資産運用で「NISA」と「つみたてNISA」、どちらを選べば良いですか?

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今回、回答いただく先生は…

井上 信一先生
(いのうえ しんいち)
プロフィール
  • どちらかの制度が優れているというわけではないので、運用をする目的で選ぶと良いでしょう
  • 運用期間(保有期間)の長さは運用成果に影響しません。この点で選択するのは避けましょう
  • 多少の手間はかかりますが制度の変更は可能なので、あまり難しく考えないように

  遠藤美香さん(40歳 仮名)のご相談

資産運用の一環として3年前から「NISA」で個別株や投資信託を購入しています。
毎年の投資額はそれほど多くはないので、期間の長い「つみたてNISA」にも魅力を感じており、今年の投資分や今後についてどちらが良いのか選べません。選択する上での考え方などあれば教えてください。
また、仮に「つみたてNISA」に切り替えた場合の「NISA」での保有銘柄(逆に、もう一度「NISA」に戻す場合の「つみたてNISA」の保有銘柄)は処分しなければならないのでしょうか?

遠藤美香さんのプロフィール

家族構成
家族 年間収入 現在の貯蓄額
本人
40歳
360万円
(会社員)
480万円

資産運用は「何に使うのか(目的)」を明確にすると、
相性の良い制度を見付けやすくなります

遠藤さん、ご相談ありがとうございます。毎年一定額の範囲で購入した金融商品からの利益が、一定期間は非課税(課税不問)となる少額投資非課税制度(NISA)ですが、今年から少額積立タイプの「つみたてNISA」が加わり、選択が悩ましくなりました。実際、両者は一長一短ですから、ここはシンプルに資産運用のスタンスで選択してみるのも一考かと思います。

両制度のポイントを再確認

「NISA」と「つみたてNISA」の比較はネット上でも数多く存在していますのでここでは割愛しますが、間違いのない情報を得るためにも、下記の金融庁のサイトなどで確認するのが良いでしょう。

https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/about/index.html

さて、その上で、両制度のポイントを端的に列挙してみます。

  • 投資商品の選択肢が豊富なのは圧倒的に「NISA」
  • 年間投資上限額が多いのは「NISA」
  • 現行制度で適用期間が長いのは「つみたてNISA」
    「NISA」は2023年購入分(2027年まで保有可)で終了予定
    「つみたてNISA」は2037年購入分(2056年まで保有可)で終了予定
  • 購入時期のタイミング分散が楽に設定できるのは「つみたてNISA」

国内外の個別株式はもちろん、上場投資信託やETF等、対象商品が豊富で、取り扱い会社によりますが単元未満株やIPO(新規公開株)等も投資対象としたいなら「NISA」に軍配があがります。
年間40万円超(120万円まで)の投資を行いたい場合も「NISA」一択でしょう。 ですが、「NISA」は主にスポット投資ですので、購入時期を自動的に分散したい場合に楽なのは「つみたてNISA」です。また、どのような投資商品を選べばよいか迷いたくない場合、逆にお目当ての投資信託が対象商品に含まれており、かつ、年間40万円以下の投資で同じ制度を長く続けたいような場合も、「つみたてNISA」がお勧めです。

両者は一長一短ですが、このような基準で選べれば、どちらを選択すればよいかは容易ですね。
ただし、いずれの制度も、投資時期からの課税不問期間には定めがあります。
保有期間が何年であろうが、終了時に含み益があれば非課税になる反面、含み損の状態なら損を出して換金する時価で課税口座に移すその後に騰がれば課税対象)かの選択を迫られるのは、どちらの制度も同じです。
20年という長期投資が可能でも、結果的に投資成果が上手くいくかどうかは保有期間とは関係ありません(保有期間の長さによって投資で損をする確率が減るわけではありません)ので、「つみたてNISA=損をしない」と勘違いせぬよう注意が必要です。

投資商品で運用する目的は何かで選択

資産運用をおこなう際には、そのスタンスを明確にすることが何より大切です。
スタンスとは、「何のために運用をするのか」、つまりお金を使う目的を明らかにすること。使途目的さえ明確であれば、自ずと運用期間や運用資金が決まります。また、運用成果の良し悪しに関わらず、ゴール(ひとつの運用期間の終了)を割り切って迎えられます。
遠藤さんの場合はいかがでしょうか?

