定年後は何か新しい働き方にチャレンジしたいのですが、どんな可能性がありますか?


今回、回答いただく先生は…
井上 信一先生(いのうえ しんいち) プロフィール
  • 60歳以後の就労による年金へのデメリットが軽減されるようになります。
  • 今までとは異なる常識で、かつて夢見た希望をアルバイトで叶えるという発想も。
  • フリーランスや有償ボランティアも加えて多重な収入のしくみづくり。

  小谷 信さん(57歳 仮名)のご相談

現在の勤め先は60歳での定年後、今のところ最長65歳までの雇用延長制度が整備されています。退職金と貯蓄を合わせても余裕がある訳ではないので、老後の生活のためにも収入は必要と考えています。ですが、勤め先の雇用延長制度を利用する以外に、何か新しいことにチャレンジしたい気もします。
どんな働き方が考えられるでしょうか?

小谷 信さん(仮名)のプロフィール

家族構成など
家族 年間収入 貯蓄額
本人 57歳 約500万円(会社員) 約900万円
妻 56歳 約300万円(会社員)
持ち家(マンション)に在住
双方の両親(別居)は健在

人生100年時代 働き方もニューノーマルに。
柔軟に多様で多重な働き方を考えましょう。

小谷さん、ご相談ありがとうございます。
公的年金では足りない分を、貯蓄からの取り崩しで賄っていくのでは、「いずれ枯渇するかもしれない」という不安が拭えないものです。少しでも長く、働いて得られる「就業収入」を持続させたいところ。これからの時代、多様な働き方がスタンダードになっていくと思われます。

年金改正により60歳以後の就労を後押し

この5月29日の通常国会で、「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律案」が成立しました。今改正には、確定拠出年金の加入可能年齢の引き上げや諸々の要件緩和なども含まれますが、会社員等として働く場合に特に影響が大きいのは、以下の3つといえます。

  1. 厚生年金保険等の被用者保険の適用拡大 (令和4年10月~、令和6年10月~)
    短時間労働者の厚生年金の被保険者要件(企業規模要件、勤続期間要件)が段階的にさらに緩和される
  2. 60歳台前半で在職中の在職老齢年金が緩和 (令和4年4月~)
    厚生年金の被保険者として働く場合に適用される在職老齢年金の「支給停止基準額」が「28万円」から「47万円」(令和2年度額)に引き上げられる
    「年金月額(※加給年金を除く)+総報酬月額相当額(※月給+(その月以前1年間の賞与額÷12))」が月額47万円以上とならなければ、年金は減額されない
  3. 65歳以上の在職定時改正の導入 (令和4年4月~)
    65歳以後に在職中であっても年金額が毎年(10月分~)見直されるため、早期に、適宜、年金額に反映されるようになる(現行は退職時または70歳到達時)

現在の勤め先に雇用延長の形で働くにしても、別の会社に再就職するにしても、60歳以降に働くと、本来の年金が減額してしまったり働いている間は年金額に反映しなかったりといった矛盾は、改善されていきそうです。

若い頃の夢を叶える働き方もできる

上記のようなガッチリとした働き方は、現在の働き方の延長のようなものです。いわば「就社」といえます。先の通常国会では、「70歳定年」を目指す法案も可決されましたので、今後数年で雇用延長の期間が延びることも考えられます。ですが、本来的な「就職」を、定年を機に、あるいは雇用延長終了後に目指してみるのも一考です。

誰でも子供の頃や若い頃に憧れていたり目指していたりした職業はあるでしょう。それを正規雇用という形態や独立開業といった、ハードルが高くリスクも伴うような手段ではなく、もっと手軽な手段で叶えるという発想もできます。アルバイトやパートといった形態を利用するのです。立派な企業でそれなりの地位や職権のある仕事をしてこられた方には、やや違和感があるかもしれません。しかし、退職して会社を離れた後は、現在の社会的地位は関係なくなります。どんなに大きな仕事を動かしていたとしても、それは会社という器があればこその話。退職した後に残るのは「その身、自分自身」だけです。
ならば、「職」を通して新しい体験にチャレンジされてみてはいかがでしょうか。

現在、平日は定時に出社し帰宅後は夕食をとってからが自由時間と、どちらかというと自分の為に時間を使うことは難しいと思いますが、コロナ禍でリモートワークが広がるなど働き方も変化しています。考え方を変え、日々のルーティーンを自分自身で作り、柔軟に変えていくこともできるのです。

先の年金改正の内容からもわかるとおり、これからの社会は慢性的な働き手不足が大きな問題と考えられています。アルバイトやパートといった非正規雇用・短時間労働は、学生や主婦(主夫)だけでなく、誰にとっても比較的ハードルは低く、色々な経験を積める働き方です。
もちろん、この働き方では一人前にまではなれないかもしれませんし、特別な資格を必要とする仕事や公務員でないとつけない職種などでは疑似的な仕事しかできない場合も少なくはありません。それでも、夢の一部を叶え、収入も得て、かつ働き方によっては年金を増やす可能性もあり得るのです。まさに一石三鳥ではないでしょうか。

フリーランスや有償ボランティアで多重な収入構造も

定年は第2の人生を始める好機であることは間違いではないと思います。ですが、定年を境に全く異なる人生をスタートされるのではなく、今から助走として重層的に働くことも可能です。

例えば、フリーランス・ギグワーク※で副業・兼業を始めるのもその1つ。昨今ではフリーランスをサポート(フリーランスと顧客とをマッチング)する登録制のサイトが増えています。フリーランスは今や、ホームページを立ち上げて広告から営業、決済まで等をすべて自分で完結させねばならない“一国一城の主”というイメージではありません。何か特別な資格を“売り”にすることもできますが、経営・営業・経理などこれまでのキャリアからの経験も“売り”になりますし、人生や趣味等の相談相手として登録できるサイトも山ほどあります。こうした多様な“売り”を登録し、広告から決済まで、メールやリモート等のオンラインで完結させて収入を得ることが可能なのです。
※単発・短時間のアルバイト

また、お住いの地域の有償ボランティアを始めてみる手もあります。
休日や週末を利用し、高齢者宅を訪問して郵便物を整理したり会話をしたりする、介護疲れの家族の話しを聞く、子どもの居場所をつくるなど。最寄りの社会福祉協議会ではこうした情報を提供してくれます。これらは地域のセーフティネット構築のための貢献活動ですが、周り巡り、いずれ自分の両親や自分自身の老後の心強いセーフティネットになり得ます。お勤め先が副業・兼業を禁止していたとしても、有償ボランティアであれば問題はないと思われます。

今から助走期間として始められ、いずれは今回ご提案しました様々な働き方を並行して行えるようになれば、多重で多様な収入構造を作り上げることができるでしょう。

人生100年時代、今までとは異なる常識が当たり前に

人生100年時代を迎えようとしています。つまり65歳からも35年間、現役キャリアに匹敵する時間を過ごせる訳です。そうした世の中では、これまでのような「学ぶ→働く→老後・余生」といった生き方は過去のものになるかもしれません。
何度でも「学ぶ」からやり直すこともでき、1つのキャリア(仕事)しか経験できないわけではなく2つでも3つでも新しいキャリアを積んでいくことも可能となるでしょう。

人生は一度きり。時間を戻すことはできません。でも、この先では「新たな人生」に挑戦することのできる時代になろうとしているのです。


年金を多く受け取れる方法があると聞きました。 どのような方法でしょうか。
「老後に2,000万円の貯蓄が必要」と言われますが、いったいどうすればよいのでしょうか?
将来海外移住を計画しています。移住しても年金はもらえますか? どんな手続きが必要ですか?

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