76歳で年金一人暮らしです。 50歳の娘が長期のひきこもりで、この先どうすれば?


76歳で年金一人暮らしです。
50歳の娘が長期のひきこもりで、この先どうすれば?

村井 英一先生 (むらい えいいち) プロフィール
  • まずは、現在の収支が赤字にならないように見直しましょう。
  • お嬢様が少しでも働きに出ると、収支は改善します。
  • 全く仕事が難しいようなら、障害年金の申請を考えましょう。

島津 幸子さん(仮名 76歳 無職)のご相談

5年前に主人を亡くしましたが、その頃から50歳の娘がひきこもりとなってしまいました。自宅を賃貸アパートにして娘の収入源にと思いましたが、この地域では空き家が多く、難しいようです。先行きに不安を覚えます。

島津 幸子さん(仮名 76歳 無職)のプロフィール

家族構成 : 本人 (76歳 無職)
※長女が近隣におり、ひきこもりの状態。(50歳 無職)

<収入>(手取り収入)(単位:円)

年金 投信分配金 合計
年間収入 2,364,603 168,000 2,532,603

<支出>(単位:円)

金額 臨時支出 年間支出
住居費 52,141 94,800 720,492
食費 67,372 808,464
光熱費 65,519 26,000 812,228
医療費 2,541 30,492
被服費・雑貨 7,500 90,000
通信費 32,125 385,500
交際費 46,464 46,464
小遣い 6,444 87,206 164,534
その他 49,000 47,430 635,430
保険料 13,708 3,500 167,996
税・社会保険料 186,000 186,000
貯蓄 20,000 240,000
合計 316,350 491,400 4,287,600

<金融資産>

普通預金 1万円
定期預金 450万円
投資信託 680万円
合計金額 1,131万円

<加入している生命保険>

種類 被保険者 保険金 月額保険料
医療保険 本人 2,500万円 13,7080円

<保有不動産>

土地 1,137万円
自宅 329万円

将来の家計状況をシミュレーションして、
ご長女の自立を促しましょう。

1.最悪のケースでのサバイバルプランを考えましょう

お嬢様の状態が心配でいらっしゃるかと思います。ご自身の年齢のこともあり、自分が先立った後に、お嬢様が一人で暮らしていけるかと考えると、不安になることでしょう。お嬢様が立ち直ってくれることを期待するばかりです。
すでに今まで、お嬢様が立ち直るために、話をしたり、言い聞かせたりといろいろな努力をされてきたことと思います。今後、お嬢様が立ち直ってくれることを期待しつつも、ここは一度、最悪のケースを想定してみる必要があります。最悪のケースとは、このままの引きこもり状態がずっと続くことです。その状態が続いても、お嬢様が生活をしていくことができるのかどうかを考えてみる必要があります。

このような最悪のケースを考えるのは、大変つらいことであります。今まではあえて考えないようにしていたかもしれません。しかし、目をそむけていては、問題を先送りするばかりで、事態の改善がますます困難になってしまいます。これを機会に、お嬢様が生涯、今の状態でも生活していくことができるのかを検証してみましょう。
もちろん、お嬢様の状態が改善し、ひきこもり状態から抜け出してくれれば、それに越したことはありません。やがて仕事ができるようになれば、余裕が出て、いろいろな選択肢が広がってきます。そうなったら、その時に再度計画を立て直し、どのように暮らしていくかを考えましょう。それは、計画の上方修正ですから、苦にはなりません。まずは、目を背けたくなる、最悪のケースを想定して、サバイバルプランを考えましょう。

さしあたっては、現在の家計の状態を整理して、現状を把握しましょう。そして、現状のままで家計が推移した場合に、将来どのようになるのかを確認しましょう。目標は、お嬢様が何とか一生涯を生活していくことができるという点です。もし難しいようでしたら、何らかの対策を立てて、収支を改善していきます。将来の家計の状況は、キャッシュ・フロー表というものを作成すると確認することができます。これは、将来の家計の収支予想です。

2.家計の支出を見直しましょう

<今後のキャッシュフロー表を別ウィンドウで表示>

<今後の家計状況の予想(1)を別ウィンドウで表示>

上記が現在の家計状況がそのまま推移した場合の将来の家計状況の予想です。グラフを見ていただくとわかりますが、現在の家計の状況が続くと、あと数年もしないうちに貯蓄は底をついてしまいます。自宅を売却すれば、ある程度の資金を手にすることができますが、リフォームローンが残っていますので、そちらの返済に充てると、どれほどが残るでしょうか。その分は貯蓄が底をつくのが先に延びますが、やはり時間の問題です。新たに家賃が必要となることも考えると、お嬢様が生活をしていくことは難しくなるでしょう。
自宅をアパートに建て替え、賃貸収入を得ることができれば、状況は改善されます。しかし、それはあくまで入居者がいれば、の話です。伺ったところによると、「借り手がいない」との不動産屋さんの話ですし、「近所はアパートだらけで、空室も多い」とのことですので、慎重に考える必要があります。今の時代、アパートは作れば賃貸収入が入る状況ではありません。入居者で埋まらなければ、アパート建築の借金が返済できずに、生活を楽にするどころか、まずます厳しい状況に追い込まれます。アパートの建築は、不動産経営をすることであり、リスクを抱える投資となります。島津様も心配されている通り、有効な解決策とはなりにくいでしょう。

