住宅購入を予定していますが、住宅ローンの組み方で迷っています。 貯蓄が減ることにも大きな不安があります。


住宅購入を予定していますが、住宅ローンの組み方で迷っています。
貯蓄が減ることにも大きな不安があります。

鈴木 暁子先生 (すずき あきこ) プロフィール
  • 漠然とした不安を明確にしていきましょう。
  • 使途不明金の軽減や保険の見直しなどで、無理のない家計改善をしましょう。
  • 奥様に万一のことがあった場合の備えをしておきましょう。
  • 金利上昇リスクへの備えをしておきましょう。一案として頭金を増やしても良いでしょう。

高田 愛さん(仮名 36歳 会社員)のご相談

今年に入って、2,700万円の新築マンションの購入を契約しました。
マンション完成が平成25年春のため、返済が始まるのは平成25年に入ってからです。
ローンは30年で組んでいますが、子どもの教育費がかかる前に繰り上げ返済に励み、遅くとも退職前の20年完済を目標にしています。また、ボーナスはあくまで臨時収入と考え、預貯金や教育資金、家族の旅行費、それに金利が低く教育費もさほどかからない5年程度をめどに繰り上げ返済に重点的にあてる予定です。

不動産販売員に相談し、不況による金利の低さは今後も続くと考え変動金利で返済開始予定ですが、一般に低金利時代は固定が良いとされていて、どちらが良いかわかりません。
また頭金はもっと多い方がよいのか。ローン残高を減らしたいと思いつつ、不安から預貯金に回して繰上げ返済ができない気もします。
根が心配性でお金の計算に弱いので、今後ローンを払い続けられるのか、月々の預貯金額が大幅に減ることも不安です。第3子も望んではいますが、経済的に無理かしら・・・と不安になっています。

ローン契約をするまでの1年間で情報収集をし、過剰な不安や無理なく楽しく倹約とローン返済をしながら生活できるよう、またすこしでも貯蓄額を増やして、引っ越し費用などに充てたいと考えています。

高田 愛さん(仮名 36歳 会社員)のプロフィール

家族構成 : 夫 39歳 会社員
第1子 3歳
第2子 0歳
住居 : 現在は賃貸
購入物件 : マンション(現在建築中、平成25年春に入居予定)
購入価格 : 2,700万円
頭金 : 670万円
借入金 : 変動金利で2,030万円(毎月返済額:65,000円、30年)
諸経費 : 130万円
その他 : 駐車場代(毎月13,000円)
夫の退職予定 : 60歳
妻の退職予定 : 60歳

“金利上昇”と”奥様が万一の時”がリスクです。
漠然とした不安は、数字が見えれば解消されます。

1.いたずらに不安がるのではなく、何が不安なのかを明確にして必要な対策を

高田さん、こんにちは。新居のご購入おめでとうございます。入居までの期間に情報収集や貯蓄を増やしておきたいなど、育児でお忙しい状況での愛さんの奮闘ぶりに感心しています。また今回のご相談にあたり、質問へ早めにご回答くださったこと、内容も的確であったことから、しっかり家計を把握されていることがうかがえました。

さて、現在愛さんは育児休業中で来春からお仕事に復帰予定とのことですので、復帰後の収支とキャッシュフロー表でみていきましょう。今年と来年分の収支は現状を加味しています。

【高田家の家計収支】(単位:円)

【収入(税引き後手取り】
毎月 ボーナス時、臨時
200,000 800,000
300,000 900,000
収入合計 500,000 1,700,000
【支出〈固定費)】
毎月 ボーナス時、臨時
住居維持費 13,000
住宅ローン 67,000
車維持費 10,000 210,000
自動車ローン 0
第一子関連費 27,600
第二子関連費 22,300
保険料 33,400
小遣い 60,000 60,000
固定費合計 233,300 270,000
【支出(やりくり)】
食費※1 30,000
水道・光熱費 14,500
通信費 5,000
交際費※2 20,000
教養娯楽費 20,000 100,000
その他 23,300 10,000
やりくり費合計 92,800 130,000
支出合計 326,100 400,000

※1 : 外食含む
※2 : 帰省費含む

年間収支 3,386,800
【貯蓄】
商品名 毎月貯蓄額 ボーナス時、臨時貯蓄額
共済貯金(普通)妻名義※3 50,000 250,000
ゆうちょ(普通)夫名義※4 70,000
ゆうちょ(普通)長男名義※5 10,000
ゆうちょ(普通)長女名義※6 15,000
ろうきん虹の預金(一般財形)妻名義※7 20,000 70,000
貯蓄額合計 165,000 320,000

