教育費・老後費の貯蓄と繰り上げ返済の優先順位は?

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伊藤 美和先生
プロフィール
貯蓄や投資を始めてしばらくすると、誰の頭にも思い浮かぶのが1000万円という夢の数字。
1000万円お金を貯める」ということはハードル走に似ています。100万円、300万円とハードルをクリアするごとに貯まるスピードはどんどん加速していきます。この「貯める・殖やす」のコーナーでは、皆さんがハードルを楽に越え、早くゴールにたどりつけるよう、お手伝いができればと思います。何でもお気軽にご相談ください。

中村 美恵さん(仮名)のご相談

平成7年、結婚と同時にマンションを購入しました。今までは貯蓄よりローンの返済に力を入れていて、ほぼ毎年1回100万円ずつ繰り上げ返済をしてきました。でも子ども達を中学から私立へ進学させるかもしれないこと、また年金削減のニュースを聞いて老後に不安を感じるようになったこともあり、今後は教育費や老後資金の貯蓄に重点を移すべきなのではないかと思うようになりました。繰り上げ返済をできるだけ続けながら、教育費・老後費をバランスよく貯めていくにはどうしたらいいか、アドバイスをお願いいたします。

中村 美恵さん(仮名)のプロフィール

31歳、専業主婦。38歳のご主人と4歳、1歳のお子さまと、分譲マンションで4人暮らし

・収支の状況

収入
 月収(夫/手取り) 385,000 円  ボーナス(夫/手取り) 135万×年2回
毎月のおもな支出 残額 21,527 円
 住宅ローン 53,453 円  マンション管理費 19,000 円
 駐車場・ガソリン・高速代 18,000 円  食費 40,000 円
 光熱費 15,000 円  水道費 3,000 円
 通信費(携帯代を除く) 5,000 円  携帯電話代 4,500 円
 夫こづかい 35,000 円  妻こづかい 5,000 円
 新聞代 4,000 円  教養・趣味・娯楽費 20,000 円
 子ども費(幼稚園・習い事費) 23,500 円  生命保険料 18,000 円
 損害保険料 1,000 円  貯蓄 70,000 円
 車検用の積立 5,000 円  冠婚葬祭用の積立 3,000 円
 学資保険料(2人分) 21,020 円    
ボーナスの支出(年額270万円の支出内訳) 残額 0 円
 住宅ローン(ボーナス払い分) 500,000 円  繰り上げ返済 1,000,000 円
 貯蓄 800,000 円  レジャー・家電費など 400,000 円

・現在の貯蓄

毎月の積立額 貯蓄総額 満期(満期金額)
 通常貯金(郵便局) —- 100万円 —-
 ニュー定期(郵便局) 70,000 円 266万円 —-
 定額貯金(郵便局) —- 280万円 —-
 MMF —- 50万円 —-
 学資保険(兄) 12,120 円 58万円 平成29年(300万)
 学資保険(弟) 8,900 円 10万円 平成32年(200万)

・毎月・ボーナスの支出について

  • 被服費は毎月の家計の中でやり繰りしている。
  • 旅行や家電製品の買い替えなど大きな出費はボーナスから取り分けて出費。
  • 以前は少し投資に興味を持っていたが、現在は郵便貯金を中心に貯蓄している。

・マイホーム(マンション)について

  • 購入時期 → 平成7年3月
  • 頭金 → 1000万円
  • ローン → 以下の表の通り
金融機関名 ローンの種類 借入額 現在のローン残額
 住宅金融公庫 35年ローン 2000万円 1470万円
 年金住宅融資 35年ローン 500万円 0円

・今後の予定&ライフプラン

  • マイホームの買い替え予定はない。
  • 子どもの教育プランは「私立中→私立高→国立大学」or「公立中→私立高→国立大学」のどちらかで考えている。
  • 下の子どもが小学校に入学したら、妻はパートで働く(月収5~6万円)予定。
  • 老後は日々の暮らしに困らない程度の経済的ゆとりを持ちたい。年に数回、国内旅行に行きたい。

・今後予定している出費

予定時期 必要額
 旅行 平成16年6月 30万円
 車(現金で購入予定) 平成22年10月 200万円

繰り上げ返済を今のペースで継続しつつ、慎重な運用を始めましょう

現状について

総務省の家計調査年報によると、住宅ローンを返済している30代後半家庭の月平均貯蓄率は手取り収入の約15.6%です。中村さんは手取り月収の約25.7%も貯金できているので、貯蓄は今のペースで十分です。手取り年収ベースでみた貯蓄率も約27.1%と、全世帯平均(13.5%)の約2倍も貯めている計算となり、中村さんは大変しっかりした金銭感覚の持ち主と拝察いたします。

一方で中村さんの貯蓄総額は約760万円(学資保険の積立分を含む)です。今もし急に収入が途絶えたとしても丸2年は住宅ローンを返しながら今の生活を続けることができます。30代後半の貯蓄額としては、もしものための備えも含めて十分でしょう。

十分な貯蓄額を確保できている理由はとてもシンプルで「堅実な生活を送っている」ことです。中村さんの毎月の消費支出は23~25万円ほどで、これは税込み年収400万円台の家庭の平均額とほぼ同じです。収入が多くても(中村さんの税込み年収は約900万円)、浮つくことなく毎月しっかりとやり繰りしている姿勢は素晴らしいと思います。

