第94回:身近な金(GOLD)、資産運用や個人資産として注目される理由は?


ここ数年、「金(Gold)」が個人にも注目されています。もともと金は、指輪やネックレス、ブレスレットなどジュエリーとして持っている人も多く、また近年では、金ETFや金鉱株ファンドといった金投資商品としても気軽に利用することができ、より身近な対象となっています。今回のコラムでは、身近な金(Gold)に焦点をあて、FPの視点から資産運用や個人資産に関するポイントについて解説したいと思います。

金価格が上昇、どうして金が買われているのか?

近年、金の国際価格は、過去最高の高値を更新し続け、1トロイオンスあたり1,400ドル台も突破しました。一般に金は、外国為替市場と同じように、世界中で24時間取引されており、現物取引の中心はロンドン、先物取引の中心はニューヨークで、1トロイオンス(約31.1グラム)あたりのドル建てで取引が行われています。また、日本では、これを1グラムあたりの円建てに換算して、取引価格が決められています。

<ロンドン金価格の年次推移グラフ(単位:米ドル/トロイオンス)>

※ロンドンの金価格(現物)の年間の最高価格・最低価格・平均価格をグラフ化

ここ数年、金価格が上昇を続けている理由(要因)は、2007年のサブプライム・ショックや2008年のリーマン・ショック、その後の世界的な金融危機を経て、基軸通貨の米ドルへの不信や欧州の信用不安などにより、信用リスクのない実物資産の金が注目されたことがあります。また、今日において目覚ましい経済発展を続ける中国やインドなどの新興国の需要増(装飾品やアクセサリーなどの宝飾品需要の拡大)や将来のインフレ対策、それに加えて、世界的な過剰流動性を背景とした金ETFや金先物への大量の投資マネーの流入などがあります。

このように複数の要因により、世界的に金が欲しいという人が大幅に増えて、金価格が上昇し続けているわけです。ちなみに、英貴金属調査会社GFMS社が発表した『世界金需給に関する調査報告(Gold Survey2010)』によると、2009年は、1980年以降はじめて投資需要が宝飾品需要を上回り、「宝飾品需要」は前年比20%減少の1759トンに対して、「投資需要」は190%増加の1901トンになったとのこと。これは、過去30年で最高水準の金需要となり、投資マネーの強力な資金流入によって、金の需給構造にも変化が生じているとのことです。

金の用途
冒頭に記したように、金の用途として、古くから装飾品やアクセサリーなどがあります。また、意外と知られていないことですが、金には電子部品としての需要もあり、パソコンや携帯電話の中に組み込まれている半導体の基板などにも使われています。

金の特徴や魅力は何か?

最近は、資産保全や分散投資といった視点から、個人資産の中に「金」を組み入れることに関心を持つ人も増えています。一般に「金」には、以下のような特徴や魅力があり、ここで今一度確認してみましょう。

第一に、金はそのもの自体に価値がある「実物資産」や「無国籍通貨」であるという点です。通常、株や債券は発行元が倒産してしまえば、ただの紙切れですが、金は価値がゼロになることはありません。また、先般のエジプト政変やリビア騒乱の際にも、「有事の金」として大きく買われ、金価格が高騰したように、リスク回避手段として普遍の価値を持つのが金の魅力といえます。

第二に、金は「インフレに強い」という点です。通常、インフレ懸念が強くなると、物価が上がり、通貨の価値は下がりますが、これに対して、金はインフレと共に価格が上がるので、資産を保全する効果があります。また、金は、これまではデフレに弱いと言われてきましたが、昨今の信用不安(ソブリンリスク)が高まるほどのデフレ下においては、逆に安全な資産として金が買われるため、今日では、インフレ・デフレのどちらにも強い万能選手として人気が高まっています。

第三に、金は「希少性が高い」という点です。有史以来、これまでに生産された金の量は、およそオリンピック公式プールの3杯分しかなく、また推定埋蔵量を合わせても4.5杯程度しかないと言われています。これは、印刷すればいくらでも増やせる通貨(貨幣)と異なり、生産性に限界があり、しかも需要は今後も伸び続けるため、その希少性の高さから金の価値を高めていると言えます。

金投資商品にはどのようなものがある?

