自営業で毎月の収入が安定しません。 住宅購入と老後資金のアドバイスをお願いします。


自営業で毎月の収入が安定しません。 住宅購入と老後資金のアドバイスをお願いします。

宮塚 達夫先生 (みやつか たつお) プロフィール
  • 所有マンションの不動産価値を調べてみましょう
  • 収入が一定でない前提で、余裕のある返済方法を選択しましょう
  • 老後資金の準備には、公的制度を上手に活用しましょう

万田 徳子さん(仮名 28歳 専業主婦)のご相談

現在第二子を妊娠中の専業主婦です。
主人は自営業で、月の収入は50万円程ですが、安定していません。
現在両親から1,400万円を借りてマンションを購入して暮らしていますが、子供が大きくなったら手狭なので、今のマンションを賃貸に出して新居を購入しようと考えています。毎月の収入が不安定なのにローンを組んでも大丈夫なのでしょうか?
子供の教育資金も不安ですし、老後資金も国民年金だけでは不安です。
主人の仕事は60歳から65歳位まで続けるつもりで、下の子供が1歳になったら私もパートの仕事をするつもりです。
老後は毎月23万円あれば暮らしていけると考えています。
アドバイスをお願いします。

万田 徳子さん(仮名 28歳 専業主婦)のプロフィール

家族構成 : 夫 28歳 自営業
本人 28歳 専業主婦
長女 1歳

(単位:円)

収入 500,000
両親への返済 100,000
積立保険 40,000
保険 10,000
国民年金他 70,000
生活費 100,000
マンション管理費他 30,000
支出 350,000
普通預金 50,000
余剰金 100,000
両親からの借金残債は1,200万円で、毎月10万円を返済。現在の貯蓄額は430万円、先月の収入と支出は上記の通り。

両親からの援助が受けられれば、住宅ローンは最低限に。
老後資金作りは、保険や年金基金などを組み合わせて。

サラリーマンや公務員のように将来の収入が予測できない自営業であるため、将来の生活設計に不安を感じるお気持ちはよくわかります。しかし、現代社会においてはサラリーマンといえども、会社の倒産やリストラなど一寸先は闇といったケースも多いのが現状です。
また、以前は年功序列で年齢とともに増えていった賃金も、成果報酬型へと変わりつつあるのが現状で、自営業に近づいているともいえます。確かに、厚生年金制度などの社会保障は手厚いですが、企業年金自体が崩壊している例だってあるのですから、決して安泰とは言えません。
それに比べて自営業は頑張れば頑張っただけ収入が増え、しかも青天井です。
苦労は多いかも知れませんが、あくまでもポジティブ思考で将来を考えたいものです。
しかしながら、企業の事業計画もそうであるように、むやみやたらに設備投資をすればいいという訳ではありません。綿密な事業計画に基づいたものでなければいけません。万田様のような自営業の場合、事業計画と家族の将来設計が運命共同体なので、より緻密な計画性が必要ともいえそうです。
今回は計画立案にあたってのいくつかの注意点を考えてみましょう。

所有マンションの周辺調査をしましょう

万田様の計画では、現在お住まいのマンションを賃貸に出すことを計画されていますが、賃料の相場はどうでしょうか?毎月いくらの賃料が入るかによって、住宅ローン返済の負担度がまったく変わってくるので、綿密な調査が必要です。
下記の点に注意してください。

  1. 築年数
  2. 駅から徒歩何分
  3. 間取り
  4. 周辺の賃料
  5. 周りの物件の空室率

これらは賃料に大きな影響があるからです。
仮に現在10万円の家賃で貸し出すことが可能であったとしても、ご両親からの借金を完済するまでには10年間変わらぬ家賃で貸し出す必要がありますが、はたして10年後の築年数で同じ家賃を取れるのでしょうか?
駅から至近距離の場合、それほど家賃は下がりませんが、遠ければ遠いほど築浅物件に目が移るものです。
また近隣に大学があって学生が多い街なのに、ファミリータイプの広い間取りであるとか、逆にファミリー需要が多い街なのにワンルームマンションである場合なども、借り手が見つからず空室率が高くなってしまうことがあります。
そんな場合不動産管理会社から、サブリースと呼ばれている一括借上げシステムを勧められる場合があります。一定の手数料を払えば、実際には借り手が見つかっていなくとも家賃を保証しますよと、まるで夢のようなお話です。保証期間は築年数によって様々ですが、10年から30年保証しますという売り文句が多いようです。