ただし貯蓄内容には気になる点もあります。中村さんは貯蓄のほとんどを郵便貯金など元本の安全な商品へ預けています。現在のようなデフレ・低金利の時期は、このポートフォリオでも問題はありません。でもこのままでは経済情勢の変化に対応していくことが難しい状況です。もし一転してインフレになった場合は、資産価値が急激に目減りするリスクが大です。

今後の貯蓄プランの方針

少しでもお金を有利に増やすには「使う目的や時期」や「どのぐらいリスクをとれるのか」によって商品を選ぶことが必要です。「教育費」「老後資金」など貯める目的によって金融商品を選択すれば、効率よくお金を増やしていくことができます。一方、老後まで20年以上ある方が老後資金を運用するためには、インフレ対策が大切です。今後は運用の勉強を始め、少しずつ利用商品のバリエーションを増やしていきましょう。

住宅ローンについて

返済中の住宅金融公庫のローンは借入れ利率が4%台です。借金の利息だけで年間約60万円も払っている計算です。平成17年4月からは金利がアップするので金利負担はさらに重くなります。貯蓄額は十分なので、貯蓄額を増やすよりは今のペースで繰り上げ返済を継続していく方が得策かと思います(下表(2)のイメージ)。金利の安いローンに借り換えをした上で繰り上げ返済していけば、支払い総額をさらに大幅カットすることができます(下表(3)のイメージ)。ご主人様の収入が当面安定していると予想できるなら、借り換えも視野に入れ、繰り上げ返済に力を入れたマネープランを検討してみてはいかがでしょうか。

<ローン(1470万円)返済総額の比較>

  総返済額 返済総額の差額
 (1)返済期間15年・金利4.75% 約2058万円 —-
 (2)返済期間 7年・金利4.75% 約1730万円 -328万円
 (3)返済期間10年・金利2.3% 約1646万円 -412万円

※ローンの借り換え手数料や繰上げ返済の時期・手数料により節約できる額は変わります。

教育費の準備

中村さんはお子さんの進路について「中学から私立に進学させるかどうか悩んでいる」とのこと。中学から高校卒業までの教育費の総額は、オール公立の場合で約252万円、オール私立の場合は約617万円と公立の約2.4倍にもなるという統計もあります。経済的負担に見合う強い志望理由・お子さんの適性があるかなどについて様子を見ながら、お金の準備を考えていく必要がありそうです。
大学の初年度納入費は現在加入している学資保険でまかなえるので、私立中・高校入学用のお金の積立プランを考えます。低金利の現在は利息をあてにせず積立元金のみで目標額をクリアできるよう積立額を考えます。子ども保険とは別にお子さま1人につき毎月2万円ずつ貯めていけばいいでしょう。中学卒業までに264万円(長男分)・336万円(次男分)用意できます。私立中学入学時に100万円使っても、高校入学用に100万円以上残ります。積立商品の選択には<教育費を貯めるならこの商品>をご参照ください。

チェック! <教育費を貯めるならこの商品>

老後資金

私達の親の世代は、現役時代に稼いだお金を住宅・教育資金につぎ込んでも、老後は年金で生活することが可能でした。ところが今の働き盛りの世代は少子高齢化が進む中、老後資金を貯めながら住宅・教育費をやり繰りすることが必要となりました。まずは700万の貯蓄のうち100万円で運用の勉強を始めてみましょう。運用プランについては下の例を参考にしてください。

<100万円のポートフォリオ例>

 日本株ETF 20万円
 米ドルMMF 10万円
 オーストラリアドルMMF 10万円
 不動産投信 50万円
 中国株投資信託 10万円

チェック! <投資商品の用語解説>

投資の勉強を始める一方で、毎月1万円、ボーナスから19万円(×年2回)ずつ年50万円のペースで貯めていきます。投資に慣れてきたら、100万円貯まるごとに5~20%ほどを投資し、残りを元本の安全な商品に預け入れる、という繰り返しで資産運用していきます。3%で(複利)運用できれば、65歳には合計で「2035万円+退職金」を老後資金として用意できます。お子さんが国立大学に合格すれば子ども保険の満期金(合計500万円)のうち300万円ほどを老後資金に回すことも可能になります。

中村さんご夫婦の年金を試算したところ、ご主人は65歳から毎月19万円ほど、奥様は65歳から毎月約7万円、受け取れる見込みです。老後資金として「退職金+2000万円」ほど用意できれば、まずは一安心ではないでしょうか。ただし65歳より前に定年退職となった場合は、(定年~)65歳の年金開始まで、再就職して収入を得られるかどうかが、豊かな老後生活を実現するためのカギとなりそうです。65歳より前にリタイアするなら、年金支給開始までの収入の空白期間の生活費も用意することが必要になります。

まとめ

以上をふまえて毎月の貯蓄プラン案をまとめてみました。ご参考としてください。

<中村さんの今後のマネープランの一例(毎月の貯蓄プラン)>

現状 新しいプラン
 ニュー定期(郵便局) 7万円   長男用の教育費積立 2万円 
 次男用の教育費積立 2万円 
 老後用の積立 1万円 
 ニュー定期 2万円