夫の会社の退職金制度が廃止。 老後資金が心配です。


夫の会社の退職金制度が廃止。
老後資金が心配です。

鈴木 暁子先生 (すずき あきこ) プロフィール
  • 会社の退職金制度を再度確認しておきましょう。
  • 住宅購入と老後資金は総合的に判断しましょう。

坂井 美帆さん(仮名 34歳 専業主婦)のご相談

現在中古マンションのローンを返済中です。 定年前に現金一括で私の実家に一戸建て(3,000万円程度)を購入したいのですが、昨年から夫の会社の退職金制度が廃止になり老後の資金が心配です。 今月から財形年金をはじめましたが、毎月どれくらい貯金に回せたら希望どおりの資金を貯められるのか教えてください。

坂井 美帆さん(仮名 34歳 専業主婦)のプロフィール

家族構成 : 夫 35歳 会社員(退職予定年齢:65歳)
妻 34歳 専業主婦
第1子 2歳
5年後に第2子を予定
住居 : 持ち家(住宅ローン返済中、平成25年末に残債一括返済予定)
退職金、年金について : ・昨年会社から「退職金制度が廃止になる」と通達があり、それまでの一 部を適格退職年金の一時金として支給された。
・厚生年金基金制度はあり、毎月の給与から保険料を天引きされている 。これは、老齢年金に上乗せされるものなのか?
・厚生年金基金は約23万円と試算。

※以下「ボーナス時、臨時」は年間合計額(単位:円)

【収入(税引き後手取り】
毎月 ボーナス時、臨時
490,000 600,000
妻(障害年金) 50,000
収入合計 540,000 600,000
【支出〈固定費)】
毎月 ボーナス時、臨時
住居維持費 35,000 210,000
車維持費 15,000 160,000
住宅ローン 32,000 304,400
保険料 17,600 227,000
第1子関連費 10,000 0
小遣い 70,000 150,000
固定費合計 179,600 1,051,400
【支出(やりくり)】
食費 50,000
水道・光熱費 17,000
通信費 22,000
交際費 5,000 300,000
教養娯楽費 5,000
その他 28,000 200,000
使途不明金
やりくり費合計 127,000 500,000
支出合計 306,600 1,551,400
【貯蓄】
商品名 毎月貯蓄額 ボーナス時、臨時貯蓄額
財形一般 50,000
財形年金 10,000
こども積立 25,000
普通預金 15,000 600,000
貯蓄額合計 100,000 600,000
【貯蓄残高】
商品名 合計
財形一般 1,500,000
財形年金 20,000
ゆうちょ定期貯金 1,000,000
こども定期預金 400,000
投資信託 300,000
普通預金 1,000,000
貯蓄残高合計 4,220,000

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1.退職金、企業年金の制度を確認しておきましょう

坂井さん、こんにちは。投資環境の悪化で企業が独自で年金の運用を行うことが難しくなり、ここ何年かで多くの企業が退職金や企業年金制度について廃止または変更をしています。とはいうものの、制度のしくみを理解している社員は少なく、企業側もしっかりフォローできていないのが現実です。まず制度自体のお話をしておきましょう。下図をご覧ください。

【年金制度】

国の年金制度は20歳以上の国民に加入義務がある「国民年金(基礎年金)」のほか、会社員であれば厚生年金保険などの「被用者年金」、さらに企業で制度を導入していれば、厚生年金基金、税制適格年金、確定給付企業年金などの「企業年金」があるので、いわゆる「3階建て」と言われています。

今回ご主人様の会社で退職金制度が廃止されたというのは、「適格退職年金制度」のことですが、実はこの「適格退職年金制度」は制度自体が廃止されることが決まっており、制度を導入している企業は廃止期限である平成24年3月31日までに、「廃止」か「他の企業年金制度への移行」が義務付けられています。
ご主人様の会社ではこの制度を「廃止」したため、これまでの積立金を従業員に一時金として分配したわけです。