しかし、ここで注意しなければならないのは、10年あるいは30年間同じ家賃を保証してくれる訳ではないのです。通常は2年毎に保証家賃の見直しをするのが一般的なので、空室が多い物件の場合当然保証される家賃が2年毎にどんどん減っていくことになってしまうので、注意が必要です。
また空室率が高いということは、売却を検討した時に売り手が見つからない危険性があるので、周辺の不動産事情を綿密に調査した上で、売るタイミングを逃さないことも重要です。
この調査で培った目は新居購入時においても大いに役立つはずです。

複数のキャッシュフロー表を作りましょう

所有マンションの調査が終わって、大まかな将来の家賃収入がわかったら新居購入に向けた資金計画をたてましょう。
万田様は収入が不安定だからという理由で、長期ローンを組むことを躊躇されていますが、タイミングを後にずらせばずらす程、ローン完済が遅くなってしまい得策ではありません。自営業なので退職金はありません。年金でローンを返済するなんてことは絶対に避けたいものです。
ましてや現在の超低金利を見逃す手はありません。
ローン審査をパスするということは金融機関から「万田様は返済能力がある方です」というお墨付きをもらったということなのですから、返済が滞ってしまったらどうしようとか心配せずに、逆に繰り上げ返済計画でも考えていただきたいものです。
もちろん、ローンが払えずにせっかく購入した新居を手放すようなことがあってはなりません。いくら銀行がこれだけ貸せますと言ってきても、毎月無理なく払える返済額にしておかなければなりません。

そのために有効なのは、複数のキャッシュフロー表を作成してみることです。キャッシュフロー表とは将来の資金計画表のことですが、エクセルなどの表計算ソフトで簡単に作成することが可能です。
本来はご自身で数字をいじくって様々なシミュレーションをするのが最も効果的ですが、住宅ローンを組む金融機関でもサービスで提供してもらえます。
そしてポイントは、収入、借入金額及び返済方法を数種類ずつ作成して、万田様の収入が現在よりも減ってしまった場合や、将来金利が変動した場合でも返済できるくらい余裕のある借入金額、返済期間、返済方法を選択することなのです。
また万田様の場合は、急に収入が増える場合も想定でき、その場合にはいつでも繰り上げ返済できるように、繰り上げ返済手数料がかからないローンを選ぶといいでしょう。

万が一返済に困ったら

綿密な計画のもと組んだ住宅ローン、それでも返済に困ることだってないとは限りません。そんな場合に最悪の行動は沈黙を貫いて、引き落とし不能月が連続してしまうことです。返済が難しいと感じたら、すぐに金融機関に連絡してください。大抵の場合は相談に乗ってもらえます。それでもダメな場合は、ご両親に泣きつきましょう。元々マンションの購入資金を貸してくれたくらいですから、ひょっとしたら前の返済が終わってなくてもまた貸してくれるかもしれません。

ここで大事な注意点をひとつ。
現在お住まいのマンションの購入資金を借りたときもそうなのですが、金銭消費貸借契約書(借用書)を作成していますか?もし作成していなければ、すぐに作ってください。
贈与とみなされて、贈与税がかかってしまう恐れがあるからです。
金利などは設定しなくて構わないので、「誰から誰にいくら貸して、こうやって返済します」といった簡単な書類で結構です。
仮に1,400万円が贈与と認定されてしまうと、475万円もの贈与税を払わなくてはなりません。