※3 : 育休中は中断
※4 : 育休中は中断、ローン開始後は減額予定
※5 : 長男名義で児童手当分
※6 : 長女名義で児童手当分
※7 : 育休中は中断

【貯蓄残高】
商品名 合計
銀行(普通)夫名義 750,000
銀行(定期)夫名義2口 570,000
ゆうちょ(普通)夫名義 1,900,000
共済貯金(普通)妻名義 3,200,000
ろうきん(一般財形)妻名義 2,100,000
銀行(普通)夫名義 50,000
銀行(普通)妻名義 1,100,000
銀行(定期)妻名義4口 2,000,000
銀行(普通)妻名義 1,900,000
ゆうちょ(普通)妻名義 300,000
ゆうちょ(定期)妻名義4口 1,900,000
ゆうちょ(普通)長男名義 720,000
ゆうちょ(定期)長男名義 215,000
ゆうちょ(普通)長女名義 180,000
貯蓄残高合計 16,885,000

【進学コース別学習費】(単位:万円)

高校まで公立 小学校から私立 中学から私立 高校から私立
小学校(6年) 182 879 182 182
中学校(3年) 138 384 384 138
高校(3年) 119 277 277 277
合計 439 1,540 843 597

※文部科学省平成22年度「子どもの学習費調査」を基に算出。千円単位は四捨五入。

【高校~大学の教育費負担】(単位:万円)

入学費用 在学費用
国公立大学 85 116
私立大学(文系) 99 148
私立大学(理系) 104 180
自宅外通学者への仕送り 102.1
自宅外通学を始めるための費用 47.6

※㈱日本政策金融公庫平成23年度「教育費負担の実態調査結果」を基に算出。
千円単位は四捨五入。
※入学費用:受験費用、学校納付金、入学しなかった学校への納付金
※在学費用:年間の学校教育費(授業料、通学費、その他)
、 家庭教育費(補修教育費、けいこごとなど)
※自宅外通学者への仕送り:在学費用を除く年間仕送り
※自宅外通学開始のための費用:敷金、家財購入など

<キャッシュフロー表を別ウィンドウで表示>

一般的には収入の2割と言われる貯蓄目標。高田家では通常時の年間貯蓄額は約230万円。約3割を貯蓄に回しています。しっかり家計管理されていますね。育児休業中はほとんど貯蓄をしないとしていらっしゃいますが、収支とキャッシュフロー表でもおわかりのように、現在愛さんが育児休業中であったとしても十分貯蓄ができるはずの家計ではないでしょうか。

その他支出が100万円というのは、収支表でみる実際の貯蓄可能額額(約328万円)と実際の貯蓄額(約230万円)の差額です。使途不明金や固定資産税、火災保険料などの諸費用も発生するため、100万円支出として計上してあります。

そのあたりの余裕をみながら、繰り上げ返済せず30年で返済したとしても、貯蓄額が赤字にはなっていません。もちろん教育費などは予想より多くなる可能性もあります。しかしざっくりとしたキャッシュフロー表ではありますが、愛さんが不安に思うよりはるかに健全な家計だと思います。

家計管理にあたり、楽観的すぎるよりは慎重すぎるほうが安全です。しかしいたずらに不安がることで、使って良いお金も使わず…では、愛さんが希望される「楽しい倹約生活」もできません。まずはキャッシュフロー表などから、不安に思うことを具体的に明確化しましょう。そしてその不安に対して早めの対応をすれば良いのです。

2.ご主人が万一の時より、奥様が万一の時の方が家計への影響が大きい

愛さんの不安とは別に、ご夫婦それぞれに万一のことがあった場合の家計をみていきましょう。

1 ご主人様に万一のことがあった場合

<キャッシュフロー表必要保障額1-1を別ウィンドウで表示>

  • 団体信用生命保険により、住宅ローンは完済される
  • 遺族基礎年金、遺族厚生年金などの支給に加え、愛さん自身に収入がある。

以上のことから、遺族の生活が立ち行かなくなることはないでしょう。

2 愛さんに万一のことがあった場合

<キャッシュフロー表必要保障額2-1を別ウィンドウで表示>

  • 世帯収入が大幅にダウンするが住宅ローンの返済は残る
  • 現行の制度では父子家庭に遺族基礎年金は支給されない
  • 遺族厚生年金は子どもに対して支給されるが18歳まで。

高田家の家計にとって、愛さんの収入は二本柱のひとつです。ご主人様に万一のことがあった場合と違い、愛さんに万一のことがあっても父子家庭には社会保障に手厚さがないため、むしろこちらのほうが深刻です。お子様がまだ小さいため、シッターさんなど面倒をみてくれる人も必要です(この点については、双方のご実家が新居から近いため、サポートはありそうですが)。

