リタイア後どこに住むかで健康寿命が変わる?~高齢者が元気な多摩市(東京都)で暮らす私の場合


長寿化により頭によぎる不安のうち断トツで多いのが介護問題でしょう。同居する家族や親族が自宅で介護をする在宅介護のうち、介護する側と介護される側が共に65歳以上の「老々介護」の割合が59.7%、共に75歳以上の割合が33.1%といずれも過去最高(厚生労働省・国民生活基礎調査 2019年)と公表(2020年7月)されました。危機は着々と迫ってきている感じです。若い世代も含め老後の危機感は増すばかりですが、統計結果を自分の未来に当てはめ、プラス思考で「今から自分にできることは!」と考えられる人が意外と少ないのは残念です。

今回は、多摩ニュータウン(※)一斉入居や団塊の世代が多いことにより、日本最速で進むと言われる高齢化率にも関わらず元気な高齢者が多い多摩市の現状についてお話ししたいと思います。多摩市の現状から推測される未来は日本の未来づくりの参考になりそうです。

多摩市は、連れ合いの最後の職場の退職を機に私たち夫婦が選んだ終の棲家です。親が満州からの引き揚げ者、連れ合いが転勤族だったという事情もあり、私が生まれてから29回目の転居地。今ではリタイア後の生活を満喫する毎日です。

※多摩ニュータウンは東京都の稲城市・多摩市・八王子市・町田市にまたがる多摩丘陵に計画・開発された日本最大規模のニュータウンである
<参考>フリー百科事典 ウイキペディア


多摩市の現状

多摩ニュータウン全体(多摩市・八王子市・稲城市・町田市)の高齢化率は約24.4% (都平均は約22.6%)ですが、多摩ニュータウンにおける多摩市の高齢化率は約30.4%とかなり高率です。多摩市の高齢化率の一因は1970年からのニュータウン開発により一斉入居したこと等が関係しています。

多摩ニュータウンの高齢化率
高齢化率
多摩市 30.4%
八王子市 20.8%
稲城市 19.4%
町田市 12.9%
全体の平均 24.4%
(参考 各市全域)
高齢化率
多摩市 28.3%
八王子市 26.8%
稲城市 21.6%
町田市 26.8%
平均 26.6%

東京都都市整備局 令和元(2019)年10月1日現在

1. 日本最速といわれる高齢化率 ~ 30年で5.4倍 (平成元年5.21%→平成31年28.1%)


平成31(2019)年1月1日現在(多摩市市民課)

2. 健康寿命の2つの存在

我が国では「健康寿命」のとらえ方としてa「日常生活に制限のない期間の平均」とb「自分が健康であると自覚している期間の平均」の2つ存在します。

よく使われる健康寿命は、a「健康上の問題がなく日常生活に制限のない期間の平均」。平均寿命から健康寿命を控除した期間が支援を必要とする期間(男性で約9年、女性で約12年)です。

日本の平均寿命と健康寿命a

平成28(2016)年

平均寿命 ① 健康寿命 ② 支援が必要な期間 ①-②
男性 80.98年 72.14年 8.84年
女性 87.14年 74.79年 12.34年

厚生労働省「第11回健康日本21(第二次)推進専門委員会資料

都道府県別健康寿命

2018年3月発表 (厚生労働省)

男性 健康寿命 女性 健康寿命
1位 山梨 73.21年 1位 愛知 76.32年
24位 東京 72.00年 38位 東京 74.21年
46位 秋田 71.21 46位 広島 73.62年

厚生労働省「第11回健康日本21(第二次)推進専門委員会資料~熊本地震により熊本県のデータなし

多摩市は元気な高齢者が多い

① 支援が必要な期間が短い

一方、人口約15万人弱の多摩市は東京保健所長会方式によるb「自分が健康であると自覚している期間の平均」である「65歳健康寿命(要介護2)」を使用しています。毎年の数値をすぐに算定でき、比較的小さな地域に対応可能な算定方式です。

「65歳健康寿命(要介護2)」は、65歳の人が要介護2以上の認定を受けるまでの状態を「健康」と考えて認定を受けた年齢を平均したもの。「65歳平均余命」は65歳の人の平均的寿命を示しています。多摩市は東京都平均と比べ支援を必要とする期間が短くなっています。上記の健康寿命の算定方法も考慮しても統計からみえる多摩市の高齢者の元気度が見えてきます。

65歳健康寿命 男性 都内1位 女性2位(要介護2以上)


出典:東京都福祉保健局

② 市民活動が活発

多摩市は人口10万人あたりのNPO法人数が、都内26市の中で2位(58.2法人 平成25年度)。
また、趣味の分野でも、演劇、歌、絵、習字、外国語、歩行、軽体操、スポーツ、文芸関係など受講生のレベルにあった指導者を選択可能など、都心に近いせいかその道のプロの指導を気軽に受けられる環境あり。
スポーツ音痴で高齢の私でも続けられる軽体操を近くの会場で、優しい先生、厳しい先生、楽しい先生、プロになりたい、健康維持等受講生の希望にあった幅広い選択が出来、また、受講料も安価です。お陰さまで、私も今では会場の場所取りを毎週引き受けて、若い先生や仲間に声がけしてもらえる嬉しさを糧に多摩市の平均的健康な高齢者になりたくて週2回軽体操に通っています。

③ 介護保険料が安い

3年ごとに変わる令和2(2020)年度の65歳以上(第1号被保険者)の介護保険料は、介護保険事業に必要な費用の23%を65歳以上の人口で除して決まるため、元気な人の多い多摩市の月介護保険料は4,809円(国平均は5,869円・都平均5,834円)と都内で2番目に低額となっています。

④ 要介護認定率 13.41%と都内で一番低い

要介護認定率とは、認定者総数に対する65歳以上(第1号被保険者)と40歳以上~65歳未満(第2号被保険者)の要介護認定を受けた人の割合です。多摩市の要介護認定率は都の平均17.8%に対し、都内で最も低い13.4%(平成30(2018)年2月末現在)です。

3. 元気が元気を呼び寄せる

日本最速で高齢化が進んでいる多摩市だからこそ、平成27年からはじまった「健幸まちづくり」の取り組みが、高齢化率約4割が予想される20年後に光を差してくれそうです。

高齢者が元気な町は、市の財政は勿論、続く世代にも元気を与えそうです。高齢者の末路が哀れでは、若者も幸せな未来像を描けないでしょう。元気な高齢者も増え社会環境も変わってきた例として、家電量販店のノジマは高齢者のスキルを「資産」と捉え、全社員を対象に80歳まで働ける制度を導入しました(2020年7月)。
勿論、住む地域で状況は異なりますが、老いも若きも自分が住む地域の現状を把握して今できることに取り組み楽しめば、「目から鱗」の未来が広がりそうです。