頭が下がる思いです。本当にお疲れ様です。
「介護施設もいろいろある」とおっしゃっていますが、実は高齢者向け施設は介護施設だけではないのです。したがって、「介護施設」よりもう少し幅広に「高齢者施設・住宅」とくくってお話したいと思います。

施設入居というと、介護が必要になった人が入居するというイメージになりがちですが、実は高齢者の住まいには介護が必要でない、元気な方が入居する施設もあります。次の表で、主な高齢者施設・住宅の入居時の身体状態やサービスの目安、それぞれの主な特徴を確認していきましょう。

<主な高齢者施設・住宅における入居時身体状態とサービスの目安>
入居時の身体状態 サービス
施設・住宅の種類 自立 要支援 要介護 介護 見守り、
生活支援
など
食事
公的施設 特別養護老人ホーム × × 3~
介護老人保健施設 × ×
介護医療院 × ×
ケアハウス 外部/○
民間施設 健康型有料老人ホーム 外部
住宅型有料老人ホーム 外部
介護付有料老人ホーム
サービス付高齢者向け住宅 外部/○ △/○
グループホーム × 2~

※ケアハウス、サービス付高齢者向け住宅は一般型と介護型がある

<主な高齢者施設・住宅と特徴>
施設・住宅の種類 主な特徴
公的施設 特別養護老人ホーム 施設のスタッフが介護をしてくれ、比較的割安で手厚い介護が望める。看取り対応もあり、終のすみかになり得る。ただし常時医療措置が必要な場合は退去。
申込み順ではないため(緊急度の高い順)、待機期間が長くなりがち。
介護老人保健施設 比較的割安で、医療と介護の両方が受けられる。本格的なリハビリができる。ただし3カ月程度しかいられない。また、自宅での生活が可能と判断されると退去。
介護医療院 医療ニーズの高い要介護者、認知症の人も受け入れ可能。
終末期医療や看取り対応もあり、終のすみかになり得る。
ケアハウス 比較的割安で、設備が充実しているところも多い。介護型の場合は施設のスタッフが介護をしてくれ、看取り対応も可なので終のすみかになり得るが、一般型の場合、医療や介護が必要になると退去。
待機期間が長くなりがち。
民間施設 健康型有料老人ホーム 生活支援や安否確認サービスが付く。イベントやサークル活動、レクリエーションが豊富。共有施設が充実しているところが多い。基本的には生活を楽しみたい人が入居するケースが多い。外部サービスを利用することで、軽度の介護状態に対応可。ただし介護度が重度、日常的な医療ケアが必要になると退去。
一般的に、入居一時金や月額費用が高め。
住宅型有料老人ホーム 生活支援や安否確認サービスが付く。レクリエーションが豊富。認知症対応可の施設も多い。介護が必要になった場合、外部サービスを利用することで、軽度の介護状態に対応可。介護の必要性がそれほど高くないうちは介護型よりも割安だが、重度になると介護費用がかさみ、介護付き施設に住み替えの検討が必要になる場合も。
介護付有料老人ホーム 24時間365日、施設のスタッフから介護サービスを受けられる。認知症の対応可。介護費用は介護度別に定額なので、資金プランが立てやすい。終のすみかになり得る。ただし、元気なうちに入居すると、介護サービスをあまり使わなくても定額のサービス費を払う必要があり、レクなども充実していないので退屈する可能性も。
サービス付高齢者向け住宅 プライバシーを確保しながら、見守り、生活相談があり、安心して過ごせる。必要なサービスを選択でき、生活の自由度も高い。入居時の経済的負担が比較的少なく、賃貸なので入退去しやすい。外部サービスを利用することで、軽度の介護状態に対応可。ただし、介護型でない場合、介護度が重度になると介護費用がかさみ、介護付き施設に住み替えの検討が必要になる場合も。
グループホーム 認知症の人でも共同生活を送ることができ、家族の負担を減らせる。残存能力を活用させることで、認知症の進行を遅らせられる。
ただし、要介護2以上でないと入居できない。介護度が重度になったり、医療措置が必要(入院となるよう)な場合は退去も。

大まかではありますが、施設・住宅によって入居時の身体状態の条件やサービスに差異があります。たとえば、公的施設の特別養護老人ホーム、介護老人保険施設、介護医療院などは、原則、要介護認定(特別養護老人ホームは要介護3以上)でないと入居できません。また、グループホームは、原則、自立の方は入居できません。

なお、公的施設では、一般型ケアハウスは60歳以上、それ以外は65歳以上が入居可能年齢です。民間施設は、グループホームは65歳以上、それ以外は60歳または65歳以上を要件としているところが多いです。

民間施設の場合は、同じ○(入居可)であっても、受け入れの中心がどのような身体状態の入居者かで設備やサービスも異なります。まだまだ元気でセカンドライフを謳歌したい人が、終のすみかになり得るからといって介護付き有料老人ホームに入居すると、周囲はコミュニケーションを取れる人が少なく、レクリエーションも歌を歌う程度という生活を送らなければならなくなる可能性もあるのです。