3.家計改善できる余地がありそう

愛さんがしっかり管理されている家計ですが、まだ改善できる余地がありそうです。

1 使途不明金を減らす

収支をみた時にもお伝えしたように、収支の計算上算出される貯蓄可能額と、実際の貯蓄額にかなりの差があります。使途を書き洩らしているのか、あるいは使途不明なのかを確認してください。使途不明にしては大きすぎるので、これを減らすことは今後の家計改善に非常に効果があります。

2 保険の見直し

保険の見直しでも効果がありそうです。

保険商品 種類 保険金額 保険期間 年間保険料 (円) 払込期間
団体生命共済 死亡 医療 がん 年金 死亡:2,000万円
入院日額:5,000円
成人病入院:1万円
がん:300万円
1年ごと 75,480 1年
掛け捨て
新団体年金共済 積立し、退職後、年金・医療・死亡保障に組み合わせて選択 108,000 退職まで (基本的には60歳)
夫アカウント型死亡 医療 がん死亡:2,000万円 入院日額:7,000円 がん・6大疾病:200万円 障害:生活サポート年金として (終身型)1000万円/年終身151,69280歳
第一子 団体生命共済 死亡 死亡:400万円
臓器移植:150万円
人工透析:1万5千円
1年ごと 5,280
親子共済 18歳満期:115万円程度
死亡、重度障害共済金あり
18年 60,000 18歳まで
学資保険 死亡 医療 18歳満期100万円
死亡:100万円
障害:10~100万円
入院:1,500円
18年 全納済
その他 1年ごと 53,760
1年ごと 41,320

1)第一子のお子様の死亡保障

第一子のお子様に死亡保障をかけておられますが、学資保険で死亡保障は確保されていますので、これ以上の死亡保障は不要です。臓器移植や人工透析のための保障もどちらかといえばレアケースですから、どうしてもというのであれば一般の医療保険のほうが使い勝手が良いでしょう。ただし高額療養費制度もありますし、お子さんの場合は小学校くらいまでは医療費がかからないケースも多いので、しばらく様子をみてもよいと思います。いずれにしてもこの死亡保障の必要性は特段感じません

2)ご主人様のアカウント型保険

アカウント型保険は保険料を必要な保障(死亡、医療など)に充当し、余った分を貯めるしくみです。ライフプランに合わせて保障と貯蓄に充当する割合を変更できるので、合理的な保険と思われていますが、よくある誤解をご紹介しておきます。

この保険に加入する方は、貯蓄できる保険(貯蓄を期待する保険)と思っていらっしゃることが多いのですが、手厚い保障を望めばその分保障への充当が多くなり、貯蓄への充当は数百円程度ということもあるのです。しかも保障部分は掛け捨てですから、保険料が多い割に貯蓄はほとんど増えていない保険になっていることに気づかない契約者も少なくありません。さらに掛け捨ての保障部分は定期保険ですので、保険期間満了ごとに保険料は上がっていきます。このようなしくみを理解して加入されましたか?
理解・納得された上での加入であれば問題はありませんが、もし貯蓄型保険と思っていらっしゃったのであれば、すぐに保険会社に貯蓄部分に回る割合がどれくらいかを確認してください。希望する内容でなければ早急に見直しをお勧めします。

必要保障額1-1でもおわかりのように、高田家ではご主人様の死亡保障は確保されていますが、コストパフォーマンスも検討してみます。
一定期間の大きな保障のためには定期保険での供えが一般的ですが、定期保険の中でも、収入保障保険が割安な保険料で必要な保障を得ることができます。

必要な保障(特に万一の際以後の教育費)はお子様の成長に伴って減っていきます。したがって支給される保険金もそれに伴い少なくなって良いはず、そしてお給料と同じように毎月支給される、というコンセプトで設計された保険です。
従来の定期保険に比べ収入保障保険は大きい保障を割安に確保できるため、ご主人様の保障や、愛さんが万一の際のリスクに備えるための上乗せ保障として、検討すると良いでしょう。

<キャッシュフロー表必要保障額1-2を別ウィンドウで表示>

ご主人様死亡時の保障を2,000万円の一時金でなく、毎月10万円ずつ支給される収入保障保険にしても遺族保障はまかなうことができ、かつ保険料は年間で約45,000円程度。割安で必要十分な保障を買うことができるわけです。さらに日額7,000円、先進医療特約や三大疾病時には以後の保険料払込免除などをつけた終身医療保障も、別途毎月4,000円台の保険料で確保することが可能です。
アカウント型で貯蓄部分が多いのであればかまいませんが、掛け捨て部分がほとんどであるなら、これらの見直しをすることで年間約5万円近い保険料を節約でき、かつ保険料も固定できるので、家計管理もしやすくなります。

