ローンは多めに借りて繰り上げ返済したほうがトクという噂が。手元に多めに残しておいたほうが安心感もありそうですが…


山下和之先生 プロフィール
長らくマイホーム関連の不動産会社、金融機関、そして実際にマイホームを買われた一般の方々など、多方面の取材に携わってきた経験を生かして本音でお答えします。効率的なマイホームの頭金づくりから、ローン破綻に陥らないローンの組み方、少しでもトクする返済方法まで何でもご質問ください。

香田 三千男さん(仮名)のご相談

3年前に父が亡くなって少し遺産が入ったこともあり、貯蓄が1500万円ほどになりました。いまは家賃10万円ほどの古い賃貸マンションに入っていますが、近くに手頃なマンションが分譲されるので、思い切って買おうと思っています。自営業で、国民年金に入っていますが、国民年金の場合には融資額が少ないので、公庫融資をフルに利用するつもりです。でも、気になるのが特別加算の公庫金利の高さ。以前、金利の高いローンは、多めに借りて1年後ぐらいに繰り上げ返済したほうがトクすることがあると聞きました。いまの予定では、1500万円の貯蓄のうち1130万円を頭金に出すほか、諸費用が200万円ほどかかるので、手元に170万円しか残りません。ちょっと不安なので、ローンを増やして頭金を930万円にして、手元に残るのを370万円にしたいのです。その上で1年でできるだけ貯蓄を増やして、200万円を繰り上げ返済したいと思っています。それで本当にトクできるでしょうか。

香田 三千男さん(仮名)のプロフィール

33歳、独身。フリーのCGデザイナー。年収約600 万円

・家計状況

月間収入 計 500,000 円
家賃 100,000 円 教養・娯楽費・小遣いなど 100,000 円0,000 円
自動車ローン・クレジット 50,000 円 各種保険料 380,000 円
食費・衣服費などの生活費 110,000 円 貯蓄 80,000 円
水道光熱・通信費など 30,000 円

現在の貯蓄高 1500万円

借入時の金利が高ければ借り入れを多くして繰り上げ返済で得することも

たしかに、金利の高いときには多めに借りて繰り上げ返済したほうがトクすることがあります。マイホームを買ったばかりの1年ほどは何かと物入りですし、できれば手元に多めのお金を残しておきたいものです。多めに借りたほうがトクするのなら、そのほうが安心です。香田さんはフリー稼業ですから、なおさら手元のお金に関して気になるのでしょう。お気持ちはわかります。でも、結論からいえば現在の金利ではこのやり方では残念ながらトクできません。少し厳しくても、当初の計画通りにローンを組んだほうが無難です。この資金計画なら生活をシッカリとコントロールできれば、問題はないと思います。

ところが、本当にトクするケースがある!

800万円の特別加算枠があり,金利が5%だった場合で試算してみます。一つの方法としては600万円だけ借りて、そのまま35年間返済していきます。この場合、35年間の総返済額は約1272万円です。これに対して、800万円借りて、200万円を手元に残し、その200万円を運用して1年後に約201万円繰り上げ返済します。すると、繰り上げ返済によって返済期間を182回短縮できます。つまり、実際の返済期間はすでに返済している12回分を含めて238回分ですみます。それと繰り上げ返済する約201万円を加えた総返済額は約1162万円です。600万円しか借りない場合に比べて総返済額は110万円少なくなります。

たしかに、多めに借りて、その分を繰り上げ返済に回したほうがトクできるわけです。

でも、香田さんの場合の3.55%の金利ではどうでしょうか。600万円借りてそのまま返済する場合の総返済額は約1049万円。800万円借りて1年後に約201万円を繰り上げ返済する場合が約1073万円。800万円借りたケースのほうが総返済額でみると24万円多くなってしまいます。やはりできるだけローン利用額を減らすほうがトクできるわけです。

でも、なぜこのような違いが出てくるのでしょうか?

多めに借りて繰り上げ返済でトクできるのは金利4%以上を目安に

それは、金利の違いによって返済開始当初の利息と元金の割合が違ってくるからです。金利が高いほど当初の元金返済の割合は小さくなります。それに対して、繰り上げする201 万円はすべて元金返済分に充当されます。ですから、同じ約201 万円の繰り上げ返済でも、皮肉なことですが、金利の高いほうが短縮できる効果が大きくなってしまうのです。
このケースでみる金利3.55%では期間短縮効果は158 回ですが、5%だと182 回も短縮できます。金利が高いほうが支払い利息をたくさんカットできるわけです。

借入金額、返済期間にもよりますが、おおむね3%台までは借り入れをできるだけ少なくするほうがトクですが、金利が4%以上になれば、少し多めに借りて、その後できるだけ早く繰り上げ返済するとトクするケースがでてきます。ですから、現状の金利では香田さんのおっしゃる方法ではトクできる可能性は低いのですが、ガッカリすることはありません。もともと金利が低いだけで十分トクしているのだと喜ぶべきでしょう。

香田さんのマンション購入計画

購入希望物件/東京都江東区の専有面積60m2の新築マンション、価格3500万円
資金計画/自己資金1130万円 ローン2370万円 諸費用200 万円

返済計画例

1.当初の資金計画
・購入価格 3500万円 自己資金1130万円

融資の種類 借入額 金利 返済方法 毎月返済額
公庫基本融資 1770万円 2.55% 35年ホ゛ーナス返済なし 6万3751円
公庫特別加算 600万円 3.55% 35年ホ゛ーナス返済なし 2万4971円
合計 2370万円 8万8722円

2.香田さんがトクだと思うお尋ねの資金計画
・購入価格 3500万円 自己資金 930万円

融資の種類 借入額 金利 返済方法 毎月返済額
公庫基本融資 1770万円 2.55% 35年ホ゛ーナス返済なし 6万3751円
公庫特別加算 800万円 3.55% 35年ホ゛ーナス返済なし 3万3295円
合計 2570万円 9万7046円

※このうち特別加算は1年後に約200 万円を繰り上げ返済する

特別加算800万円を借りて、1年後に200万5694円を繰り上げ返済した場合 繰り上げ返済で158回分の返済をカットできる。従って返済回数はトータル262回 3万3295円×262回+200万5694円=1072万8984円

残念ながらトクはできません

〔金利が5%と仮定した場合の総返済額の比較〕
1. 特別加算600 万円を借りて、そのまま35年間返済した場合3万0281円×12カ月×35年=1271万8020円
2. 特別加算800 万円を借りて、1年後に200 万9851円を繰り上げ返済した場合繰り上げ返済で182 回分の返済をカットできる。従って返済回数はトータル238 回4万0375円×238 回+200 万9815円=1161万9065円

この場合はトクします