キャッシュレスでの買い物は、お得?賢いもの?


今回、回答いただく先生は…

井上信一 先生
(いのうえしんいち)
プロフィール
  • キャッシュレス決済には、3つの「減らせる」効果が期待できます
  • いわゆる“ポイント”はオマケでなく立派な交換手段であり侮れません
  • いずれ近いうちにやって来るキャッシュレス社会に今から少しずつ慣れていきましょう

  奥沢奈津子さん(40歳 仮名)のご相談

最近、よくキャッシュレスが「お得」とか「賢い」と見聞きします。
自分としては、面倒くさくて管理がしにくい印象があります。何よりお金を使っている感覚が乏しくなり、使いすぎてしまうのではないかと心配になって、なかなか利用する気になれずにいます。
こういう自分でも、キャッシュレスを取り入れるのが良いのでしょうか。また、もし始めるとしたら、どういうものをどういうやり方でおこなうのが良いのでしょうか。

奥沢奈津子さんのプロフィール

家族構成など
家族 年間収入 貯蓄額
夫 42歳 約420万円 会社員 約560万円
本人 40歳 約280万円 会社員
子 10歳 - 小学生

キャッシュレス社会への移行は避けられません。振り回されることなく、身近なところから上手に取り入れていきましょう。

キャッシュレスとは?その種類は?

“キャッシュレス”とは、一般的に、“キャッシュレス決済(電子決済)”のことを指します。モノの購入やサービス対価への支払いを、紙幣や硬貨といった現金を使わずに済ませる手段と定義すれば、イメージしやすいですね(最近では、個人間送金などもキャッシュレスに含める場合があります)。
昨今、このキャッシュレス決済が話題なのは、「〇〇Pay(ペイ)」という名称で、日本においては比較的新しい“QRコードやバーコード等の二次元コード”をスマホのアプリに取り込んで利用する「スマホ決済」のサービス会社が急増し、各社が利用者獲得のための大々的なキャンペーンを展開していることが影響しています。
ですが、キャッシュレス決済自体は、先の定義でいえば何も新しいサービスではありません。

従来から利用されている代表的なキャッシュレス決済に「クレジットカード」があります。日本でのクレジットカードの歴史は1960年からと古く、今では何枚も保有している方も少なくはないと思います。
そして、今ではクレジットカード並に普及している「電子マネー」も立派なキャッシュレス決済のひとつ。電車やバスなどの乗り降り、あるいはコンビニなどの店舗で、ピッとかざすだけで済むICカードがその代表です。

ただし、いずれも“キャッシュレス”なのはあくまでも使用する場面であって、通貨と連携させる必要があります。そのタイミングとしては、①前払い、②後払い、③即時払いの3つがあります。
ちなみに、「クレジットカード」は、利用した翌月以降の後払い(ポストペイ)方式、「電子マネー」や「スマホ決済」は、専用機や預金口座等から事前にチャージする前払い(プリペイド)方式と、クレジットカードと紐づける後払い(ポストペイ)方式が主流ですが、一部では所定のポイントや預金口座等から充当させる即時払い方式のものもあります。


キャッシュレス決済は、果たして「お得?賢い?」

現金決済と比べ、キャッシュレス決済には、3つの「減らせる」効果が期待できるといえるでしょう。
その1つめは「時間を減らせる」こと。電車に乗る際に乗車券を購入したり、お金を降ろすためにATMを探したりするような日常の僅かな時間をほんの少しずつでも節約できます。
2つ目は「手間を減らせる」こと。家計管理の1番の理想は、とにかくシンプルかつ手間をかけずに、常に自身の経済状況を把握しきれていることに尽きます。それが最も端的に表れやすいのが、お財布といえるでしょう。
私の経験上ですが、ご自身の収支や財産をきちんと把握されておられる方は、ほぼ例外なく自身のお財布の中に何が入っていて、お金も大体いくら入っているのかを把握できています。当然、常に持ち歩く必要がないレシート類や、いつどこで使えるのか把握しきれていない割引券の類などは一切入ってなく、把握しやすいよう意識して必要なものだけを財布の中に入れているのです。
こうした習慣は、日々のお金の流れを把握しやすい利点以外にも、紛失や盗難あるいは緊急の際の損害額の把握やその対応(カードの利用停止等)を迅速確実に行える利点もあります。

何にいついくら使ったのか完璧に管理するのは難しいものです。レシートを貯めずとも、クレジットカードやスマホ決済では利用履歴が時系列で閲覧できますし、別途、ネット上で保存しておけるので、必要に応じてそれを確認すればこと足ります。また、使用可能な割引券等もスマホで簡単に閲覧管理が可能です。自分が管理しなくてもよい手間は、できるだけ減らしておくことが肝要なのです。