ただ、現在保険料を天引きされている厚生年金基金も3階建て部分ですので、「厚生年金基金は老齢基礎年金+老齢厚生年金にさらに上乗せされるものなのか」という美帆さんの理解は正しいです。

では将来の年金予想額について試算してみましょう。

【ご主人様の年金についての前提条件】(現在の価格、乗率で試算)

加入期間 : 平成10年4月~平成53年8月(520ヶ月)
平成15年3月までの平均標準報酬月額 : 30万円
平成15年4月以降の平均標準報酬額 : 45万円 と仮定
報酬比例部分 : 30万円×7.125÷1000×60月≒12万円
45万円×5.481÷1000×460月≒113万円
定額部分 : 1,676円×1.000×480月×0.985=792,412円≒79万円
企業年金 : 約23万円(いただいたデータより)

美帆さんご自身でも現在の給与水準で
老齢基礎年金+老齢厚生年金≒約175万円
企業年金≒約23万円
と試算していらっしゃいます。私の試算のほうが多めになっていますが、これは標準報酬月額や標準報酬額の仮定の違いです。

ただ、いずれにしても正確には入社してからの標準報酬月額あるいは標準報酬額を用います。またご夫婦の年金支給年齢までは30年もあります。今後制度自体に改正があるかもしれませんので、試算はあくまで目安として考えてください。

2.現在の家計管理が継続できれば、将来の住宅取得は問題ありません

定年前の住宅取得を前提に、坂井家のキャッシュフローを見てみましょう。第2子についてはまだ確実ではないとのことですが、とりあえず支出の多いケースでみておいたほうが良いので、お子様は2人として試算しました。

<坂井家の家計推移のキャッシュ・フロー表を別ウィンドウで表示>

こちらからの質問への回答も早く、きちんと家計を把握できている方だろうと感じたとおり、ご夫婦のお小遣いを月7万円確保しつつ年間で180万円、収入の25%を貯蓄に回せているのは見事です。財形や子ども積立を利用するなど、無理なく確実に貯められるしくみを確立していますね。キャッシュフローでもおわかりのように、現在のペースで家計管理ができれば、現金一括で住宅購入も可能でしょう。

ただし、今回のキャッシュフローは最低限の支出しか見積もられていません。お子様もまだ小さいですし、車の買い替え、家族旅行、自宅の修繕など、今後多くのライフイベントを控えているため、まとまった資金を必要とする場面はもっと多いはずです。今回のキャッシュフローにそれらを反映させると、より現実的なキャッシュフローとなります。

また住宅購入を検討するにあたり、実はもうひとつ注意していただきたいことがあります。次項でお話しましょう。

3.老後資金も現状では問題ありません。ただし終の住処のことも考えて

老後資金がどれだけ必要かについては、基本的に「毎月の赤字」と「終の住処をどうするか」を目安にすると良いでしょう。
毎月の赤字というのは、生活費と年金額の差額のことです。現在も堅実な生活を営んでいらっしゃいますし、末のお子様が独立した後の生活費を4人家族だった頃の7割程度で見積もった場合、毎月約20万円。先ほど美帆さんが試算した年金額(念のため少ないほうの金額を採用しましょう)は毎月約16.5万円。つまり毎月3.5万円の赤字となります。それが最低90歳くらいまで25年続くと約1,050万円です。生活レベルはこの差額を目安に調整すると良いでしょう。

また、お若い世代ではなかなか気づきにくいのが、「終の住処をどうするか」によるものです。実はこれは介護問題と切っても切れない関係にあり、いわゆる住居という箱モノだけではなく、介護費用を見積もらなければいけないということなのです。

たとえば美帆さんご夫婦がお元気なうちは、退職前に購入したご自宅で暮らす予定ですが、もしどちらかが要介護状態になった場合、そして最終的にどちらかがお1人になった場合、そのまま自宅介護をされますか?あるいは介護付き老人ホームへの入居を検討しますか?

