高校生を育てるシングルマザーです。 大学無償化が始まると聞きますが、わが家でも利用できるのでしょうか。


今回、回答いただく先生は…
森田 和子先生(もりた かずこ) プロフィール
  • 世帯の所得や資産などの基準に合致する学生が対象になります。
  • 入学金と授業料の減免が受けられます。
  • 返済不要の給付型奨学金も受けられます。
  • 進学後も「しっかり学ぶ姿勢」が求められます。

  菅谷千尋さん(仮名 49歳 パート勤務)のご相談

高校2年生の子供がいるシングルマザーです。子供は大学進学を希望しており、勉強も頑張っているようです。応援していますが、学費が心配です。私自身の老後も不安なので、子供に奨学金を利用してもらうことも考えています。大学の無償化が始まるそうですが、わが家でも利用できるのでしょうか。

菅谷千尋さん(仮名)のプロフィール

家族構成
家族 年収 資産 預貯金など
本人 (49歳):パート勤務 約200万円 約850万円
長男 (16歳):高校2年生

現在の収入であれば無償化制度の対象になる可能性があります。
申し込み時期を逃さないように募集の情報に親子で注意しましょう。

こんにちは、菅谷さん。ご相談ありがとうございます。お子様は進学を目指して頑張っているとのこと、心強いですね。2020年度からスタートする大学無償化を利用できるのは、世帯の所得と資産が一定額以下で、学ぶ意欲のある学生です。菅谷さんも利用できる可能性があります。詳しい内容を確認していきましょう。

世帯の所得や資産などの基準に合致する学生が対象になります

大学無償化と呼ばれているのは、2020年4月から始まる「高等教育の修学支援新制度」です。支援の内容は大きく2つあります。一つは大学生、短大生、専門学校生の入学金や授業料が減免される「授業料等減免」、もう一つは後から返還する必要のない「給付型奨学金」です。
支援の対象になるのは、住民税非課税世帯それに準ずる世帯の学生です。住民税非課税である第Ⅰ区分の学生が満額の支援を受けられます。それに準ずる第Ⅱ区分の学生は満額の2/3、第Ⅱ区分の学生は満額の1/3になります。

大学無償化 目安の世帯年収

●ひとり親世帯(母のみが生計維持者の例)
住民税非課税 準ずる世帯
第Ⅰ区分 第Ⅱ区分 第Ⅲ区分
(満額) (満額の2/3) (満額の1/3)
子1人(本人) ~約210万円 ~約300万円 ~約370万円
子2人(本人・高校生) ~約270万円 ~約360万円 ~約430万円

●ふたり親世帯(一方が配偶者控除対象の例)
第Ⅰ区分 第Ⅱ区分 第Ⅲ区分
子1人(本人) ~約220万円 ~約300万円 ~約380万円
子2人(本人・中学生) ~約270万円 ~約300万円 ~約380万円

※文部科学省「高等教育の修学支援新制度(授業料等減免と給付型奨学金)における所得に関する要件」より抜粋

保有する資産にも基準があります。不動産を除き、現金や預貯金、有価証券等の合計額が、生計維持者が2人の場合 は2,000万円未満、生計維持者が1人の場合 は1,250万円未満となっています。

学生本人の成績については、「高等学校在学時の成績だけで否定的な判断をせず、高校等が、レポートの提出や面談等により本人の学修意欲や進学目的等を確認します」とされているので、学ぶ意欲のある学生なら問題ないでしょう。
菅谷さんの所得は第Ⅰ区分にあたり、資産も基準額以下なので、満額の支援を受けられる可能性があります。

入学金と授業料の減免があります

対象になった学生は「授業料等減免」として、入学金と授業料の減免を受けられます。満額の上限は、国公立大学で授業料は約54万円、入学金は約28万円、私立大学で授業料は約70万円、入学金は約26万円です。
国公立大学の上限額は、入学金・授業料の標準額と同じなので、国公立であれば学費の負担なく大学に行ける可能性があります(標準額より高い大学もあります)。私立大学については入学金・授業料の全額には不足しそうですが、これだけの金額が減免されるのであれば負担は大きく減ることでしょう。

授業料等減免の上限額(年額)

●住民税非課税世帯(第Ⅰ区分・満額)
国公立 私立
入学金 授業料 入学金 授業料
大学 約28万円 約54万円 約26万円 約70万円
短期大学 約17万円 約39万円 約25万円 約62万円
高等専門学校 約8万円 約23万円 約13万円 約70万円
専門学校 約7万円 約17万円 約16万円 約59万円

返済不要の給付型奨学金も受けられます

授業料減免の対象になった学生は、返済不要の「給付型奨学金」も受けられます。現在でも日本学生支援機構の実施する奨学金の一つとして設けられていますが、月2~4万円の支給なので生活費として十分な金額とは言えませんでした。これが「学生が学業に専念するために必要な生活費」まで拡充されます。

満額の上限(年額)は、国公立大学の自宅生で約35万円、自宅外生で約80万円、私立大学の自宅生で約46万円、自宅外生で約91万円となっています。

給付型奨学金の給付額(年額)

●住民税非課税世帯(第Ⅰ区分・満額)
自宅生 自宅外生
○国公立
大学・短期大学・専門学校
約35万円 約80万円
○国公立
高等専門学校
約21万円 約41万円
○私立
大学・短期大学・専門学校
約46万円 約91万円
○私立
高等専門学校
約32万円 約52万円

進学後も「しっかり学ぶ姿勢」が求められます

進学先の学校にも条件があります。全ての大学等が対象になるわけではなく、「社会で自立・活躍する人材育成のための教育を継続的・安定的に実施できる大学等」として認められるところが対象です。対象になる大学等のリストは文部科学省のホームページから確認できるようになっています。(※)
他にも国籍等の条件があります。より詳しい情報は文部科学省の特設サイト「学びたい気持ちを応援します」で確認できます。
※文部科学省「高等教育の修学支援新制度の対象機関(確認大学等)」

なお、支援を受けた学生には「しっかり学ぶ姿勢」が求められるため、進学後に単位数の取得状況やGPA(平均成績)の状況、学生に対する処分等、一定の要件を満たさない場合には支援を打ち切るとされているので、入学後の学業も頑張ってください。

入学金や授業料が減免され、返済不要の奨学金を受け取れるとなれば、お金の面での不安は大きく減るのではないでしょうか。現在の高校3年生の申込期間は夏休み前頃でした。来年度のスケジュールが変更される可能性もあるので、申込期間を逃さないように、学校等から案内される奨学金の情報に親子で注意を払うようにしましょう。


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