第71回:定額個人年金保険と変額個人年金保険、どう違う?どう使う?


公的年金制度への不安が増す中、老後資金の準備の必要性を感じておられる方も多いようです。生命保険文化センターの意識調査(平成19年度 生活保障に関する調査)によると、老後のゆとりある生活には、夫婦2人世帯で1ヶ月の生活費は最低でも月額23.2万円、ゆとりある生活のためには38.3万円が必要という結果が出ています。

一方で、高齢者世帯の所得のうち、公的年金は月額換算で約17.7万円(平成18年国民生活基礎調査の概況)と、必要とされる生活費には5万円以上足りません。あくまでもデータの平均値による推測ではありますが、公的年金だけで老後資金を賄うというのは現在でもかなり難しいといえるでしょう。ましてや、年金の受給がいっそう厳しくなると考えられる若い世代の場合、自助努力による老後資金の準備の必要性はより高いと考えられます。

さて、その老後資金の準備のための代表的な金融商品が個人年金保険ですが、用途に応じて受取方法をうまく選択すれば、定年退職から年金受給の間の「つなぎ年金」として、あるいは公的年金の「上乗せ年金」として活用することができます。しかしながら、その仕組みやリスクは少し複雑で、特に従来からある「定額個人年金保険」と、近年勧められることの多くなった「変額個人年金保険」とでは、どこが同じでどこが違うのかよくわからないという方も多いようです。

そこで、今回はこの2つの年金の違いにスポットをあて、その仕組みや活用方法を考えてみます。

個人年金保険の基本的な仕組みと特徴は?

個人年金保険は、保険料を払い(定額年金は月払や年払いなどの分割払いや一時払い、変額年金は一括払いが主流)、一定期間運用して、将来は年金が受け取れるという保険商品です。たとえば、30歳で契約して60歳まで保険料を積み立て(保険料払込期間)、60歳から毎年年金を受け取る(年金受取期間)という具合に、契約から年金受け取りまで数十年にも及ぶ長期の契約となります。これには、円建てだけでなく、米ドルやユーロなどの外貨建てのタイプもあります。

個人年金保険を受取期間で分けると、有期年金、確定年金、終身年金があります。同じ年金額を受給する場合は、受取期間が長いほど保険料負担は重くなります。また、年金開始前に死亡した場合には、死亡給付金を受け取れます。この死亡給付金について、定額個人年金保険では、死亡時点での払込保険料累計額に応じた金額となるのに対し、変額個人年金保険では、通常、死亡日の積立金額相当の金額となります。

<個人年金の受取期間と年金種類>

受取期間 年金種類 内容
一定期間受け取るタイプ 有期年金
保証期間付有期年金
契約した一定の年金受取期間(5年、10年等)に生きていれば、年金が受け取れる。保証期間付のタイプであれば、年金受取開始後一定期間は生死に関わらず年金が受け取れる。
確定年金 契約した一定の年金受取期間(5年、10年等)は、生死に関わらず、年金が受け取れる。
一生涯受け取るタイプ 終身年金
保証期間付終身年金
生きている限り、年金が受け取れる。保証期間付のタイプであれば、年金受取開始後一定期間は生死に関わらず年金が受け取れる。

受取年金額が契約時に決まる「定額年金」、決まらない「変額年金」

さて、定額個人年金保険と変額個人年金保険の一番の違いはといえば、契約時に受取年金額が決まるのか、そうでないのかという点です。

定額個人年金保険は、保険料は「一般勘定※1」で運用され、運用の責任は保険会社が持ち、契約時に将来の受取年額が決まります。一方で、変額個人年金保険は、保険料は「特別勘定※2」で運用され、将来の年金額は運用成績によって変動します(最近は年金原資の最低保証のあるタイプも増えている)。その運用方法は、契約者が複数の特別勘定から選択することによって決まり、運用責任は契約者自身が持つことになります。そして、運用成績がよければ受取年金額は増えるのに対し、悪ければ受取年金額は減ります。

なお、変額個人年金では、年金開始後も「積立金※3」の運用が一般勘定で行われるタイプと特別勘定での運用が継続されるタイプがあります。積立金が一般勘定に移る場合は、年金受取開始時に毎年受け取る年金額は確定する一方、特別勘定で運用される場合は、運用実績によって毎年受け取る年金額が変動することになります。

<用語説明(※)>

1.一般勘定 運用実績に関わらず、一定の「予定利率*」を契約者に保証していて、保険金額が一定である定額保険の資産をひとまとめにして管理・運用する勘定区分のこと。
*予定利率 生命保険会社は、資産運用による一定の収益を予め見込んで、その分だけ保険料を割り引いている。その割引率を「予定利率」といい、この利率の高いときに加入した保険ほど、保険料は安くなる。
2.特別勘定 他の種類の保険契約に関わる資産とは明確に区分・管理されて運用される変額年金保険の勘定区分のこと。特別勘定の運用は、投資信託で行い、運用責任は契約者が負うことになる。特別勘定の数は、保険会社・商品毎に異なり、「株式型」「債券型」など運用対象の異なる複数の特別勘定の中から契約者が選択することができる(商品によっては、特別勘定が1つしかなく、選択できないタイプもある)。 なお、特別勘定を選択できるタイプの場合、契約後も一定の範囲内で各勘定間での資金の移動(スイッチング)や、保険会社によっては各勘定に繰り入れる資金の割合の指定・変更ができる。
3.積立金 特別勘定で管理・運用されている資産のうち、個々の契約に関わる部分のこと。それぞれの運用実績により、毎日増減する。