重度の介護状態の場合、公的介護保険の1割負担分だけではとても足りませんので上限を超えた時は全額自己負担となり、年間数百万円かかることも珍しくありません。それなら施設に入居しようと思っても住み替え費用は当然かかります。

どこに住みたいのか、どのような生活をしたいのか、どのような介護をしてもらいたいかなどによって老後資金も違ってきます。とはいうもの今から30年以上先の話ですので、具体的な数字を出してもちょっと非現実的ですよね。今はこのようなことを考慮しなければいけないんだな、ということに気づいていただき、具体的には40代半ばの頃にその時点の情報や環境、制度を基に検討すると良いでしょう。

その時点であれば、まだ住宅購入もしていませんし、可能であれば美帆さんがパートで収入を得たり、生活を見直すなど、まだまだ多くの選択肢が残されています。現在は住宅購入と老後資金を分けて考えていらっしゃいますが、「本当に住宅購入をするか?購入する場合も価格の見直しは必要ないか?」など、総合的に判断してください

4.奥様の保険を手厚くしましょう

坂井家は保険の加入状況も上手だと思います。貯蓄できる家計ですので、すべてを保険に頼る必要がないということが大きいのです。私もいつも申し上げるのですが、「保険は万が一のことがなければ給付されませんが、貯蓄は万が一がなければその分他のことに使える」ので、今後もこのスタンスを継続していかれると良いですね。

【坂井家の保険加入状況】

(円)

種類 保険金額 保険期間 年間保険料 払込期間

【夫】

がん 日額1万 終身 28,042 終身
医療 日額1万 終身 45,180 終身
死亡 現在3,099万→59歳時754万→60歳時 0 60歳まで 60,060 60歳まで

【妻】

がん 日額1万 終身 30,720 終身
医療 日額6千 60歳まで 19,200 60歳まで

ご主人様の死亡保障は逓減型ですので59歳時には754万円までに下がります。先ほどのキャッシュフローでその後のご主人様の収入をゼロとした場合、当然収支は大きく赤字になりますが、貯蓄があるので2人目のお子様がいらっしゃった場合でも進学や生活に影響を及ぼすことはなさそうです。

ご主人様に万が一のことがあれば、3,000万円かけての住宅取得も見直されると思いますので、その後の奥様の生活もご自身の年金と貯蓄で十分まかなえるでしょう。

ただ、奥様の医療保障が60歳で終わってしまうのが気になります。60歳時からの新規加入や更新はかなり高額になりますので、終身医療保険を検討してはいかがでしょうか。最近は先進医療特約が付けられる保険も増えています。家計のやりくりがお上手ですので、早めに払込を終えたいというのであれば保険料は少し高めですが60歳払込終了を、保険料を抑えたいということであれば終身払いを選択すると良いでしょう。

また、一般的に「専業主婦に死亡保障は不要」と言われますが、坂井家の場合はお子様が小さいですよね。ご夫婦のご実家も遠く、美帆さんに万が一のことがあった場合、お子様の面倒を見てもらうためのベビーシッターさんを頼むなど、意外にお金がかかる可能性があります。

葬儀代を貯蓄でまかなえるのであれば共済系の定期保険でもかまいませんが、最近は「低解約返戻金型」と呼ばれる解約返戻金が少ない代わりに割安な保険料で加入できる終身保険もありますので検討してみましょう。

5.現在の家計管理を継続しつつ、良い使い方も大切に

この年代でしっかり家計を把握し、なおかつ老後資金まで見据えている方はなかなかいらっしゃいません。現在の家計管理を継続していかれれば今後も健全な家計を築いていかれると思います。

ただし前項でも述べましたように、まだお若い世代のため

  1. キャッシュフローには反映されていないライフイベントが多い
  2. 30年後の老後については、制度も物価も今とは違う可能性が高い

ということが、具体的なプランが難しいところです。

しかし美帆さんは家計管理の本質を理解されていますので、時代や家族の成長に応じて臨機応変に見直しができる方だと思います。今後は多くの情報を取り、それを家計管理やライフプランニングに活かしていきましょう。

お子様の成長とともに家族で作る時間や楽しみのために、「どこまで貯めるのか」だけではなく、「どこまで使って良いのか」というのも考えられるようにしてください。

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