3)愛さんの死亡保障

<キャッシュフロー表必要保障額2-2を別ウィンドウで表示>

愛さんに万一の時は家計に影響があるため、対応を検討しておかなければなりません。現在の死亡保障に加え、毎月15万円を60歳まで保障する収入保障保険で上乗せすることも一案です。月々約3,600円程度の保険料ですので、2)で節約できた保険料を使って家計改善が見込まれます。保険料を実質上げることなく、世帯全体で手厚い保障を得ることが可能です。

ただし、もし現在の保険を解約して新たな保険に加入し直すとしても、必ず新たな保険に加入できたことを確認してから解約しましょう。解約した後に、保険契約に支障のある病気や症状などが見つかると、新たな保険契約ができないおそれもあります。その場合は無保険状態となってしまいますので、解約は必ず次の保険に加入できてからにしてください。また、試算はあくまで目安ですので、より現実に即したキャッシュフロー表で検討してください。

4)第二子のお子様の教育費準備

比較的貯蓄体質の高田家ですので預貯金による準備でも良いですが、契約者死亡時などは以後の保険料払込が免除されますので、学資保険で準備しても良いですね。
返戻率をチェックし、高めのものを選ぶと良いでしょう。保険料の負担が不安に思われるかもしれませんが、頭金を払った後の貯蓄残高をみても、年間15万円程度の保険料負担はさほど影響しません。保険料はかかりますが、逆にその分必要保障額が減ることにもなるのです。

また最近では使途が決まっている学資保険ではなく、一時払い終身保険に加入し教育資金の準備に充てるケースも増えています。一時払い終身保険は、万一の際は死亡保険金が支給されますし、(保険商品にもよりますが)10年程度加入した後の解約であれば、解約返戻金が払い込み保険料を上回ります。ただしまとまった資金が必要となるので、教育資金は学資保険でじっくり準備し、預貯金は繰り上げ返済に充てるという考え方でも良いと思います。

3 車の売却

購入物件は駅近とのことですので、現在2台所有している車を1台にするということは検討できないでしょうか。車の維持費は意外とかかるため、これも家計改善に効果が大きい項目です。

4.頭金を増やし、金利変動への備えをしながら上手に繰り上げ返済を組み入れましょう

史上最低金利とまで言われる今、住宅購入を検討する方が増えています。そんな中、固定金利と変動金利の選択は永遠のテーマとも言えます。ひとつ誤解のないように申し上げておきます。

そもそも同時期の住宅ローン金利であれば、固定のほうが変動より高めに設定されます。愛さんがおっしゃる「低金利時代は固定が良い」というのは、その後変動金利が固定金利以上にまで上がる金利変動リスクに対してであり、今後も現在と金利水準が変わらないようであれば、変動金利の方が有利となることもあるのです。たとえば2006年にゼロ金利が解除された際、多くの方が固定金利を選択したもののその後一向に金利は上がらず、金利差を考えれば結果的に変動金利を選択したほうがはるかに有利となっています。

金利ばかりは誰も予測できません。一般的に物件価格の2割は頭金を準備したいところ、高田家の場合は約3割充当しても貯蓄が十分残っています。また返済額も世帯収入からみて無理のない範囲ですので、堅実な買い物といえます。金利変動リスクが不安ならば固定金利、許容できるなら変動金利と言ってしまえばそれまでですが、高田家は変動金利を選択しても良いと考えます。ただし金利上昇リスクへの備え、およびお子様の教育費がかからないうちに繰上げ返済していきたいというご希望を考慮すると、頭金を増やすことをお勧めします。

金利は借入金に対してかかるものですから、借入金を少なくすることは金利上昇リスクへの備えとなりますし、繰り上げ返済も同様の効果があるため、早いほど効果は大きいです。5年後をメドとしてお考えのようですが、5年で繰り上げ返済資金を貯めるというならばともかく、十分な貯蓄残高があるのですから、頭金を増やすほうが効果は大きいです(早いほど効果がある繰り上げ返済ですが、究極の繰り上げ返済は頭金です)。キャッシュフロー表からみれば、諸費用別で頭金を1,000万円くらい捻出も可能です。

まだローンを組むまでに時間があります。今回ご提案させていただいた事柄を参考に、情報収集につとめて一歩進んだ家計管理を目指してください。
今回ご提示したキャッシュフロー表には、最低限の収支しか記載していません。また仮定のものも含まれています。大事なことは今後予想される支出や収入を随時更新し、現実の数字に近いものを作っていくことです。数字が見えればどこまで使って良いのか、どれくらい繰り上げ返済に充てられるか、どれくらい準備しなければならないかがわかり、不要な心配は解消されるはずです。しっかり家計管理されていますので、使う楽しみも忘れずに!