現在、個人資産の中に「金」を取り入れる場合、金投資商品には様々な種類があります。具体的には、金そのものを買う「現物取引」と、金価格の変動を利用した「先物取引」に分けられます。さらに、現物取引には、「金地金」、「地金型金貨」、「純金積立」の3つがあります。また、これら以外にも、金(関連)投資が気軽にできる、証券化した金融商品である「金ETF」や「金鉱株ファンド」などもあります。

(1)金地金・・・現物である程度の分量の金を持ちたい方に

金地金とは、簡単に言えば、「金の延べ棒」のことです(読み方は、きんじがね、きんちきん)。これは、大きさによって、ラージバー、キロバー、スモールバーなどの種類があり、通常、500g未満の金地金を売買する際には、「バーチャージ」と呼ばれる手数料が別途かかります。これより、金地金の小口売買は割高になってしまうため、ある程度まとまった資金(約200万円程度)で投資するのがベターと言えます。

(2)地金型金貨・・・金地金よりも少額で気軽に購入したい方に

地金型金貨とは、「投資用金貨」とも呼ばれ、世界のいくつかの政府が発行している法定通貨であり、発行元の政府が重量と品位を保証している金貨をいいます。その代表的なものには、ウィーン金貨ハーモニー(オーストリア)やメイプルリーフ金貨(カナダ)、カンガルー金貨(オーストラリア)などがあります。これらは、10分の1オンスの金貨であれば、1万円台から購入することができ、しかも売買手数料は一切かかりません。また、そのデザインの美しさから、プレゼントとしてのニーズも高くなっています。

(3)純金積立・・・コツコツ始めたい方に、ビギナーにも最適

純金積立とは、毎月3,000円(会社によっては5,000円、1万円など)以上1,000円(1万円など)単位の代金を自動引落しで支払い、その代金で買えるだけの金を買い付ける積立商品をいいます。これは、「ドル・コスト平均法」という仕組みで、金価格が安い時には多く、高い時には少なく購入するため、結果として平均購入単価が抑えられ、購入タイミングの分散を図ることができます。また、申し出をすれば、いつでも金地金や地金型金貨の形で引き取ることが可能で、取扱い会社の多くでは、ゴールドジュエリーとの等価交換や時価での現金化も可能になっています。

一般に純金積立は、「いつ買ったら良いか分からない」「少額からじっくり金投資を始めたい」といった投資ビギナーの方にとって、金投資をスタートさせる最適の方法と言えます。なお、年会費や購入手数料などのコストは会社によって異なり、また金価格が一時的に下がった時に追加購入(スポット購入)できるか、ネット取引できるかなど、自分の投資スタイルを考えて会社を選ぶとよいでしょう。

(4)金ETFと金鉱株ファンド・・・ファンドで購入したい方に

金の現物ではなく、気軽に金(関連)で運用できる証券化商品(ファンド商品)として、「金ETF」と「金鉱株ファンド(ゴールドファンド)」があります。

金ETFとは、基準価額が金価格に連動するように設計された上場投資信託をいいます。これは、取引所に上場しているため、株と同じ感覚でリアルタイムに売買可能で、短期や中長期で「金価格の変動」から収益を狙うことができます。また、手数料等が割安な証券会社と取引すれば、購入時や売却時の手数料なども抑えられます。
一方で、金鉱株ファンドとは、金そのものに投資するのではなく、南アフリカ共和国やオーストラリア、カナダなどで貴金属の採掘や精錬に携わる金鉱山会社や金関連ビジネスを行う会社の株などで運用するファンド(投資信託)をいいます。これは、金価格が上昇すると、それに関係する会社の株価も上昇するので、金鉱株ファンドの運用成績も上昇するという仕組みになっています。なお、運用にあたっては、金鉱業界の状況や金鉱山会社の経営状態など、金価格以外の要因にも影響される可能性があることは知っておきましょう。

<手軽な金投資商品の比較>

比較項目 純金積立(現物投資) 金ETF 金鉱株ファンド
投資対象資産 金価格 金価格(有価証券)※ 株式(有価証券)
現物性 ×
収益性
コスト 年会費、売買手数料など 売買手数料など 売買手数料など
価格変動リスク 金鉱株ファンドに比べて小さい 金鉱株ファンドに比べて小さい 純金積立・金ETFに比べて大きい

※金の現物取引価格に連動した金ETFの場合

最後に金(Gold)は、その特徴から大きな魅力がありますが、資産運用において検討する際には、値下がりによる元本割れ(投入資金割れ)があることに注意し、自分にあった商品を選択することが大切です。また、指輪やネックレスなどの「金ジュエリー」は金としての価値があり、最近は売却も容易になっているので、個人資産の一つとして認識しておくのもよいでしょう。

2011年2月
ファイナンシャル・プランナー(CFP®)
黒田 尚子

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