情けは人の為ならず~特技や経験を伝える活動をしている高齢者の主観的幸福感が高い~

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「情けは人のためならず」とは、人に対して情けを掛けておけば、巡り巡って自分に良い報いが返ってくると言う意味です(文化庁 国語課)。蛇足ですが、情けをかけることはかえってその人のためにならないとするのは誤りとのこと「日本国語大辞典 第2版」(平成12~14年 小学館)。
改めて高齢となった私自身振り返ってみると、仕事や趣味を通してこの言葉を実感する場面に遭遇することが増えました。

現役時代は誰もが、家族を養うためや生きるために必死で、忙しく働かざるを得ません。しかし、多くの人が長いリタイア後の道のりでふと気づくのです。地位や名誉、経済的に恵まれた人のリタイア後の幸福感が、必ずしも現役時代の幸福感と比例しないことに。今回は、余暇というのに長すぎるリタイア後の期間を幸福に過ごすためのヒントを、身近な事例や以下の統計を参考にお話します。

特技を教える高齢者は幸福感が高い ~約2,600人のデータ分析から~

主観的幸福感が高い高齢者はどのような社会活動をしているのか、日本老年学的評価プロジェクトの2016年「健康と暮らしの調査」を基に、朝日大学の助教 中村廣隆氏などにより以下の調査結果が発表されています。
現在の幸福度はどの程度(0点を不幸、10点を幸福としたときの現在の点数)を聞き取りし、8点以上を幸福度が高いとしています。調査に参加した市町村の中で最も幸福度が高い愛知県大府市に在住している65歳以上の要介護認定を受けていない2652人が対象です。
調査の結果、うつ傾向、病気の数、独居、所得の格差(等価所得200万円未満)など主観的幸福感と関連のある背景情報の影響を除いても、前期・後期高齢者ともに「自分の得意なことを他人に教える活動」と、主観的な幸福感が関連していることが示されました。つまり、スキルを教えることや他人に知識を伝えるなどの利他的な行動は、高齢者の主観的幸福感を高める可能性があるとしています。まさに「情けは人の為ならず」ですね。

(朝日大学保健医療学部看護学科公衆衛生看護学講座 助教 中村廣隆)

■生き生き高齢者の身近な事例紹介

事例1 ボランティアがいつの間にか、生きがいに
数年前から、若い世代に「マザーズハローワーク」で「就労支援のセミナー」をしています。
当初は日銀の金融広報アドバイザーとして、ほぼボランティアの立ち位置で仕事を引き受けました。受講生の『仕事をしたい』という想いと姿勢が、私の昔に重なり、少しでも役にたてるよう私の苦い失敗や経験もお話しています。セミナーのために情報にアンテナ(知識の入力)を張り、人に話す(出力する)ようにしています。今では逆に、セミナーで出会う若い人からエネルギーをもらっており、楽しみが増えました。

事例2 成年後見人等としての喜び
母の介護をきっかけに成年後見制度の大切さを知り、成年後見人等を複数受任しています。Aさんもその1人。5年ほど介護付き有料老人ホームで過ごし亡くなりました。急を聞いて駆けつけたとき、病院のベッド脇で施設職員2人がAさんの名前呼びかけるも反応はありませんでしたが、必死にAさんに呼びかける私の声は分かったようで、体を起こそうとし見えない目で、私を探すような身振りをされました。私のことが分かっていたのだと、Aさんの思いがけない反応に胸が詰まりました。同時に、受任した残りの人達も最後まで支援しようという元気をもらいました。

事例3 同窓会の世話人として人生をより豊かに
退職後、連れ合いの高校の同窓会の世話人を続けているBさん。ハイキングなどの催しも企画していて、ステキな絵手紙が頻繁に届きます。下調べも大変と思われますが、小まめさと行動力には頭が下がります。次から次に人が喜びそうなことを実行するバイタリティとBさんの前向きな生き方は眩いばかり。私が最も尊敬する人の一人です。

事例4 趣味の会を発案して人との交流を楽しく
私たち夫婦の趣味の1つがカラオケ。忙しいので、個人で先生にレッスンを受けています。せっかく習ったなら披露は大切と、Cさんが発起人の「懐メロを楽しむ会」に参加しています。
参加費は各自負担ですが、Cさんは、お菓子の差し入れや声がけなどの気配りを忘れず、盛り上げ役も率先して引き受け、会に参加した人が少しでも楽しんでくれるように、としてくれています。

老後を我が事として受けとめたい ~50代でも受け取れる年金額を知っているのは37.4%~

とは言え、長くなる人生を少しでも快適に暮らすには高齢期の生活のベースを支える「公的年金」の知識は大切です。にもかかわらず、未だにあまり知られていないのが残念。金融広報中央委員会の統計によれば、そろそろ老後を意識する50代は、定年退職後の生活費について79.7%が「意識している」と回答していますが、資金の確保をしている人は26.1%とわずか。資金の大半を占める年金の受給額を知っているのは約4割以下となっているのも気になります。
人生の折り返し時点(50歳)からの時間の経過スピードは予想以上に早いことを肝に銘じておきましょう。

定年退職後の生活費についての準備状況 ~50代
あり なし
必要費用と意識 79.7% 20.3%
必要額の認識 51.1% 48.9%
資金計画の策定 34.6% 65.4%
資金の確保 26.1% 73.9%
50代の公的年金に関する理解
金融広報中央委員会 金融リテラシー調査 2019

上記の事例からも、リタイアするまでに経済の基盤を築き、かつ心と健康の準備・実践が大切だと気づかされます。人のために何か出来るためには、まず自分のゆとりが必要です。そして、そうしたゆとりが自分の人生を益々豊かにするようです。人生100年時代を満足したものにするには、自分の人生丸ごと我が事と捉えられる視点と行動力が求められています。