増え続ける社会保険の負担 ~どこに住むかで変わる高齢期の介護保険料~


どこに住むかで変わる高齢期の介護保険料

   

定年間近の社員など対象にしたライフプランセミナーで講師をする機会があります。そこで皆さん驚かれるのが高齢期の社会保険料の負担の重さです。最近は、定年退職後継続雇用で働き続ける人も増えましたが、いずれは皆さん退職されます。田舎に戻る人、そのまま現在の住まいで暮らす人など人様々です。会社等にお勤めのときの介護や医療の保険料は毎月の給与と賞与などで決まり、高齢期の保険料は地域ごとで異なります。まさにどこに住むかが暮らしの質を左右するのです。

今回は、リタイア後の社会保険料のうち、主に65歳以上の第1号被保険者が支払う介護保険料についてお話します。

   

年代で変わる一般的な介護・医療の保険料のしくみ

民間会社などに在職中の健康保険料(介護保険料含)は、毎月の給与と賞与に応じた保険料を被保険者が事業主と折半(協会けんぽ)で納付します(健保組合は規約で決定)。つまり、専業主婦など被保険者に扶養されている人の医療と介護の保険料は発生しません。しかし、国民健康保険の場合、1人1人が被保険者なので収入がなくても医療と介護の保険料(均等割)は発生します。いずれも、65歳以上になると、市町村の介護保険の第1号被保険者として介護保険の保険料を納付します。

65歳を節目に、高齢期の介護保険料は、各々負担するカタチに移っていることが分かりますね。そして、少子高齢化に伴い、高齢期の負担も自ずと増えていく訳です。

<退職後の健康保険の加入のイメージ>

介護保険料が増えた

65歳以上の人が支払う介護保険料は3年毎に変わり平成27年度は節目の年です。全国平均は5,514円、1期の2倍弱(189%)となっています。第5期を基準とする10年後は64.2% 増、人口減少の中、平均寿命の伸びが予想され子の出生率減少を踏まえると、国の見込みは甘めかも知れません。

<第1号被保険者の介護保険料基準額の推移>

第1期 第2期 第3期 第4期 第5期 第6期 見込み
12年度~ 15年度~ 18年度~ 21年度~ 24年度~ 27年度~ 32年度~ 37年度~
2,911円 3,293円 4,090円 4,160円 4,972円 5,514円
(+10.4%)
6,771円
(+36.2%)
8,165円
(+64.2%)

参考:1号保険料と2号保険料の推移(厚生労働省)
※ (  )内は、5期の保険料を基準とした伸び率
※ 平成32年度・37年度の数値は、平成27年4月現在で集計
※ 年度はすべて平成

国は高齢者も応分の負担をして欲しいメッセージを盛んに送っています。世の流れを考慮すれば仕方ない面もあります。将来の負担増が分かっている私たちは、そのとき慌てないためにも、第1号被保険者に対する高齢者割合や所得状況が地域で異なること知り対策が必要です。

例えば、私が住む多摩市は、元気な団塊の世代が多いことで知られており、基準額は月4,550円と全国平均より964円低くなっています。しかし、団塊世代が75歳になるころは、さすがに介護の御世話になる人も増えると予想され、保険料は全国平均を越えそうです。

今は快適ですが将来の負担増も視野に入れたお金の準備と、1人1人が健康寿命を伸ばす努力も必要でしょう。自分が住む地域の事情の把握が大切です。ちなみに私は、ずっと多摩市に住みたいので、受けられるサービスにかかる費用も気になり、地域の高齢者施設の見学も重ねています。

 

リタイア後どこに住む? → 今と将来の地域の情報を調べる  → 実際にかかる社会保険料など調査  → 夢を実現するためにお金と健康維持の準備スタート 

<介護保険「基準額」比較>

全国平均 東京都平均 多摩市
月5,514円 (年66,168円) 月5,538円 (年66,456円) 月4,550円 (年54,600円)

基準額の決め方は、介護保険サービスに必要な総見込み額を65歳以上の第1号被保険者で割って決めます。当然に介護サービスを受ける人が多ければ総見込み額は増えるしくみ。
さらに見込み総額が同じでも、その地域の低所得者が多ければ支払う介護保険料も低くなり、その分所得が多い人の保険料負担が増えます。地域差がでる所以です。

<介護保険料の算出例>

 

リタイア後どこに住む? → 今と将来の地域の情報を調べる  → 実際にかかる社会保険料など調査  → 夢を実現するためにお金と健康維持の準備スタート 

地域で異なる介護保険料基準額(6期・月)の比較

都道府県別にみると、一番高い沖縄県は一番低い埼玉県の約1.3倍。但し、同じ県内でも市区町村で保険料がかなり異なります。例えば、奈良県全体の平均は5,231円ですが、同じ奈良県でも天川村は、8,686円と高額です。高齢者割合が高く低所得者が多いことが関係しているそうです。上記から国民年金額も低いことが予想され、社会保険料を除いた手取り額が厳しいことも予想されます。保険料は恒常的に続くのでリタイア後の暮らしに大きく影響します。

 

リタイア後の期間は結構長い、生涯発生する介護保険料だからこそ、田舎に移り住むなら、事前調査して納得しておこう。合わせて医療保険料納付があることも忘れてはいけないね。

 

都道府県別・介護保険料(月)の比較

<低額介護保険料(月)・市区町村別>

鹿児島県三島村 北海道音威子府村 北海道中礼内村 福島県檜枝岐村 北海道興部町
2,800円 3,000円 3,100円 3,340円 3,500円

<高額介護保険料(月)・市区町村別>

奈良県天川村 福島県飯館村 奈良県黒滝村・岡山県美咲町 福島県双葉町 福島県(三島町・大熊町・葛尾村)
8,686円 8,003円 7,800円 7,528円 7,500円

今回は、介護保険料の負担増を取り上げましたが、仕事柄多くの高齢者に接し介護保険の有り難さも身にしみています。仮に、介護保険制度がなかったら、今受けている介護サービスを受けられるかと、高齢者に届くサービス代の領収書などをみて感じます。昔は介護保険なんてなくても過ごせたと言われるかも知れませんが、高齢者の実態、家族環境、人口構成割合など大きく変わりました。せっかくここまで成長した介護保険制度、皆で協力して上手に育てたいものですね。自分視点とサービスを提供してくれる相手視点をいつも持ちつつ、コスト感覚も磨いておくことが益々求められる時代になりました。

ワンポイントミニ知識 (参考までに)

介護保険料は、原則的に年金から特別徴収されますが、均等払いではありません。なぜなら6月初め前後に住民税の課税計算が終了後、7月中旬に介護保険料が決まるからです。

まず、4月、6月、8月に仮徴収して、正式に決定した介護保険料から仮徴収分を控除した分を10月、12月、2月の3回で納付するからです。

ちなみに公的年金の支払いは偶数月の15日に前2ヶ月分ずつ支給(後払い)されますが、介護保険料の支払いは、2ヶ月分ずつ先払いです。つまり、年金受給者が死亡したとき、支払われる未支給年金の請求をすると、前払いした保険料が戻ってきます。国保と後期高齢者医療保険も先払いのしくみは同じです。

介護保険料(月)・市区町村別