本来であれば、身体状態の変化に応じ、施設・住宅も住み替えていければベストですが、資金的に容易ではありません。したがって、どのような身体状態の時に入居したいのか、求めるサービスは介護なのか、見守りなのかなどを明確にし、望む施設・住宅と入居する施設・住宅のミスマッチを防ぐことが何より重要です。

2.月額費用は年金をベースに考えると安心。不足の場合は資産の有効活用も。

高齢者施設・住宅の費用は、一般的に、入居一時金や敷金などの入居時費用と、月額費用で構成されます。資金プランで最も重要なのは、亡くなるまでお金を枯渇させないことです。月額費用が払えなくなると退去しなければなりません。それを避けるためにも、長生きしたとしても安心していられる資金プランでないといけません。

その場合、ランニングコストである月額費用は、長生きしたとしても対応できるよう、年金を目安にすると良いでしょう。公的年金など終身で受け取れる年金は、生きている限り受け取れますから長生きしても安心です。

月額費用が年金より高額になると、差額は貯金の取り崩しとなります。かい離が大きいほど取り崩しのペースが速くなり、資金寿命が短くなるため、長生きリスクに対応ができなくなります。年金額をベースに価格帯を絞ると良いでしょう。

また、年金を目安にすることで、親の介護費用を子が負担する可能性が低くなります。介護期間がどれくらいになるかわからない以上、子が親の介護費用を負担すると、子世帯の家計を圧迫し、子世帯のライフプランを破綻させてしまう可能性もないとはいえません。そうさせないためにも、介護費用は、義父母様の資産で賄うことを原則としてプランニングすることをお勧めします。

なお、入居一時金などまとまった資金が必要となる場合、金融資産だけでなく、不動産など、さまざまな資産を有効活用することも検討してみましょう(もちろん、田中さんの場合は、田中さんご夫婦も居住しているので、売却するわけにはいきませんが)。

それでもどうしても資金的に難しい場合、エリアを近隣県まで広げて探すこともしてみましょう。やはり首都圏4県あたりは価格も高めですが、少し離れると意外とリーズナブルな施設・住宅を見つけられることもあります。ご家族が訪ねやすくアクセスの良い所で探すというように、柔軟に検討することも大切です。

3.施設・住宅は足で探しましょう。

入居の目的や入居時の身体状態、価格帯が絞れたら、具体的な施設・住宅探しのステップとなります。ちなみに、高額な施設が良い施設とは限りません。また、他の人には向いていても本人に向いているとも限りません。もちろん口コミは参考にしてください。ただし、本人に合っているかどうかが最重要です。

そのためには地道に見学をして比較検討していくしかありません。資料請求や施設・住宅のホームページなどで大まかな情報はインプットできても、現地に行ってみたらイメージと違うことはよくあります。ですから必ず見学をしましょう。

その際は、五感をフル活用してください。外観や内部の設備、近所の騒音や交通量、施設内のにおい、清潔さ、入居者の表情、スタッフの対応など、しっかりチェックしましょう。また、可能であれば食事付きの見学がお勧めです。今後ずっとここでの食事を食べることになります。食事は入居を決める重要なポイントのひとつです。食事付きの見学会がなくても、お願いすれば実費で出してくれるところもありますので問い合わせてみると良いでしょう。

また、入退去要件、有料でどのような追加のサービスがあるか、近くの病院やクリニックとの医療連携、胃ろう、インシュリン注射など、医療的措置をどこまでやってもらえるのか、看取り対応は・・・なども重要なポイントです。気になること、質問したいことをあらかじめまとめておくと、当日聞き忘れなどがなく、充実した見学ができるはずです。

併せて、スマホカメラで部屋の雰囲気や細部の工夫なども撮影しておくと、後々の備忘録にもなります。ただし入居者の方が映り込まないよう注意し、施設の方に撮影しても良いか確認を取ってからにしてください。

最終的に数カ所に絞れたら体験入居をしましょう。見学することと居住することは別です。高齢になってからの共同生活ですから、居住することで見えてくる不満などもあるからです。

また、今回は義父母様の施設選びのご相談でしたが、実際問題として、義父母様があれこれ見学するのは難しいので、田中さんご夫婦である程度絞って、それから義父母様に見学してもらうようにすると良いでしょう。

細かいことを言い出すと、とても誌面に書き切れるボリュームではないため、まずはこのくらいの基礎知識を持っておいていただきたいというレベルで、本日はアドバイスさせていただきました。

ただ本来、施設・住宅見学などは、50代になったらスタートさせてほしいことなのです。気力や体力のあるうちでないと見学も大変です。今回のアドバイスは義父母様だけでなく、ご自分たちの将来の準備としての話でもあるとご認識ください。


地方在住の親の介護が心配です。今後の親のサポートにあたって必要なことは何か知りたいです。
親の老いが気になりだしました。今後の実家と親の生活について、どのような選択肢がありますか?
今は元気な親。でも将来介護が必要になったらどれくらい費用がかかるのか心配です。

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