できれば住宅ローンを組む前にご両親に相談してみましょう

厚かましい、いくら親子でもそんなこと言いだせない、今借りているお金だってやっと貸してもらってまだ返していないのに、というようなお考えをお持ちでも、「今度マンションを買った友達から聞いたんだけど、住宅購入資金の贈与って税金がかからないんだって!」とさりげなく切り出してみてはいかがでしょうか。
いずれは相続で引き継ごうと思っている財産を、子供や孫が一世一代の大きな買い物をしようとしている時に役立ててあげられたら本望だと、切々と筆者に話してくれたお爺さんもいます。
現在両親や祖父母から20歳以上の子供や孫に対する住宅資金の援助(贈与)については優遇特例が設けられており、平成25年の場合、一般住宅で700万円、省エネ性または耐震性の基準を満たす住宅(優良住宅)では1,200万円までの贈与が非課税となっています。贈与の基礎控除額110万円と合わせて優良住宅なら1,310万円まで贈与を受けても税金がかからないのです。 うちの親はお金がないと思っていても、隠された財産がひょっこり出てくる場合もあるので、まずは口に出してみてはいかがでしょう。
但し、この制度を利用する場合には細かい要件があるので、必ず専門家に相談してください。

教育資金は学資保険で

教育資金は子供一人当たり1千万円かかるだとか、いろいろ言われていますが、実際のところは家庭によって様々です。子どものために教育資金を用意したくても、無い袖は振れません。奨学金制度もあり、なんとかなるのが現実ではありますが、やっぱりちゃんと用意したいと思うのが親心ですよね。
そんな目的にぴったりなのが、呼び方はいろいろですが、「学資保険」とか「こども保険」と呼ばれている商品です。
一昔前は郵便局の商品が圧倒的シェアを占めていましたが、民間保険会社の商品が高い貯蓄率を売りにして攻勢をかけています。しかし、今年の春ごろかんぽ生命の貯蓄率の高い新しい学資保険が認可されそうということもあり、今後商品選びは迷いそうです。

貯蓄率はさておき、学資保険のいいところは中学・高校・大学と、入学金などの費用が発生する時期に合わせて保険金が下りることにあります。学資保険の保険料を払っておけば、教育費に関しては大きな蓄えは不要と考えてもいいでしょう。
もちろん保険商品なので、さまざまな保障も必要に応じて比較検討することをお勧めしますが、シンプルな商品の方がわかりやすくていいのではないでしょうか。

国民年金の額を増やしましょう

万田様のような自営業者の場合、サラリーマンや公務員と違って、残念ながら老齢年金は1階建の平屋造りになってしまい
ます。
毎月23万円の老後生活費を確保するためには、年金支給開始年齢時までに少しでも多くの貯蓄を確保し、それを如何に上手に取り崩していくかが非常に大事なことですが、年金収入を増やして取り崩しのスピードを遅らせることも重要なのです。
年金支給開始年齢時の貯蓄を少しでも増やすためには、その年齢時まで仕事を続けることです。仕事の空白期間があると一気に貯蓄が減ってしまうからです。
貯蓄を減らすのは年金支給が始まってから、足りない分だけ少しずつにしたいものです。

現在の支給ベースでは、万田様の年金収入は二人合わせて月約13万円となり、毎月10万円の不足分を補う必要があります。そこで手っ取り早く年金額を増やせるのが、付加年金です。
月々400円の付加保険料をプラスして払うと、65歳から給付される老齢基礎年金に付加年金が上乗せされます。そして付加年金の年金額は

200円×付加保険料納付月数

となります。
万田様の場合60歳までの32年間付加保険料を納付することができます。
400円×12ヶ月×32年=15万3,600円
の納付保険料に対して、付加年金額は
200円×12ヶ月×32年=7万6,800円
となり、たった2年で元が取れてしまうのです。
90歳まで生きたとした場合、
7万6,800円×25年=192万円
の付加年金が貰えることになり、納付した付加保険料に対して
192万円-15万3,600円=176万6,400円
も得する勘定となります。何がなんでも毎月400円払うべきなのです。