ご自宅の活用については、自宅の買換えを考えてみます。中古のマンションを購入して、お嬢様と同居すれば、ある程度の資金を残して、生活費を節約することもできるでしょう。現在のご自宅の評価額は、土地が1,137万円、建物が328万円で、合計1,465万円となっています。実際に売却をしようとすると、ある程度下がってしまうことが考えられます。ただ、売り急ぐ必要はありませんので、購入希望者が現れるまではじっくり待つことができます。リフォームローンを完済して、安い中古のマンションを購入すると、500万円程度は手元資金を確保できるのではないでしょうか。もちろん、間取りは今までと比べると小さくなり、親子二人で住むのがやっととなるのはやむをえません。しかし、マンション管理費や修繕積立金を払ったとしても、リフォームローンの支払いがなくなるだけで、毎月の家計が改善されます。固定資産税が安くなるメリットもあります。
現在の生活費も今一度見直してみましょう。現在の家計状況を拝見すると、決して贅沢をしているわけではありませんが、まだ削減の余地はありそうです。お嬢さんへ差し入れや一緒に食事をすることが多いのでしょうか、食費・光熱費が一人暮らしにしては随分かかっています。食費、光熱費、通信費で、それぞれ15,000~20,000円は削減できると思われます。食費は二人で生活することで効率的に行うことができるようになるはずです。光熱費は、マンションに移ることで、今までのように融雪ポンプにかかっていた費用がなくなります。通信費は、料金パックを見直してはいかがでしょうか。現在の状況では割高となっているようです。場合によっては、携帯電話に絞り、固定電話を取り払ってしまうのも手です。

今、一番家計の負担になっているのが、お嬢様への送金です。毎月5万円近くの金額となっており、家計の赤字の原因となっています。親子で同居することで、送金の必要がなくなります。ただ、親子で同居することで、お嬢様の国民年金や国民健康保険の保険料の支払いが必要となります。今までは収入がない、ということで国民年金は全額免除、国民保険料もかなり減免になっていたはずです。親子で同居すると、島津様の年金額が〝世帯収入〟となり、お嬢様の保険料支払いが必要となる可能性があります。社会保険料の負担は小さくないのですが、将来のことを考えると、なんとか払っていきたいものです。お嬢様の老後の収入確保のためでもありますが、障害年金を申請することも考えられるからです。国民年金の保険料を払っていないと、障害年金を受け取ることもできません

このようにして、自宅を中古マンションに買換え、家計の支出を思い切って絞った場合の将来の家計予想がこちらのキャッシュ・フロー表です。お嬢様が77歳になるまでは貯蓄が底をつくことなく、なんとか生活していけそうです。しかし、かなり厳しい生活になるのは確かです。

<改善後のキャッシュフロー表を別ウィンドウで表示>

<今後の家計状況の予想(2)を別ウィンドウで表示>

3.お嬢様の収入の確保を

このような最悪のケースを想定し、サバイバルプランを考えていかなければなりません。しかし、それとともにお嬢様が立ち直るための努力も続けたいものです。今回、将来の家計の状況を推計することは、一つのきっかっけとなるかもしれません。お嬢様ご自身が将来の状況を認識し、現状を改善する意欲を持つ可能性があります。できれば、ご自身で作ったキャッシュ・フロー表をお嬢様に見せて話し合う機会を持ってみてはいかがでしょうか。あるいは、一緒に作成することができればさらによいでしょう。
その際に「このままでは生活していけない」と立ち直りを強く迫っては、かえって反発を招きかねません。お嬢様自身がこのままではいけないことを十分に認識しており、苦しんでいるからです。少しでも収入を得ることができれば、その分だけ余裕が出てくることが数値で具体的に確認できますので、できるだけ前向きに考えたいものです。お嬢様にとっても、いきなり正社員として働くのは難しくても、小さな一歩であれば、踏み出しやすいはずです。親としては、できれば早くきちんとした仕事について欲しいものですが、短時間のパートでも社会とかかわりが持てるようになれればよいと割り切るぐらいの心構えが必要です。例え毎月の収入は少なくても、それが長く続けば、将来の家計状況の上でも収支の改善につながります。

<お嬢様収入のキャッシュフロー表を別ウィンドウで表示>

<今後の家計状況の予想(3)を別ウィンドウで表示>

それでも改善が難しいような場合は、障害年金の申請を考えましょう。平成24年度の場合、障害等級1級に該当すると983,100円、障害等級2級に該当すると786,500円の障害年金を受給できます(ここでの等級は、障害年金認定のための等級です)。ただし、医師の診察を受けた初診日の時点で、国民年金の保険料の納付の条件を満たしていることなどが条件となっていますので、注意が必要です。親としては、障害年金というと抵抗があるかもしれませんが、適用される条件がそろっているならば、生活のためにも申請を考えるべきでしょう。
なお、「生活保護を受ける」という手もあります。しかし、生活保護は収入だけでなく、資産も枯渇してから初めて受給できるものです。ご自宅を売却し、さらに貯蓄も底をつくようになったら、迷わずに申請すべきでしょう。今後は、生活保護の基準が厳しくなり、支給額は削減されることが予想されます。生活保護は、あくまで最終手段として頭の隅に入れておくのがよいでしょう。

いずれにしろ、お嬢様のひきこもりと向き合うには、専門の医師やカウンセラーなどのアドバイスを受けながら対処することが大切です。なかなか現実を直視するには勇気が要りますが、今回の件を機会に踏み出してみてください。最悪のケースを考えてサバイバルプランを作成したら、後は少しでも上方修正ができるようにお嬢様と話し合ってみてください。お嬢様が一日も早く立ち直り、前向きな気持ちになってくれることを期待しております。