息子夫婦が高額なマンションを購入するというのですが、ローンの返済は大丈夫でしょうか?


今回、回答いただく先生は…
村井 英一先生(むらい えいいち) プロフィール
  • 低金利のおかげで、返済の負担は大きくありません。
  • 住宅ローン減税で、高額な物件の購入の方がお得になっています。
  • 変動金利ローンの場合は、金利上昇のリスクがあります。

  佐藤 昌子さん(仮名 63歳 主婦)のご相談

息子夫婦が今年、マンションを購入すると言っています。マイホームを購入してもよい年齢だと思いますが、その計画を聞いて驚きました。なんと6,000万円ものマンションを考えているそうです。夫婦共働きとはいっても、二人ともそれほど収入が高いわけではありません。こんなに高額な物件を購入しても、返していけるものなのでしょうか?

佐藤 昌子さん(仮名)のプロフィール

家族構成
家族 年齢 年間収入
ご相談者 佐藤 昌子さん 63歳(主婦)
息子さん家族 世帯主(息子さん) 35歳(会社員) 年収400万円
配偶者 30歳(会社員) 年収350万円
長女 3歳
貯蓄額 380万円
マンションの
購入計画
  • 物件価格:6,000万円、諸費用:400万円
  • 当初の負担額:諸費用の400万円。物件費用は頭金なしで、全額ローン
    (自己資金0円、夫の親からの援助200万円、妻の親からの援助200万円)
  • 住宅ローン:6,000万円、35年返済、変動金利、元利均等払い

現在の低金利で高額な物件の購入が可能になりましたが、変動金利にはリスクがあります。

1.毎月の返済額はそれほど大きくありません

「たいした稼ぎもないのに、高級マンションとはなにごとだ。せめて2割の頭金を貯めてからにしなさい」とご主人様が怒鳴られたとのこと。それでも資金援助をされるというのですから、ご主人様も援助をしてあげたいとお考えなのですね。

若い息子さんご夫婦が無理な計画を立ててしまっているのではないか、とご両親様がご心配なのもよくわかります。ただ、長引く低金利のおかげで、住宅購入をめぐる状況はかなり変わっています。高金利でローンを組んだバブル世代からすると、最近の購入価格の上昇は驚かされるのですが、実は返済の負担はそれほど大きくはないのです。

息子さんご夫婦の場合、世帯年収は750万円です。無理なく返済できる住宅ローンの返済額を年収の25%までとすると、年間の返済額は187万5,000円までに収めたいところです。
バブル時代は住宅ローンの金利が5.5%程度(固定金利)でした。その場合、毎年の返済額を187万5,000円に収めるとすると、住宅ローンは最大で2,900万円程度までとなります。(35年返済、固定金利で計算)頭金を2割用意しても、3,000万円台が限界でした。
一方、低金利の今は、変動金利であれば、0.475%前後で住宅ローンを組むことができる状況です(金融機関によって異なります)。0.475%が続く前提で計算すると、年間の返済額を187万5,000円までに抑えても6,000万円程度まで住宅ローンを組むことができます。6,000万円のうち、1/3の2,000万円をボーナス返済とすると、毎月の返済額は10万3,000円程度、ボーナス返済が1回31万円程度となります。(35年返済、金利が変わらないものとして計算)
息子さんご夫婦にしても、けっして無理なく返済できる金額ではないでしょうか。このように、金利が低くなったおかげで、バブルの頃と比べると倍近い物件が同じ程度の負担で購入できるようになっています。

2.なるべく大きくローンを組んだ方が、税制面ではお得になります。

住宅を購入するために住宅ローンを組むと、住宅ローン控除が適用されます。いろいろな制約や上限額がありますが、住宅ローンの残高が大きいと減税額が大きくなる傾向があります。そのため、住宅ローンを大きく組む人が少なくありません。
住宅ローン控除の概要を見てみましょう。自宅を購入するために住宅ローンを組んだ場合、年末のローン残高の0.7%分(2022年度より)、所得税が減税となります。ローン残高には上限があり、新築の場合は一般の住宅が3,000万円、省エネ基準適合住宅で4,000万円、長期優良住宅・低炭素住宅は5,000万円までとなります(2022年、2023年の場合)。減税が適用されるのは、新築住宅の場合は13年間となっており、ローン残高が高い水準で続く方が減税額は大きくなります。
このため、「高い物件を購入して、住宅ローンをできるだけ大きく組んだ方が得だ」という認識が生じています。確かに税金の面からはこのようなことが言えるのですが、減税となるのは支払っている税金の範囲内のことですし、税金面の損得だけで自宅の購入を決めるものでもありません。

3.リスクはあります

「大きくローンを組んでも返済の負担はそれほど大きくない」「ローンを大きく組んだ方が税金面で有利だ」とはいっても、やみくもに大きく組んでよいわけではありません。ローンを返済できなくなっては元も子もないからです。返済ができなければ、担保となっている自宅が差し押さえられてしまいます。そこまで行かなくても、返済が厳しくなると、家庭がギスギスし、お子様の進路に影響を及ぼしてしまう可能性もあります。

一番の懸念材料は、金利の上昇です。先ほど計算した0.475%は変動金利です。変動金利は半年ごとに金利が見直されますので、今後の経済状況によっては、返済している間に返済額が上昇していく可能性があります。返済額の変更は5年ごとですが、金利が上昇すると元本の返済が少なくなり、後の負担が増加します。
元本の返済がある程度進んだ後であれば、金利が上昇した場合でも返済額の上昇はそれほど大きくはありません。しかし、返済が始まってから早々に大きく金利が上昇した場合は、返済の負担が大きくなりがちです。
最近の状況を見る限りでは、固定金利が上昇しても変動金利の方は低いままで上昇する気配がありません。日本銀行が政策で金利を低く抑えているためだと言われています。ただ、この状況がいつまで続くかは何とも言えません。息子さんご夫婦が、最近の見通しに基づいて購入の計画を立てているのであれば、予想外の状況となった場合に返済が行き詰ってしまいかねません。
息子さんご夫婦には、予想外に金利が上昇し、返済が難しくなった場合にどうするのかを尋ねてみるとよいでしょう。その場合の対応策を用意されているのであれば、この物件価格でも問題はありません。しかし、対応策がないのであれば、固定金利を選んだ方がよいでしょう。固定金利を選択すると適用される金利が高くなりますので、ローンの上限額が小さくなります。

ちなみに、固定金利の場合、フラット35の利用で最近の金利は1.7%前後となっています。この金利で年間の返済額を187万5,000円までに収めるには、住宅ローンは4,900万円程度までに抑える必要があります(35年返済、固定金利)。頭金がない場合は、物件価格もこのぐらいが限度となります。


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