高齢者対象商戦が花盛り ~不安だから何か手を打っておきたい気持ちは分かるが・・・~

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不安だから何か手を打っておきたい気持ちは分かるが

私は自分の老後のためと仕事を兼ねて、時間が許す限り高齢者の住まいに関するセミナー受講や施設見学を重ねています。最近仕事の出先で「シニア向け分譲マンション」の広告を見掛けることが多くなったこともあり、2018年秋に自宅(多摩市)から1時間以内の施設を複数見学してきました。施設の売りは2点あり、「分譲マンション」として「入居者が亡くなったとき子等が相続できる」ことと、賃貸マンションとして貸しに出すことが可能な点です。入居者が亡くなると権利が消滅する「利用権」の介護付き有料老人ホームと異なる点です。

当初は、いつもの高齢者施設見学の気持ちでしたが、途中からシニア(入居対象が50歳以上)向けの不動産の販売と気づかされました。マンション販売の営業担当者が世話をするのは一般の住宅販売の現場と同じです。高齢期の高額な買い物に対する対応について高齢者の視点から気がついたことをお話します。

すべてが豪華 ~費用がかかっているので入居者の負担も大~

最初の施設見学当日の集合場所に集まったのは、70代後半・80代の5組の夫婦と単身参加の私を含めた女性参加者2名の計7組の12名。案内担当者は3名、手配された大型バスで展示場があるビル(マンションは現在建築中で2019年に完成予定なので、青田買いのマンション)へ向かいました。
約10分のマンション紹介をビデオで見るものの、1組の高齢夫婦の妻は画面に興味を示さず最初から居眠り状態。「元気な人が入居してレクレーションなどを楽しめる」が売りの物件の入居者にそぐわないスタートでした。

ビデオ鑑賞後、いきなり1テーブル1組に1人の担当者がついての説明になりました。現在の契約状況、入居後の管理料や食事代、高熱費など実費の説明など、若い担当者の声高の話し声でフロアは熱気ムンムン。周りを見回すとかなり具体的な話しをしている組もあったようです。とりあえず見学して実態が知りたかった身には、進行のテンポの早さに驚きました。
一般的に、高齢者施設見学では施設側が参加者全員への説明後、契約に進む人には個人対応の流れに慣れていた私は戸惑いました。

介護付き有料老人ホームとシニア向け分譲マンションとの違いのイメージ
介護付き有料老人ホーム等 シニア向け分譲マンション
権利形態 施設やサービスを利用する利用権
亡くなった場合、入居一時金の未償却分の還付あり。
売却・賃貸可能な所有権
(相続人が相続可能)相続した人が入居しない場合でも、管理費は発生。売却する場合、地域により売値の差あり

居室費用 (一般的に)
広さ: 13~18㎡
入居一時金: 平均1,000万円前後
月額: 20~25万円
最近は一時金なし、または低額にして月額コストが増える傾向(管理費・食費+生活費+介護サービス代等)
事例は42~70㎡台(1LDK~2LDK)
価格は、約2,900~5,300万円
月費用は以下に記載
介護サービス 特定施設介護サービス 外部の事業者と契約
暮らし 施設の決まりがある 自己所有のマンションなので生活は自由
自宅売却して、マンションを購入の場合 一般的には、自宅売却は個人で行い入居一時金など準備 自宅の売却と入居マンションの購入(売買手数料が不動産会社に2重に入るメリット有り)で営業が熱心になる
ポイント 施設により、入居要件内容はそれぞれ、要介護度・自立度・費用を考えて入居 ある程度元気なうちに入居して、マンションライフを楽しめる人に向いている。
シニア向けマンションの入居時の費用のイメージ(月・1人当たり)
金額 備考
管理費等・修繕積立金 約7万~11万円 部屋の広さ等で決定
食事代(1日3食で30日分) 6.6万円 3食食べる人は少ないとのこと
駐車場使用料 1万円前後 台数・置き場所等で異なる
    計 14.6~18.6万円 夫婦入居なら、費用確認もシビアにしたい
生活費・医療費・光熱費・通信費等 実費 暮らし方・健康度で異なる
介護が必要なとき(外部の事業者と契約) 利用した分だけ支払う

シニア分譲マンション入居の目的を明確にする

パンフレットには豪華なフロアのイメージも掲載され、少し広めの部屋にお風呂付きですが、体が弱ったときは外部の介護事業者との契約で介護サービスを受けるしくみです。大浴場(豪華)があるので部屋のお風呂を使う人は少ないとのことですが、ずっと大浴場を利用できる人ばかりではありません。
何より、まだ完成していないので、見学時はお弁当試食で食事の味を確かめられないのが難点。系列会社のマンションで試食は必須です。高齢期は食事が何より楽しみだからです。
シニア分譲マンションが広いとは言え自宅に比べれば狭い部屋です。そこに暮らす夫婦のいずれかが認知症などで介護が必要になった場合、配偶者は寝不足になる例もあります。体の自由が効かないとき、フロアの豪華さより機能的な部屋、介護体制の充実の方が嬉しいものです。
しかし、様子をみていると、70代後半、80代の人には目の前の素晴らしさの方が優先されるようです。高齢になると体力の衰えから深く考える力も気力も減退する傾向だからです。「イヤなことは考えたくない」の心も働くのかも知れませんね。

100歳くらいまでの収支表をざっくり作成してみよう

忘れてはいけないのが長期的視野にたった資金計画です。長生きの時代、高額な継続的支出リスクが存在します。一般的に自宅を売却してマンション購入にあてる人が多いようですが、月支出分を現在の資産と年金等で賄うため、せめて100歳くらいまでの収支表を作成してざっくりイメージしておきたいものです。

介護付き有料老人ホーム入居者で預貯金が1,500万円以上あったのに、年金が少額だったので退去せざるを得なかった例もお聞きしています。年金額が少ない場合、月経費との差額が増え途中で資金が底をつくことも。夫婦入居なら遺族年金額を試算した資金計画も必要です。なお、分譲マンションは所有権なので子等に相続できますが、場所によっては中々売却できないケースもあるため、景気に影響される不動産の立地や今後の不動産環境も調べておきましょう。相続しても売却できない場合、子等に管理費等が発生します。

高齢者も「お任せでない生き方」を身につけておきたい

高齢者施設の見学は、施設やシニアマンションの特徴を理解した上で、各種の疑問に対応できる元気なうちに見学しておく必要があると実感しました。シニア向け分譲マンション暮らしを楽しんでいる人は、皆さんお元気でそれなりに豊かな人です。楽しめばお元気になることもありますが、今現在、体力や判断能力が衰えている人が、マンションライフを楽しめるかというと難しいこともあります。
個人的には、50歳から入居可の施設のメリットを生かすとして、元気なうちのシニアマンションライフコスト(大)・楽しみ度と、交通の便などが良い自宅での暮らしにかかるコスト(小)と楽しみ度を比較しつつ、あと少し様子見に徹したいと思います。

また最近、高齢者施設セミナーやマンション見学後に、不動産賃貸投資のお誘い、死後身元引受人や保証人がいない人などが入会できる会からお手紙が届き、高齢者の囲い込み商戦が目立ちます。他から働きかけるオレオレ詐欺などと異なり、自分から動いた結果のお誘いなので、高齢者も自分の考えで判断する対応力が求められます。「老いては子に従え」「企業の広報の視点がすべて」的な考え方で高齢社会を乗り越えていくには厳しい時代になったことを肝に銘じておきましょう。