パート収入が年間103万円を超えないように働いています。 毎月あと2万円収入が増えると税金で損をするのでしょうか?


パート収入が年間103万円を超えないように働いています。
毎月あと2万円収入が増えると税金で損をするのでしょうか?

今回、回答いただく先生は…
森田 和子先生 (もりた かずこ) プロフィール
  • 手取り収入への影響が大きいのは「130万円の壁」です。
  • 今の手取り収入が減っても将来の年金は増えます。
  • 10月から新に登場する「106万円の壁」に該当するか勤務先に確かめましょう。

清水由紀さん(仮名 32歳 パート)のご相談

「103万の壁」という言葉をよく聞くので、それを超えないように働く時間を調整しています。しかし最近、時間の余裕もあるので、今の月収に2万円ほどプラスして稼ぎたいと考えているのですが、税金で損をするということがあるのでしょうか?

ご相談者のプロフィール

家族構成
家族 年間収入 貯蓄額
本人
32歳
パート
約95万円 約300万円

39歳
会社員
約480万円

手取り収入がマイナスになるのは「130万円の壁」を超えたとき。
今年の10月からは、新たに「106万円の壁」もできるので要注意。

手取り収入への影響が大きいのは「130万円の壁」

こんにちは、清水さん。「壁を超えたら損をする」などと聞けば気になりますよね。でも、実はこの壁がいくつもあるのはご存知でしょうか。

ご主人が会社員で、その扶養に入っている由紀さんは、パート社員として働いても年間収入が100万円以下であれば税や社会保険料を支払う必要はありません(自治体によって違います)。収入はそのまま手取りになります。

ところが、100万円を超えると住民税が、103万円を超えると所得税も課税されるようになります。そのため、これらが「100万円の壁」、「103万円の壁」と呼ばれることもあります。由紀さんもこれを意識して働き方をセーブしていたとのことですが、実はこれらの壁を超えたとしても、いきなり多額の税金が課税されるわけではありません。収入が増えるにつれて徐々に税金も増えていきます。

由紀さんが希望されているように毎月あと2万円をプラスすると、年収は127万円です。 所得税・住民税が約4万3千円かかるとはいえ、差し引きしても20万円近くは手取り収入が増えるわけですから、メリットが大きいと言えるのではないでしょうか。

それよりも注意が必要なのは収入が130万円以上になる場合です。完全に夫の扶養から外れて健康保険料や年金保険料を自分で支払わなければなりません。勤務先によって違うので一概には言えませんが、それらの負担が20万円程度になってしまうため、収入が130万円以上になると、収入は増えても手取りが大きく減ってしまうという損な状況になってしまいます。これを避けるために勤務時間を調整して働く人も多いので、「130万円の壁」と呼ばれています。

また、妻の収入は夫の収入にも影響します。
扶養している妻のいる夫には配偶者控除・配偶者特別控除が認められて税金が軽減されていますが、妻の年収が103万円を超えるとこの控除が徐々に少なくなり、141万円以上になると全くなくなります。つまり、妻の収入が103万円から141万円に向かって夫の税金が徐々に増えていくことになります。

さらに、夫の勤務先によっては家族手当を支給するところもありますが、妻の年収に上限を設けている場合もあります。それが130万円ならば、妻には社会保険料の負担が増えるうえに、夫の給与からは家族手当が減らされるというダブルのマイナスで家計収入が大きく減る可能性はあります。ご主人の給与明細に家族手当が加算されているなら、妻の年収上限を確認しておきましょう。

今は損でも将来の年金が増える

妻の収入が壁を超えると、永遠に手取りが減り続けるわけではありません。130万円から150万円あたりまでは逆転現象がおきますが、そこを超えれば収入が増えるにつれて手取りも増えていきます。妻だけでも夫婦合計の手取り収入でも同じことが言えます。

壁を超えるのはもったいないように感じるかもしれませんが、妻自身が厚生年金に加入すれば、妻の将来の年金を増やすことができます。必ずしも損をするとは言い切れませんね。

手取り収入のイメージ図

10月から新たにできる「106万円の壁」

ただし、今年の10月からは、壁がもう一つ増えることになるので注意が必要です。 下記の条件に該当する場合には年収130万円以下であっても妻自身が厚生年金に加入することになります。

  • 1週間あたりの決まった労働時間が20時間以上
  • 1か月あたりの決まった賃金が88,000円以上
  • 勤務期間が1年以上の見込み
  • 勤め先の会社の従業員数(正社員など)が500人超
  • 75歳未満
  • 学生ではない

月88,000円は年間で1,056,000円になります。そこで、「106万円の壁」が新たにできるとも言われています。由紀さんが勤務時間を増やした場合、この条件に該当するのかについては必ず勤務先で確認することをおすすめします。

社会保険料は収入に応じて変わるので130万円の場合よりは少なくなりますが、106万円では年16万円ほどになります。106万円でも130万円の壁と同様の逆転現象は起きるので、壁を超えるなら大きく超えなければ損をすることになります。由紀さんが106万円の壁の条件に該当するなら127万円では年収が増えても約17万円を社会保険料にとられてしまうので働き損だと感じるかもしれません。

とはいえ、厚生年金に加入することになるので将来の年金が増えることになります。厚生労働省の試算では、月収88,000円時の厚生年金保険料月額8,000円を20年間支払うと、老後の年金が月9,700円、年額では115,800円増えるとされています。

社会保険料を負担すると、今は損をしたように感じますが、年金を受け取る時には少しでも多くあってほしいものです。壁は気になりますが、チャンスがあるなら壁を大きく超えて働くことを考えても良いのではないでしょうか。

(※税・社会保険料は条件によって違います。文中の金額は目安とお考えください。)