高齢で厚生年金に加入して働く人が増えています。人手不足や人生100年時代をどう暮らすかの危機感もあり、被用者保険の適用拡大(厚生年金・健康保険)の改正が進んでいる背景が後押ししている様です。
私もマザーズハローワークで被用者保険の適用拡大に関連するセミナーをしていますが、主催者側から受ける注文もこれから老後を迎える人のために以下のように具体的になってきました。
ズバリ、「厚生年金・健康保険に加入するメリット、デメリット」は?
これまでは、会社員・公務員等に扶養されている配偶者(被扶養配偶者)が厚生年金・健康保険に加入して働いたときの世帯の「手取り」云々で加入の選択も多かったのが実態です。
しかし、これだけ人生が長くなり年金の改正も続く中、何がメリットか・デメリットかの認識には制度自体のしくみを正しく知ることも必要でしょう。今回は、時代が少しずつ動いている今、厚生年金期間がない、又は短い人の年金に絞って、厚生年金加入の効果についてお話しします。
そもそも被用者保険の適用拡大 とは?
働きたい人が働きやすい環境を整えると共に、短時間労働者に対して年金・医療の保障を手厚くする制度です。
※参照(2023年7月11日時点):厚生労働省 第4回社会保障審議会年金部会 資料3
厚生年金に加入するメリット ~ その1
ポイント
※参照(2023年7月11日時点):厚生労働省 第4回社会保障審議会年金部会 資料を参考に著者追加
厚生年金に加入するメリット ~ その2
ポイント 厚生年金期間が短い(40年未満) → 60歳以後働くと65歳以後の老後の年金増
厚生年金に加入すると65歳から老齢基礎年金に老齢厚生年金が上乗せされて支給されます。
今回は少し複雑ですが、厚生年金期間40年未満の人が60歳以後働くと年金が増えるお得なしくみについてお話します。ポイントは以下の2つ。
- ① 報酬比例部分=老齢厚生年金ではないこと
- ② 厚生年金に加入すると併せて支給される老齢基礎年金は、20歳~60歳未満の期間のみ。
◆国民年金のみだった男性Aさん(50歳)が65歳になるまで厚生年金に15年加入した場合
◆20歳から厚生年金加入中の男性Bさん(50歳)が65歳になるまで45年厚生年金に加入した場合
- ※事例は、67歳以下(昭和31年4月2日以降生まれ)の場合で試算(令和5年度)
- ※差額加算は年金事務所のデータの名称 (正式名称は経過的加算)
- ※差額加算額 = 定額部分の額 - 厚生年金期間について受け取れる老齢基礎年金の額
厚生年金に45年加入したBさんの差額加算は360円、厚生年金加入期間が短いAさんが60歳以後厚生年金に加入して支給される差額加算の効果が分かりますね。
事例は男性ですが女性も同じ考え方です。なお、厚生年金は70歳になるまで加入可能です。
厚生年金期間が短い場合、さらに差額加算が増えます。
老齢年金ガイド(日本年金機構)などのパンフレットは略してわかりやすく表現してあります。ちょっと気にして読み取っていただけたら幸いです。統計による未来は以下のように厳しそう、既に働き方を変えている人も増えています。
2040年に65歳以上は全人口の約35%に
人口ピラミッドの変化
※参照(2023年7月11日時点):厚生労働省 年金制度を取り巻く社会経済状況の変化
※参照(2023年7月11日時点):厚生労働省 第4回社会保障審議会年金部会 資料3
日本の人口は近年減少し、2065年には9000万人を割り、総人口に対する高齢化率は38%台になると推定されています。団塊世代が全て75歳となる2025年には、75歳以上が全人口の18%。団塊世代ジュニア世代が65歳以上になる2040年には、人口は1億1092万人に減少し、65歳以上は全人口の約35%になると推定されています。
団塊世代には支える団塊ジュニア世代がいますが、団塊ジュニア世代の支え手は減少します。
団塊ジュニア世代は、現在50歳前後(2023年時点で49~52歳)と人生の折り返し時点を迎えています。高齢で働くが当たり前になりつつある今、先取り知識で未来の働き方を今から意識しておくのもいいかも知れませんね。