父と介護保険の利用を申請しに行ったら、「介護予防・生活支援サービス事業」の対象だと言われました。制度が変わったのでしょうか?

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今回、回答いただく先生は…
村井 英一先生 (むらい えいいち) プロフィール
  • 「介護予防・生活支援サービス事業」が創設されました。
  • 今までの要支援1・要支援2程度の人が、簡単なチェックリストで対象となります。
  • 訪問介護、通所介護などが対象で、訪問看護などは介護保険の審査が必要です。

山崎広美さん(仮名 54歳 会社員)のご相談

父(81歳)の足元がおぼつかなくなってきたので、介護保険の利用を申請しに、地域包括支援センターに行きました。チェックリストを記入するように言われ、父が記入すると、「介護予防・生活支援サービスが利用できます」と言われました。介護保険サービスが利用できると思っていたのですが、制度が変わったのでしょうか? この制度ではどのようなサービスが受けられるのでしょうか?

家族構成
家族 年収
ご相談者
山崎 広美さん
54歳
(会社員)
年収 320万円
父親
田村 徹さん
81歳
(年金生活)

介護保険では「要支援」サービスの訪問介護と通所介護が、
地区町村の「介護予防・生活支援サービス」に移行しました。

介護保険によるサービスのうち、日常機能の衰えが少ない人を対象としていた「介護予防給付」の扱いが変わりました。利用者が多かった訪問介護と通所介護が「介護予防・生活支援サービス」として、保険事業から市区町村の事業となったのです。といっても、なかなかわかりにくく、混乱も生じているようです。

1.従来の「要支援」に該当する人を対象にした、新しい制度です

公的介護保険(以下、介護保険)は、原則として65歳以上の人が、日常生活に支障が生じる場合に、介護サービスを受けられる保険制度です。利用の申請をしたら、調査員の訪問を受け、さらに主治医の診断書を提出して審査がなされます。審査の結果は、軽い方から「要支援1~2」「要介護1~5」の7段階に区分けされ、一定の範囲内で介護サービスを利用できます。
サービスを利用する際の本人の負担は、所得に応じて1割または2割となっており、残りは介護保険から出ています。ヘルパーが自宅に来てくれる「訪問介護」、デイサービスに行って一日過ごす「通所介護」、看護師が自宅を訪問してくれる「訪問看護」などがあります。施設に入所する場合も、介護保険から一定の給付がなされています。

このうち、比較的軽い「要支援」の人が利用する訪問介護と通所介護が、2017年までに介護保険サービスの対象から外されました。といっても、なくなってしまったわけではなく、「介護予防・生活支援サービス」として、市区町村が独自に行うことになりました。

2.介護保険サービスよりも少ない負担で、多様なサービスが利用できます

「介護予防・生活支援サービス」は、介護保険サービスではないため、介護保険の審査は受ける必要がありません。訪問員による調査や主治医の診断書は必要なく、簡単なチェックリストだけで判定されます。その結果に基づいて、地域包括支援センター(介護の無料相談所)で利用計画を作成し、サービスを利用します。
介護予防・生活支援サービスでも、ヘルパーに自宅に来てもらう訪問介護とデイサービスに行く通所介護は、今までと同じように利用できます。その他にも、配食や見守りなど、今まで介護保険サービスになかったものも対象になります。

介護予防・生活支援サービスの利用料は、今後下がっていくものと思われます。所得によって1割または2割負担という負担割合が下がるのではありません(2018年8月からは3割負担となる場合もある)。今までは参入が認められていなかったボランティア団体やヘルパー資格を持たない人も、低料金で業務ができるようになるからです。もっとも、制度が変わったからといって、急に参入者が増えるわけではなく、当面は今までと変わりないでしょう。ボランティア団体などによる簡易な介護サービスは、これから徐々に広がっていくものと思われます。

3.従来の介護認定を受けることもできます

注意したいこともあります。今までの要支援の人が利用できたサービスのうち、「介護予防・生活支援サービス」に移行したのは、訪問介護と通所介護だけです。看護師に来てもらう「訪問看護」や短期のお泊りである「短期入所生活介護(ショートステイ)」、自宅をバリアフリーに改修する「住宅改修」などは、依然として介護保険サービスのままです。
よって、これらを利用するには、介護保険の審査を受けて「要支援」の認定を受ける必要があります。この認定を受けていれば、「介護予防・生活支援サービス」も利用できますので、こちらの方が利用できるサービスは広くなっています。

介護サービスの利用申請があると、本人の希望を聞いた上で、介護保険の審査を受けるか、簡単なチェックリストによる判定を受けるか、窓口で提示されます。ただ実際は、申請した人もよく理解しないままチェックリストによる判定を受けているケースもあるようです。

利用したいのが、訪問介護と通所介護だけであれば問題ありませんが、「看護師に訪問してほしい」などの介護保険によるサービスを希望されるようでしたら、手間はかかっても介護保険の審査を受けなければなりません。お父様の状況と希望のサービスを明確に伝えて、必要な手続きをしてください。