最後の3つめは「出ていくお金を減らせる」ことです。クレジットカードは利用額に応じて“ポイント”が付与されます。また、利用者囲い込みを目指すスマホ決済の各社は、現在もダイレクトなキャッシュバックを展開しているほか、概ねクレジットカード以上の付与率でポイントを付けています。貯まったポイントは次の支払いに充てられるので、この分が実質的なキャッシュバックとなるわけです。現金で支払っても何のポイントも割引も受けられないことを踏まえると、同じ金額を支払い続けていくのであれば、年単位、複数年単位ではとても大きな付加価値を生むはず。こうした発想は、お金の使い方を強く意識することにつながっていきます。
上記は、生活の中に是非とも取り入れていきたい大切な視点といえますね。

キャッシュレス決済をより上手に活用するための留意点

最後に、キャッシュレス決済をより上手に生活に取り入れていくため留意点を整理してみます。

①ポイントを最大限活用

先にポイント付与について述べましたが、今やポイントは、スーパー・デパート・コンビニ・ネット通販・家電等の買い物のほか、交通機関、携帯電話の通信料、その他生活のいたるところで付与されるまでに普及しています。もはや単なるオマケでなく、使いこなせばお金と同じような機能と効果が見込める経済的な交換手段です。なので、ポイントを無駄なく活用するためにも、分散放置させるのでなく、それを上手に集約していく工夫が求められます。
幸いにも各ポイントはグループ化・系列化が進んでいますので、自分や家族が利用している携帯電話の会社や交通機関あるいはよく行くお店に合わせて、その系列ポイントが効率的に貯まるよう利用するクレジットカードを絞り、そのクレジットカードに紐づけられるスマホ決済を選んで利用するのが賢い方法です。例えば、お店での買い物をスマホ決済で行えば、その店舗本来のポイントと、スマホ決済に応じたポイントと、スマホ決済に紐づけられたクレジットカード利用のポイントとの、二重~三重取りも可能となります。

あくまでも生活の中に取り入れる手段の1つとして使う

キャッシュレス決済を利用する目的は、あくまでも生活の質的・経済的な向上のためであり、今までの決済手段よりもお得になる場合に限ります。盲目的にポイントを貯めることが目的となって本末転倒にならないよう注意しましょう。例えば、高付与率でポイントが付くからといって、そのポイントの還元率を計算しても結局は高い値段で買い物をするような行為は賢いとはいえません。ポイントのためにクレジットカードの支払を、利息のかかる分割払いやリボ払いにするのも賛成できません。また、現金決済しかできない店舗もまだまだ多いですが、たとえそのようなお店でも品質が良いものであるならば、ポイントは付かなくても総合的に判断する冷静さは必要です。また、“塵も積もれば山となる”ではありますが、僅かなお得感のためにわざわざ手間や時間を要するのは、キャッシュレス決済の本来の利点にはそぐわず、賢明ではないこともあり得ます。一概には言えませんが、キャッシュレス決済が本領を発揮できるのは、同品質同程度の価格の場合や、比較的高額な買い物の場合、飲食店を利用する場合などが挙げられます。

セキュリティ対策も検討する

キャッシュレス決済自体に対するセキュリティは、その不正利用を防止するために高度な技術が施されています。
例えば、以前はカード面の帯状の磁気情報をスライドさせて読み取る端末が一般的でしたが、今では殆どのカードにセキュリティ面でより強固なICチップが付いていて、それを読み取る方式の端末が増えています。また、自分の名前を書き込んでおけない現金よりもはるかに安全性は高いといえます。そのためにも、万一失くしてしまった場合に備えカード類には署名を必ずしておき、不正に利用されることのないよう、パスワード等は安易に予測されるものは控えましょう。万一使用されてしまってもこうした措置を行っておくことで補償を受けられますので、有事には迅速に届け出ることが必要です。
スマホや携帯電話の場合、使用可能にするためのパスワード設定や生体認証などのロック機能が備わっていますので、多少面倒でも、こうしたロック解除をしなければスマホ決済が利用できないような設定も必要でしょう。

海外旅行に行かれて気づかれる方も少なくはないと思いますが、飲食店や店舗に限らず有料トイレの使用料等に至るまで、キャッシュレス化が進んでいる国が非常に多くなっています。極端な話、現金を一度も両替しなくて済むようなことも珍しくはありません。中には、むしろ現金お断りの国すらあるのが実状です。
日本は現金への信頼度が高く、キャッシュレス化のためのコストが高かったこともあり、比較的現金決済比率が高めでした。しかし、構造的な人手不足や人件費の問題、外国人旅行者の利便性を高める狙いや、消費税増税による景気低迷を防ぐために、政府主導で急速にキャッシュレス社会化を目指しています。
(参考:キャッシュレス・消費者還元事業 https://cashless.go.jp/

いずれ近いうち、日本でも急激にキャッシュレス化が進むことは否定できません。そうなったときに、日常生活で不便や損をしないために、身近なところから少しずつ慣れていくのも一考でしょう。


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