<定額個人年金保険と変額個人年金保険の仕組み>

定額個人年金保険
(保険料分割払い・10年確定年金の場合)
変額個人年金保険
(保険料一括払い・10年確定年金の場合)

確実に受け取れる「定額年金」、インフレに強い「変額年金」

ここからは、定額個人年金保険と変額個人年金保険について、それぞれの特徴をチェックし、活用方法を考えてみましょう。

▼定額個人年金保険の活用方法ついて

定額個人年金保険は、毎月の保険料と将来の年金額が確定している(予定利率が契約時に決まっている)ため、老後の生活設計がしやすいというメリットがあります。もし予定利率の高い時期に契約することができれば、安い保険料で将来の年金を確保することができます。また、一定の条件を満たしていれば、「個人年金保険料控除」が受けられ、払い込んだ保険料の一定額がその年の所得から控除され(所得税で最高5万円、住民税で最高3万5千円)、所得税と住民税の負担が軽減される税制上のメリットもあります。

個人年金保険料控除の対象となる保険契約
(「個人年金保険料税制適格特約」を付加した契約であること)
1. 年金受取人は、契約者または配偶者のいずれかであること
2. 年金受取人は、被保険者と同一人であること
3. 保険料払込期間は、10年以上であること
4. 確定年金か有期年金の場合は、年金開始日の被保険者の年齢が60歳以上で、年金受取期間が10年以上あること

一方で、予定利率の低い時期に契約すると、割高な保険料を払うことになって不利といえます。また、年金額が契約時に確定しているので、数十年後の年金受取時に物価が大幅に上がっていれば、契約していた年金額では老後資金が不足する可能性もあります。したがって、現在のような低金利時代には、若い世代が将来の老後資金確保のために定額個人年金だけを選ぶのは得策ではなく、もし利用するなら、税制優遇や計画的に貯められるというメリットを活かし、老後資金の一部を準備するといったスタンスで行った方がよいと考えられます。

なお、定額個人年金の場合、手数料や経費は保険料に含まれていますので、利用を考える際には、払込保険料総額と受取年金総額をよく比較して検討しましょう。

▼変額個人年金保険の活用方法について

変額個人年金保険は、一般にインフレに強いといわれています。通常、物価が上がるときは景気上昇期で、株価も上昇しますので、たとえば「株式型」の特別勘定で運用していれば、景気上昇に合わせて年金原資を大きく殖やせる可能性があります。一方で、運用がうまくいかなければ、資産を減らし、期待していた年金額を確保できないリスクもあります。

また、変額個人年金を利用する際には、コストにも注意が必要です。具体的には、契約時に「契約初期費用※4」がかかり、運用している間は毎年「保険関係費用※5」と「運用関係費用※6」が積立金額から差し引かれます。そのため、これらの費用を超える運用益があってはじめて積立金額が増えることになります。あと、契約後早い時期に解約すると「早期解約控除」として、積立金額から一定割合が差し引かれてしまうので、中途解約は避けたいところです。

<用語説明(※)>

4.契約初期費用 保険関係費用の一種で、契約時に一時払い保険料の3~5%程度が差し引かれる。契約初期費用が必要ない商品もある。
5.保険関係費用 保険契約を維持するための費用。死亡・災害死亡を保障するための費用も含み、積立金額に対して年率数%かかる。
6.運用関係費用 特別勘定で運用する際にかかる費用。積立金額に対して年率数%かかる。

このように変額個人年金は、良くも悪くも運用次第で年金額が決まる保険商品ですので、利用の際には十分に注意が必要です。最近は、元本保証型の商品が主流となっていて、最低年金受取額は契約時に決まり、運用がうまくいけば、さらに年金額が大きくなる仕組みになっています。その他にも、即時受け取り型、ステップアップ型、ターゲット型など様々なタイプの商品が発売されており、もし気になる商品を見つけたら、まずは仕組みやリスクをよく理解し、また特別勘定の運用実績などもよく見て、自分にあった殖やし方ができる商品を選びましょう。

<変額個人年金保険の様々なタイプ>

年金原資保証型 最低でも、元本(払込保険料総額)が年金原資として保証されるタイプ。
早期受取型 契約後の早い時期から、運用しながら年金を受け取れるタイプ。
ラチェット型
(ステップアップ型)
運用によって積立額が増えていたら、その後の運用が不調でも、一度増えた積立金額は減らないタイプ。
ターゲット型 契約時に運用の目標額を設定し、運用期間中に目標額に達したら運用成果を確保し、すぐに、または一定期間経過後に年金を受け取れるタイプ。運用期間中に目標に到達せず、運用期間満了となった場合は、その時点の運用実績と一時払い保険料のどちらか金額の多い方が年金原資額となる。

最後に、変額個人年金を活用する場合、老後資金の準備計画において、最低でも受け取れる年金額は老後の生活費のアテにしても、「運用次第」の部分は老後資金の「ゆとり」的な位置づけで考えたほうが無難でしょう。また、保険料一括払いの商品が多く、中途解約の場合のペナルティも大きいので、原則的にはまとまった金額の余裕資金があり、長期の運用期間とリスクが取れる場合に利用するのがよいでしょう。

2009年3月
大林香世(CFP®)