しかしながら、増えた年金額は1人当たり7万6,800円、二人合わせても15万3,600円、月額1万2,800円しか増えません。
毎月10万円の不足分を補うには、まだ8万7,200円不足しています。
この額を貯蓄で賄おうとすると、90歳までの25年間で8万7,200円×12ヶ月×25年=2,616万円の貯蓄が必要で、100歳まで考えると3,662万円必要な計算になります。

国民年金基金の加入も考えましょう

付加年金は毎月400円という手軽な保険料ですが、もう少し余裕がある場合に考えていただきたいのが、国民年金基金への加入です。
ちなみに、付加年金を払っている人は加入できません
会社員や公務員など(第2号被保険者という)は、平屋造りの国民年金の上に自動的に厚生年金という2階部分が乗っかっており、その分将来貰える年金が増える仕組みになっていますが、万田様のような自営業者(第1号被保険者)は、2階建てにするかどうかは各個人の任意になっています。
2階建てにしようとする場合に最初に検討すべき年金が国民年金基金なのです。

国民年金基金は1口目の終身年金を15年間の保証期間ありにするか、保証期間なしを選択し、2口目以降はどちらかの終身年金にするか、給付期間や支給開始時期が異なる5種類の確定給付年金(いずれも保証期間あり)を組み合わせるかを月々6万8千円の掛金を上限に自分で選択することになります。ここで、保証期間なしの終身年金だけを選択して支給開始前に死亡してしまった場合、遺族一時金として1万円しか支払われず、それまでの掛金がパーになってしまうので注意が必要です。
また原則中途解約ができないので注意が必要ですが、その場合は減額などで凌ぐことをお勧めします。
因みに28歳の万田様ご夫婦がそれぞれ加入し、65歳から毎月5万円の年金を受け取ろうとした場合、1口目を保証期間あり終身、残り口を保証期間あり終身に3口加入します。
掛金はご主人が毎月2万1,450円、奥様が2万4,850円となり、それぞれ年金額60万円ずつが死ぬまで支給されます。
またすべてご主人名義で加入する場合は、2口目以降を保証期間あり終身に8口加入し、掛金は毎月4万2,900円で、年金額は120万円となります。
いずれにしても二人合わせて年間120万円、毎月10万円の不足分が解消されることになるのです。

超高齢化社会の到来とともに年金制度の存在自体が危惧されていますが、付加年金と国民年金基金は、国民年金そのものとは違います。インフレになったときにその年金の価値が低下してしまうというデメリットもありますが、将来の給付額が変動する可能性のない確定給付年金なのです。
日本国が倒産(デフォルト)しない限りは、安心です。
また国民年金基金の最も大きな特徴が、国民年金保険料と同じく、掛金が全額社会保険料控除の対象となることです。
仮に上記の例でご主人1人が加入し、月々4万2,900円の掛金を払った場合、年間51万4,800円の掛金に対して、所得500万円の場合、所得税の税率が20%、住民税が10%なので、
51万4,800円×(20%+10%)=15万4,440円
も税金が安くなるのです。
資金に余裕があれば是非加入されることをお勧めします。
また加入方法ですが、ご主人1人で加入した方が掛金も安く、税金の戻りも大きいのですが、保証期間が終わる80歳以降にご主人が先にお亡くなりになった場合、その後の年金がなくなってしまうので、加入する前にご夫婦でよく相談することが大切です。

まとめ

生活するにあたって一番大切なのは、ご家族でよく話し合って、せっかくある公的制度を上手に利用していくことです。
新聞やマスコミから、様々な不安を煽る報道が流れてきますが、まずはご主人様をはじめとしたご家族、次に日本という国を信じてみてはいかがでしょうか。住宅ローンを抱えた一家の大黒柱は、いざとなったら何をしてでも家族を守るものです。日本の経済だって、一時の異常なまでの元気はないですが、まだまだ元気です。そして常に目先の計画と長期的な計画に修正を加えていく柔軟性を持ってください。
万田様ご家族に、必ず幸せな未来がやってくると信じています。