さて、「運用目的は老後生活資金」と明確にされている方、または多くの方に当てはまるような「運用スタンスが曖昧(明確にできない)」である方は、「つみたてNISA」が無難であると考えます。
「つみたてNISA」とは、今から20年を見据える制度ではありません。投資してから20年後にはいわゆる“満期”を迎えますが、最長20年後まで毎年継続して行えるのですから、目いっぱい活用すれば向こう40年を見据えることのできる制度といえます。現在40歳の遠藤さんなら60歳になるまで新規で投資でき、これを毎年継続していけば60歳から80歳まで、その果実を受け取れるわけです。
住宅ローンの完済、住宅購入やリフォーム、あるいは遠い先の有料老人ホームへの入居等を除けば、老後に多額のお金が一時に必要となることは多くはありません。老後資金を目的とする資産運用は、公的年金等では足りないお金を生涯に渡り補填するしくみをつくりあげることです。運用成果の良し悪しは別としても、20年後から40年後まで、毎年満期を得られるこの制度は理にかなっています。
また、「つみたてNISA」も「NISA」も、好きな時期に換金できるので、運用スタンスが曖昧な方の場合でも、とりあえず購入後の保留期間が長い分だけ「つみたてNISA」が無難といえるかもしれませんね。

一方、資産運用の目的(お金の使途目的)が明確であるのなら、「NISA」との相性が良い場合もあります。
例えば、レジャーや旅行や趣味・嗜好品のための出費。この資金を「NISA」でつくるという発想です。運用期間としても5年もあれば十分な長さでしょう。
さらに、「NISA」がレジャーや旅行といった目的と相性が良い理由には、“結果を割り切って受け止められる”という点が見逃せません。仮に、運用成果が良ければ投資資金を上回るお金を非課税で回収できます。当初に予定した予算からグレードアップすることも可能ですし、浮いたお金を残しておくこともできるでしょう。
仮に、運用成果が悪くてもそこは割り切り、換金してレジャーや旅行に使えば良いのです。当初の予定からグレードダウンしてしまっても、目的を叶えることはできます。それで一生が台無しになるわけではないのですから、「今年はダメだったけど次は頑張ろう」と切り替えがし易いのではないでしょうか。
ただ漠然とお金を殖やすことが資産運用の目的になってしまうと、精神的にも重く、冷静な対応も取りづらくなるものです。繰り返しになりますが、お金を使うために資産運用をするわけで、「何のため」が予め明確なら、そのための運用期間や運用資金(予算)、相性の良い運用商品や制度が自ずと見つかります。

資産運用だからといって大それた目的を探す必要はありません。何気なく貯蓄を引き下ろしている使途は日常の生活でいくつもあるはずです。運用というより上手くいったら(運用益の分だけ)節約できる、といった軽い感覚で捉えるのも良いですよね。

「NISA」と「つみたてNISA」の相互変更のハードルは意外と低い

さて、ご存じのとおり、「NISA」と「つみたてNISA」とは、同一年での投資はいずれか一択であり、取り扱い金融機関に届け出ている制度しか利用できません。仮に「NISA」で申請している場合で「つみたてNISA」に変更したければ、切り替えの申請が必要です。ですが、既に保有している商品についてはそのまま非課税枠で保有することはできます。よって、遠藤さんの場合、これまでの「NISA」枠での保有証券は当該期限までそのまま持つことが可能です。

今年中に「NISA」枠での利用がないなら、申請により「つみたてNISA」に切り替える旨の設定(電話やネットでも対応可能)を金融機関に申し出て、郵送された書類に必要事項を記入の上返送すれば、概ね2~3週間後に切り替えが可能(金融機関により異なります)です。逆に、「つみたてNISA」から「NISA」に戻したい場合は、自動買付(積立)の設定を解除するひと手間が加わりますが、概ねその他の手続きは同じです。

両制度を変更したい場合、あるいは取扱商品の関係から金融機関自体を変えたい場合には、つど、それなりの手間はかかります。しかし、それも一時の苦労で済むのですから、時々の相場環境にあわせて、「NISA」と「つみたてNISA」とを乗り換えるのも悪くはないと思います。
このまましばらく慣れ親しんだ「NISA」を継続され、「NISA」制度が予定どおりに終了したら、その後から「つみたてNISA」を始めても良いかもしれませんね。